環境と安全を守る!毒物・劇物の廃棄方法|毒物劇物取扱者試験 実地

【Bランク】環境と安全を守る!毒物・劇物の廃棄方法|毒物劇物取扱者試験 実地
ランク: B
🎯 このレッスンの目標
本レッスンでは、毒物劇物取扱者試験の「実地」分野と「法規」分野の両方で問われる毒物・劇物の廃棄方法について学習します。廃棄方法は、環境汚染や人的被害を防ぐための極めて重要な知識です。法規で定められた基準と、実地で問われる具体的な化学処理方法を関連付けて理解することが合格への鍵となります。Bランク単元として、主要な廃棄方法の原理と具体例を確実にマスターしましょう。
学習のゴール
- 廃棄の基本原則(基準の遵守、環境汚染の防止)を理解する。
- 5つの主要な化学的処理方法(中和、加水分解、酸化、還元、希釈)の原理を理解する。
- 具体的な物質(シアン、水銀、クロム、ヒ素、有機リンなど)がどの方法で処理されるのかを覚える。
- 燃焼や大量の水での希釈が適切なケースと不適切なケースを区別できるようになる。
腕試し!実力チェック3問
まずは現在の実力をチェックしてみましょう。以下の3問に挑戦してください。
第1問
シアン化合物の廃棄方法として、最も適切なものはどれか。
- 酸を加えて分解する。
- 次亜塩素酸ナトリウム溶液などを加えて酸化分解する。
- 多量の水で希釈して放流する。
- そのまま焼却炉で燃焼させる。
第2問
毒物又は劇物の廃棄に関する技術上の基準として、誤っているものはどれか。
- 中和、加水分解、酸化、還元その他の方法により、毒物及び劇物でない物に変えること。
- ガス状の毒物及び劇物は、高圧ガス保安法に規定する設備、方法等により処理すること。
- 廃棄にあたっては、大気、水又は土壌を汚染しないように行わなければならない。
- 引火性の毒物及び劇物は、少量ずつであればどこで燃焼させてもよい。
第3問
有機リン化合物の廃棄方法として、最も一般的な方法はどれか。
- 加水分解法
- 還元法
- 酸化法
- 中和法
📚 基礎教養学習パート
1. 廃棄の基本原則(法規の復習)
毒物及び劇物取締法では、廃棄について厳しく定められています。基本は「毒物・劇物でないものに変えてから捨てる」ことです。
毒物及び劇物取締法施行令 第十八条(廃棄の方法の基準)
法第十五条の二の規定による毒物又は劇物の廃棄の方法に関する技術上の基準は、次の各号に掲げる方法とする。
一 中和、加水分解、酸化、還元その他の方法により毒物及び劇物でない物にすること。
二 ガス状の毒物及び劇物にあつては、前号に掲げる方法のほか、高圧ガス保安法(…)に規定する設備、方法(…)により処理すること。
そして、最も重要な心構えが環境汚染の防止です。
毒物及び劇物取締法施行規則 第十三条の五(廃棄の方法)
毒物又は劇物の廃棄は、大気、水又は土壌を汚染しないように行わなければならない。
2. 5つの主要な化学的処理方法
実地試験では、上記の基準を具体的にどのように行うかが問われます。主要な方法は以下の5つです。
| 処理方法 | 原理 | 主な対象物質 |
|---|---|---|
| ① 中和 | 酸性の物質に塩基を、塩基性の物質に酸を加えて、互いの性質を打ち消す。 | 硫酸、塩酸、水酸化ナトリウムなど |
| ② 加水分解 | 物質に水(または水酸化ナトリウム水溶液など)を加えて、分解する。 | 有機リン化合物(パラチオン等) |
| ③ 酸化 | 酸化剤(次亜塩素酸ナトリウムなど)を加えて、より毒性の低い物質に変える。 | シアン化合物、硫化水素 |
| ④ 還元 | 還元剤(硫酸鉄(II)など)を加えて、より毒性の低い物質に変える。 | 六価クロム化合物、水銀化合物 |
| ⑤ 希釈 | 多量の水で十分に薄めて、安全な濃度にしてから処理する。 | 一部の水溶性劇物(最終手段) |
3. 【最重要】物質別の具体的な廃棄方法
試験では「この物質はどうやって捨てる?」という形で問われます。以下の組み合わせは必ず暗記してください。
| 対象物質 | 処理方法 | 詳細・ポイント |
|---|---|---|
| シアン化合物(シアン化カリウム等) | 酸化法 | アルカリ性条件下で、次亜塩素酸ナトリウム(さらし粉でも可)を加えて酸化分解する。絶対に酸を加えてはならない(猛毒のシアン化水素ガスが発生)。 |
| 有機リン化合物(パラチオン、マラソン等) | 加水分解法 | 水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液を加えて加熱し、加水分解する。 |
| 六価クロム化合物(クロム酸カリウム等) | 還元法 | 硫酸酸性で、硫酸鉄(II)や亜硫酸水素ナトリウムを加えて、毒性の低い三価クロムに還元する。その後、水酸化カルシウム等で中和し、沈殿させて回収。 |
| 水銀化合物(塩化第二水銀等) | 還元法 | 硫化ナトリウムなどを加えて、水に不溶な硫化水銀(II)として沈殿回収する。 |
| ヒ素化合物(三酸化二ヒ素等) | 沈殿法 | 水酸化カルシウムなどを加えて、難溶性のヒ酸カルシウムとして沈殿回収する。 |
| PCB(ポリ塩化ビフェニル) | 燃焼法 | 高温焼却(1,100℃以上)が必要。専門の処理業者に委託する。 |
| 酸・アルカリ(硫酸、水酸化ナトリウム等) | 中和法 | 互いを中和するか、多量の水で希釈しながら少しずつ中和する。 |
4. その他の廃棄方法
- 燃焼法: 引火性の液体(ガソリン、アルコール等)は、安全な場所で少量ずつ燃焼させる。爆発性の物質は燃焼させてはならない。
- 大量の水で希釈: 比較的毒性の低い水溶性の劇物で、化学処理が困難な場合に最終手段として用いられることがあるが、原則は化学処理である。
理解度チェックテスト3問
基礎知識が身についたか、3問のテストで確認しましょう。
第1問
毒性の高い六価クロム化合物を、毒性の低い三価クロムに変換して廃棄する方法は、次のどれに分類されるか。
- 中和
- 加水分解
- 酸化
- 還元
第2問
廃棄方法とその対象物質の組み合わせとして、正しいものはどれか。
- シアン化合物 – 還元法
- 有機リン化合物 – 加水分解法
- 六価クロム化合物 – 酸化法
- 水銀化合物 – 中和法
第3問
引火性の液体である二硫化炭素を廃棄する際、最も適切な方法はどれか。
- 川にそのまま流す。
- 地面に埋める。
- 安全な場所で少量ずつ燃焼させる。
- 下水道に流す。
✍️ 実践問題10問
Bランク単元として、法規と実地の両面から知識を定着させましょう。
第1問
シアン化カリウムの廃棄作業中に、誤って塩酸を加えてしまった。発生する可能性が最も高い危険な事態は何か。
- 爆発する。
- 猛毒のシアン化水素ガスが発生する。
- 発火する。
- 何も起こらない。
第2問
パラチオン(有機リン系殺虫剤)の廃棄方法として、最も適切なものはどれか。
- 水酸化ナトリウム水溶液を加えて加熱し、加水分解する。
- 次亜塩素酸ナトリウムを加えて酸化する。
- 硫酸鉄(II)を加えて還元する。
- 多量の水で希釈する。
第3問
廃棄の方法に関する法規の記述として、正しいものはどれか。
- 廃棄は、人の健康への被害が生じなければ、多少の環境汚染は許される。
- 中和、加水分解、酸化、還元以外の方法で処理することは禁じられている。
- 毒物及び劇物でない物に変化させれば、どのような方法で捨ててもよい。
- 廃棄は、大気、水又は土壌を汚染しないように行わなければならない。
第4問
クロム酸カリウム(六価クロム化合物)の廃棄で、還元剤として用いられる物質はどれか。
- 次亜塩素酸ナトリウム
- 水酸化ナトリウム
- 硫酸鉄(II)
- 塩酸
第5問
水銀を含む廃液を、硫化ナトリウムを加えて硫化水銀(II)として回収する方法は、何反応を利用したものか。
- 呈色反応
- 沈殿反応
- 炎色反応
- 中和反応
第6問
ヒ素化合物の一般的な廃棄方法はどれか。
- 燃焼させる。
- 水酸化カルシウムなどを加えて、難溶性の塩として沈殿させる。
- 次亜塩素酸で酸化する。
- 酸で分解する。
第7問
廃棄方法の基本原則として、最も重要な考え方は何か。
- できるだけ速やかに処理すること。
- できるだけコストをかけずに処理すること。
- 毒物及び劇物でない物に変化させてから廃棄すること。
- できるだけ少量にまとめてから処理すること。
第8問
PCB(ポリ塩化ビフェニル)の廃棄方法として、法的に定められている方法はどれか。
- 化学的に分解する。
- 専門の施設で高温焼却する。
- 地中深くに埋設する。
- 海洋投棄する。
第9問
強酸性の廃液と強アルカリ性の廃液が大量にある。最も安全で適切な初期処理はどれか。
- 両者を一気に混合して中和させる。
- それぞれを多量の水で希釈しながら、少しずつ混合して中和させる。
- それぞれをそのまま下水道に流す。
- それぞれを燃焼させる。
第10問
毒物及び劇物の廃棄に関する記述として、誤っているものはどれか。
- シアン化合物の廃棄は、アルカリ性条件下で行うのが基本である。
- 有機リン化合物は、酸を加えて加水分解するのが一般的である。
- 六価クロムは、三価クロムに還元してから処理する。
- 廃棄は、環境汚染を引き起こさないように配慮しなければならない。
💡 まとめ
- 廃棄の原則: 「無毒化」と「環境汚染防止」が二大原則。
- シアンは酸化: アルカリ性で次亜塩素酸ナトリウム。
- 有機リンは加水分解: アルカリで加水分解。
- 六価クロムは還元: 酸性で硫酸鉄(II)を使い、三価クロムへ。
- 重金属(水銀、ヒ素)は沈殿: 難溶性の塩にして回収。
- 酸・アルカリは中和: 基本中の基本。
解答と解説
腕試し!実力チェック3問 解説
- 第1問 → 2: シアン化合物は、次亜塩素酸ナトリウムなどの酸化剤を用いて、無害な窒素ガスなどに酸化分解するのが最も安全で確実な方法です。
- 第2問 → 4: 引火性の毒物・劇物を燃焼させる場合は、安全な場所で、かつ少量ずつ行う必要があります。どこで燃焼させてもよいわけではありません。
- 第3問 → 1: パラチオンなどの有機リン化合物は、アルカリ性条件下で加水分解することで、毒性を大幅に低減させることができます。
理解度チェックテスト3問 解説
- 第1問 → 4: 六価クロム(毒性大)を、還元剤を用いて三価クロム(毒性小)に変化させる方法は「還元法」です。
- 第2問 → 2: 有機リン化合物は加水分解法で処理します。1のシアンは酸化法、3の六価クロムは還元法、4の水銀は沈殿法(還元法の一種)が適切です。
- 第3問 → 3: 引火性の液体は、周囲に引火物がない安全な場所を選び、少量ずつ燃焼させるのが基本です。環境汚染につながる方法は不適切です。
実践問題10問 解説
- 答: 2 – シアン化物に酸を加えることは、猛毒で致死性の高いシアン化水素ガスが発生するため、絶対に避けなければならない禁忌事項です。
- 答: 1 – 有機リン系の農薬であるパラチオンは、アルカリ(水酸化ナトリウムなど)による加水分解が最も一般的な無毒化処理です。
- 答: 4 – 法令(施行規則)で、廃棄は環境を汚染しないように行うことが明確に義務付けられています。
- 答: 3 – 六価クロムの還元には、安価で効果的な還元剤である硫酸鉄(II)が工業的にも広く用いられます。
- 答: 2 – 水に溶けている水銀イオンを、水に溶けない硫化水銀(II)という固体の形に変えて回収する方法なので、「沈殿反応」を利用したものです。
- 答: 2 – ヒ素化合物は、水酸化カルシウムなどを加えて、水に溶けにくいヒ酸カルシウムとして沈殿させ、固体として回収するのが一般的です。
- 答: 3 – 廃棄の基本原則は、法規にも定められている通り、化学処理によって「毒物及び劇物でない物にすること」です。
- 答: 2 – PCBは化学的に非常に安定で分解しにくいため、専門の高温焼却施設で処理することが法律で義務付けられています。
- 答: 2 – 強酸と強アルカリを一気に混ぜると、激しい中和熱が発生し、沸騰・飛散する危険があります。必ず双方を希釈し、冷却しながら少しずつ反応させるのが安全です。
- 答: 2 – 有機リン化合物は、アルカリ性条件下で加水分解するのが一般的です。酸性条件下では分解が遅かったり、危険な副生成物が生じる可能性があります。
📝 実力確認テスト(10問)
この単元の理解度を確認しましょう!

