覚えたら、解こう。毒物劇物取扱者「過去問テスト」 詳細はこちら

レッスン3-16:毒物劇物の化学(実地)

レッスン3-16:毒物劇物の化学(実地)

レッスン3-16は毒物劇物の化学(実地)──化学計算の実地総合演習。化学分野(2-1〜2-27)で学んだ濃度計算・中和計算・酸化還元・モル計算・気体の状態方程式を毒劇物の具体的な取扱場面に適用。除外濃度の判定・廃棄量計算・気体拡散推定など、実地試験で頻出する計算問題を完全攻略します。

毒劇先生

青木さん、今回は化学の実地総合演習!計算問題が中心です。

強欲な青木

計算は苦手っすね…

毒劇先生

大丈夫!公式3本で8割解けます。①質量%と密度で溶液質量算出、②中和 c₁v₁n₁=c₂v₂n₂、③酸化還元 c₁v₁n₁=c₂v₂n₂(n=電子数)。価数と電子数を間違えなければ大丈夫です。

強欲な青木

除外濃度の計算も出るんすか?

毒劇先生

頻出!『35%塩酸を希釈して10%以下にするには?』みたいな問題。希釈公式 C₁V₁=C₂V₂で即座に解けます。計算結果を毒劇法の除外濃度(10%/5%/6%/1%)と照合するのが判定の決め手。

強欲な青木

気体の計算も出ますか?

毒劇先生

部屋の気体濃度(ppm)計算が頻出!PV=nRTと標準状態1mol=22.4Lを使って、漏洩ガス量から空間濃度を算出できれば実務にも役立ちます。

毒劇物試験 化学計算公式集
図解:毒劇物試験 化学計算公式集
目次

💪実力試し(3問)

まずは腕試し。本番レベルの問題3問を解いてから、解説で確認しましょう。

問題1

20%塩酸(密度1.10 g/mL)1Lに含まれる塩化水素(HCl)の質量は何gか。

  1. 20g
  2. 110g
  3. 200g
  4. 220g
解答と解説を見る

正解:4

解説:溶液1L = 1000mL × 1.10 g/mL = 1100g(溶液質量)。溶質(HCl)= 1100 × 0.20 = 220g。質量%→質量計算は『体積×密度=溶液質量→濃度×溶液質量=溶質質量』の2段階。

間違えやすいポイント:密度を忘れて『1000×0.20=200g』と誤答しがち。必ず『体積×密度』で溶液質量を先に計算!

問題2

0.05 mol/L の硫酸 H₂SO₄ 100mL を完全中和するのに必要な 0.1 mol/L NaOH の体積はいくらか。

  1. 50 mL
  2. 100 mL
  3. 150 mL
  4. 200 mL
解答と解説を見る

正解:2

解説:中和公式 c₁v₁n₁ = c₂v₂n₂。H₂SO₄(2価)・NaOH(1価)。0.05×100×2 = 0.1×V×1 → V = 100 mL。価数を忘れずに計算。

間違えやすいポイント:硫酸は『2価』の酸。n₁=2を忘れると半分の値で誤答する。

問題3

標準状態(0℃・1気圧)で塩素Cl₂ 11.2Lの質量は何gか。(Cl=35.5)

  1. 17.75g
  2. 35.5g
  3. 71g
  4. 142g
解答と解説を見る

正解:2

解説:標準状態で1 mol = 22.4L。11.2L ÷ 22.4 = 0.5 mol。Cl₂の分子量 = 35.5×2 = 71。質量 = 0.5 × 71 = 35.5g。

間違えやすいポイント:気体はまず『体積÷22.4=mol』で物質量を出し、分子量で質量に変換。Cl₂は分子として計算(原子量35.5ではない)。

🔰基礎教養学習

本単元は①濃度計算 ②中和計算 ③酸化還元滴定 ④モル計算 ⑤気体の状態方程式 ⑥除外濃度判定の6ブロック構造です。

⓪ 計算問題の公式まとめ

公式 単位
質量% 溶質g ÷ 溶液g × 100 %
モル濃度 溶質mol ÷ 溶液L mol/L
希釈 C₁V₁ = C₂V₂ 溶質量不変
中和 c₁v₁n₁ = c₂v₂n₂ n=価数
酸化還元 c₁v₁n₁ = c₂v₂n₂ n=電子数
物質量 質量÷モル質量 or 体積÷22.4(気体) mol
状態方程式 PV = nRT R=0.082
pH −log[H⁺] 無次元

① 濃度計算の完全マスター

👉質量%の計算例題

【例題】35%塩酸 100g に水を加えて10%塩酸にするには、水を何g加えるか?
溶質HCl = 100×0.35 = 35g(不変)
10%濃度の溶液 = 35÷0.10 = 350g
加える水 = 350−100 = 250g
→ 希釈して10%以下にすれば、劇物の除外対象となる!

👉質量%→モル濃度への変換

【例題】35%塩酸(密度1.18 g/mL)のモル濃度は?(HCl=36.5)
1L(1000mL)= 1000×1.18 = 1180g(溶液質量)
HCl = 1180×0.35 = 413g → 413÷36.5 ≒ 11.3 mol
→ モル濃度 = 約11.3 mol/L(濃塩酸の標準値)

👉除外濃度(必須暗記)

物質 除外濃度 物質 除外濃度
塩酸 HCl 10%以下 硫酸 H₂SO₄ 10%以下
硝酸 HNO₃ 10%以下 アンモニア 10%以下
シュウ酸 10%以下 水酸化Na/K 5%以下
フェノール 5%以下 クレゾール 5%以下
過酸化水素 6%以下 ホルムアルデヒド 1%以下
毒劇先生

数字の並びで暗記:『酸=10 / 水酸化=5 / 過酸化=6 / ホル=1』(%)。4つの数字ペアで即答可能。

② 中和計算の実地応用

中和公式c₁v₁n₁ = c₂v₂n₂(濃度×体積×価数)

👉価数一覧(暗記必須)

価数 塩基
1価 HCl・HNO₃・CH₃COOH NaOH・KOH・NH₃
2価 H₂SO₄・H₂CO₃・(COOH)₂ Ca(OH)₂・Ba(OH)₂・Mg(OH)₂
3価 H₃PO₄ Al(OH)₃

👉実地応用:酸漏洩の中和

【例題】36%硫酸が100Lこぼれた。中和に必要な消石灰Ca(OH)₂は何kg?
硫酸100L×1.27g/mL×0.36 = 約45720g
45720÷98 = 約467 mol(H₂SO₄)
H₂SO₄(2価)+ Ca(OH)₂(2価)= 中和 → 467 mol のCa(OH)₂必要
Ca(OH)₂ = 467×74 = 約34.6 kg必要

③ 酸化還元滴定の実地応用

酸化剤/還元剤 電子数 半反応式(酸性条件)
KMnO₄(酸化剤) 5 MnO₄⁻+8H⁺+5e⁻→Mn²⁺+4H₂O(赤紫→無色)
K₂Cr₂O₇(酸化剤) 6 Cr₂O₇²⁻+14H⁺+6e⁻→2Cr³⁺+7H₂O(橙→緑)
H₂O₂(酸化剤) 2 H₂O₂+2H⁺+2e⁻→2H₂O
H₂O₂(還元剤) 2 H₂O₂→O₂+2H⁺+2e⁻
Fe²⁺(還元剤) 1 Fe²⁺→Fe³⁺+e⁻
H₂S(還元剤) 2 H₂S→S+2H⁺+2e⁻

👉実地応用:シアン化物の酸化処理計算

【例題】10%NaCN水溶液 500gを次亜塩素酸ナトリウムで酸化処理するのに必要なNaOCl量は?
NaCN = 500×0.1 = 50g → 50÷49 ≒ 1.02 mol
反応式:NaCN + NaOCl → NaOCN + NaCl(1:1)
NaOCl = 1.02 mol必要。さらに第2段でCO₂+N₂に完全分解するため合計2〜3倍量。

④ モル計算の実地応用

1 mol = 6.02×10²³個(アボガドロ数)、質量=分子量g、標準状態気体=22.4L。

👉毒劇物の分子量一覧

物質 分子量 物質 分子量
HCN 27 Cl₂ 71
NaCN 49 KCN 65
NH₃ 17 H₂S 34
HF 20 HCl 36.5
NaOH 40 KOH 56
H₂SO₄ 98 HNO₃ 63
CH₃OH(メタノール) 32 C₂H₅OH(エタノール) 46
HCHO 30 C₆H₅OH(フェノール) 94
(COOH)₂(シュウ酸) 90 CHCl₃ 119.5
CCl₄ 154 HgCl₂ 271.5
As₂O₃ 198 H₂O₂ 34

⑤ 気体の状態方程式 PV=nRT

PV = nRT (R=0.082 L·atm/(mol·K)、T=絶対温度)

👉実地応用:ガス漏洩時の空間濃度

【例題1】100m³の部屋にCl₂が1mol漏洩。濃度は何ppm?
1mol = 22.4L。100m³=100000L。
濃度 = 22.4 / 100000 × 10⁶ = 約224 ppm
(塩素の管理濃度は0.5ppmなので、これは致死レベル)

【例題2】27℃・1気圧で2.46LのNH₃の質量は?(NH₃=17)
n = PV/RT = 1.0×2.46 / (0.082×300) = 0.1 mol
質量 = 0.1×17 = 1.7g

⑥ 除外濃度判定の計算

👉判定フロー

  1. 試料中の対象物質量を算出(質量%or モル濃度)
  2. 毒劇法の除外濃度(10%/5%/6%/1%)と比較
  3. 以下→普通物、超過→劇物

👉具体例

  • 12%塩酸 → 10%超なので劇物
  • 8%塩酸 → 10%以下なので除外(普通物扱い)
  • 7%過酸化水素 → 6%超なので劇物
  • 0.5%ホルムアルデヒド → 1%以下なので除外
  • 3%水酸化ナトリウム → 5%以下なので除外

✅理解度チェックテスト(3問)

チェック1(○✕)

次の記述は正しいか誤りか、○✕で答えてください。

「塩酸(HCl)は10%以下なら毒物劇物指定から除外される。」

答えを見る

正解:○(正しい)

解説:正しい。塩酸・硫酸・硝酸・アンモニア・シュウ酸は10%以下で除外。水酸化Na/K・フェノールは5%以下。

チェック2(穴埋め)

次の文の【 】に入る最も適切な語句を選んでください。

標準状態(0℃・1気圧)で 1 mol の気体の体積は【   】Lである。

  1. 11.2
  2. 22.4
  3. 33.6
  4. 44.8
答えを見る

正解:2

解説:アボガドロの法則より、標準状態で任意の気体1 molは種類に関係なく22.4L。

チェック3(4択)

水酸化ナトリウム NaOH 4.0g を水に溶かして全量200mLとした水溶液のモル濃度は?(NaOH=40)

  1. 0.1 mol/L
  2. 0.25 mol/L
  3. 0.5 mol/L
  4. 1.0 mol/L
答えを見る

正解:3

ポイント:4.0÷40 = 0.1 mol。0.1 mol ÷ 0.2 L = 0.5 mol/L。

🪏深掘り解説

テーマ1:pH計算の実地応用

強酸・強塩基は完全電離と仮定してpH計算:0.01 mol/L HCl → [H⁺]=10⁻², pH=2。0.01 mol/L NaOH → [OH⁻]=10⁻², pOH=2, pH=14−2=pH 12。廃液処理でpH 6〜8まで中和することが排水基準。

テーマ2:濃塩酸・濃硫酸の標準値

物質 質量% 密度 モル濃度
濃塩酸 35〜37% 1.18 約11.3 mol/L
濃硫酸 98% 1.84 約18.4 mol/L
濃硝酸 60〜70% 1.40 約15.6 mol/L
氷酢酸 99% 1.05 約17.3 mol/L
濃アンモニア水 28% 0.90 約15 mol/L

テーマ3:実地試験で頻出の計算パターン

  • 希釈計算:濃塩酸を薄めて除外濃度以下にするには?
  • 中和量計算:酸廃液を中和するのに必要なアルカリ量
  • 廃棄処理量:シアン化物に必要なNaOCl量
  • 空間濃度:部屋に漏洩したガスの濃度(ppm換算)
  • モル質量変換:g ⇔ mol ⇔ L(気体)

🥊過去問演習(全10問)

本番形式の10問に挑戦!基礎・深掘りで学んだ内容を総動員して解きましょう。

Q1. 酸化数の決定で、単体の原子の酸化数として正しいものはどれか。

Q2. 中和反応で強酸と強塩基の中和点の pH として正しいものはどれか。

Q3. 1 mol/L の塩酸 100 mL と 1 mol/L の NaOH 100 mL を混合した場合の結果として正しいものはどれか。

Q4. 酸化剤と還元剤の同定について正しいものはどれか。

Q5. 電気分解での陰極反応の特徴として正しいものはどれか。

Q6. イオン結晶と分子結晶の比較として正しいものはどれか。

Q7. 質量保存の法則の意味として正しいものはどれか。

Q8. 気体の状態方程式として正しいものはどれか。

Q9. モル濃度(mol/L)を求める式として正しいものはどれか。

Q10. 化学反応の速度を増加させる一般的な因子として正しいものはどれか。

あなたのスコアは

📝まとめと次の学習へのつなぎ

今回の学習ポイント

  • 濃度計算:質量%=溶質÷溶液×100、モル濃度=mol÷L
  • 希釈:C₁V₁=C₂V₂で即算
  • 中和:c₁v₁n₁=c₂v₂n₂(nは価数、硫酸2価・Ca(OH)₂2価を忘れない)
  • 酸化還元:同公式(nは電子数、KMnO₄=5、K₂Cr₂O₇=6)
  • 気体:PV=nRT、標準状態1mol=22.4L
  • 除外濃度:酸10%・水酸化5%・過酸化6%・ホル1%
  • ppm換算:gas体積L÷室容積L×10⁶
毒劇先生

化学計算は公式3本で大半を解けます!濃度・中和・酸化還元・気体の順に演習を重ねて、数字に慣れることが合格への近道。

強欲な青木

公式と物質ごとの価数・分子量を押さえれば計算も怖くないっす!

次回予告:レッスン3-17「毒物劇物の性状・鑑別(実地)」

次回は性状・鑑別の総合演習。色・臭い・反応から物質を特定する力を総仕上げ。

📍 他のレッスンへ

章全体の学習進度はサイドバーからも確認できます。前後のレッスンで関連事項を横断的に復習しましょう。

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この記事を書いた人

高専から大学院まで9年間にわたり化学を専攻。
消防整備士として10年の実務経験を積み、独立・起業。

消防設備士全類、危険物取扱者全類をはじめ、第二種電気工事士、AI・DD総合種、第三種電気主任技術者など、多数の国家資格を保有。

神戸高等技術専門学院にて危険物取扱者 乙種第4類およびDO第3種の講師を担当。
また、月刊誌「電気と工事(オーム社)」にてコラムを連載中。

実務・教育・執筆の三軸から、専門性と実践力を兼ね備えた情報発信を行っている。

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