ダメ工事とは‥竣工直前で「これでは駄目よ」と、手直しの必要があると指摘された部分について行う手直しや補修工事のこと。
スプリンクラーヘッドからの放水による自動消火を妨げる物などは「散水障害」と呼ばれています。
例えば、エアコンの風は放水を妨げるとされているので “吹出し口から1.5m以上離す” ことで散水障害とならない様に設置します。
(5) ヘッドは、換気口等の空気吹出し口から1.5m以上離れた位置に設けること。ただし、当該換気口等の吹出し方向が、火災の感知に障害とならないように固定されている場合又は自動火災報知設備等の作動により空調設備を自動停止できる場合は、この限りでない。
参考第9 ヘッドの設置方法 消防用設備等の設置に関する運用基準
今回は、エアコンが増えていた計2箇所のスプリンクラーヘッドを1つずつ移設するだけで事なきを得られました。
エアコンが散水障害となったスプリンクラーヘッドの移設工事
◎ ギャー!エアコンが‥
狭い前室の様な場所を接客スペースとして使用したいという施主様の意向があったらしく、スプリンクラーヘッドから1.5m以内の位置にエアコンが設けられていました。
◎ 天井めくり
天井はジプトーン(石膏ボード)であった為、ボードビスを外せば簡単に剥がすことが可能です。
ドライバーが入らない場所には…
今回、エアコンの真上にあるボードを剥がさなければならず『エアコンが邪魔でドライバーが入らん!』という状況に出くわしました。
その時『ハイ、コレ。』と渡して下さったのが、電動ペンドライバーの先に装着するL型アダプターでした。
コレが無ければ天井ボードの脱着ができずオワっていましたので、皆さま是非1つ持っておいた方が宜しいかと。
◎ ヘッド移設・固定
スプリンクラーヘッドは “巻き出しフレキ” というニョロっとした配管で鋼管から分岐して設置されています。
ある程度は動かせますが、許容範囲がありますので移設可能な位置も限られてきます。
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1軽天下地から固定部材を外す
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2散水障害とならない位置まで動かす
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3位置が決まったら軽天下地に固定する
【補足】軽天下地について
防災屋は軽天下地を組むわけではありませんが、ザックリどうなっているか位は知っておいた方が得でしょう。
シングルとダブル
軽天下地は石膏ボードがビス留めされる固定部材ですが、その幅には以下の二種類があります。
ダブルは石膏ボードと石膏ボードの間に位置する軽天下地となる為、ボード2枚がビス留めできる幅となっています。
木造で組まれていた昔の名残で、軽天下地のカタログ等ではシングルやダブルが「野縁(のぶち)」と記載されています。
サンパチとクリップ
通称:サンパチは、幅が38mmのCチャンネルを指しています。
このサンパチを、シングルおよびダブルの軽天下地にクリップで固定します。
👇シングルのクリップ
👇ダブルのクリップ
これによって、スプリンクラーヘッドの固定部材が固定できる様になります。
◎ 新しい石膏ボード加工
スプリンクラーヘッドの位置が変わるので、別の位置に穴をあけ直した石膏ボードを作る必要があります。
寸法をあたって所定の位置に穴を空けた後、カッターで軽くバリを取り除きます。
そのままでは石膏ボードが入らなかったので、端っこをカッターで斜めに削りました。
※数枚であればカッターで何とかなりますが、ボード職人さんは鉋(かんな)を持っています。
◎ 作業完了&片付け
吹出しから1.5m以上離すというよりは、吹出しの正面からズラした位置に移設したという感じです。
石膏ボードを加工した場所にはビニールシートと毛布を敷いていましたが、それでも粉が舞っていたので後片付けが大変でした。
◎ まとめ
- 設計・着工段階ではエアコンの設置予定は無かったが、施主様からの要望で追加されておりスプリンクラーヘッドの散水障害となっていた為、移設工事を行った。
- スプリンクラーヘッドは散水障害が無い様に「空気吹出し口から1.5m以上離れた位置に設けること」という規定があった。
- 計2箇所の移設工事を2人で半日かけて行った様子を紹介した。