ダクト消火設備の交換工事【フード等用簡易自動消火装置】
◎「フード消火」と「ダクト消火」の違い
「フード消火」は調理場上の油を含んだ湯気や煙を囲い込む “フード” 部分に設置される消火設備で、「ダクト消火」は吸い込まれた排気の通り道である “ダクト” に設置される消火設備です。
◎ フード・ダクト消火設備の設置基準
フード・ダクト消火設備の設置基準について、大阪市火災予防条例にて以下の通り規定されています。
次に掲げる排気ダクト等には火炎の伝走を防止できる自動消火装置、その他の排気ダクト等には火炎の伝走を防止できる防火ダンパー又は自動消火装置(以下火炎伝走防止装置という。)を設けること。ただし、排気ダクトを用いず天がいから屋外へ直接排気を行う構造のもの又は排気ダクトの長さ若しくは当該厨房設備の入力及び使用状況から判断して火災予防上支障がないと認められるものにあっては、この限りでない。
- (ア) 高さ31mを超える建築物に設ける排気ダクト等
- (イ) 令別表第 1(16 の 2)項及び(16 の 3)項に掲げる防火対象物に設ける排気ダクト等
- (ウ) 令別表第 1(1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項、(9)項イ及び(16)項イに掲げる防火対象物で延べ面積が3,000㎡以上のものに設ける排気ダクト等
各市町村の火災予防条例にて規定されている為、地域によって若干異なります。
以前、神戸市でダクト消火の設置基準について所轄消防署より「専用排気ダクトの長さが概ね10m以下の場合は、自動消火装置を設置しないことができる。」ことについて指導を受けました。
この時、実際に専用ダクト長さが10m以下となるよう設計し、ダクト消火設備の設置費用を削減することに成功しました。
◎ フード・ダクト消火設備の点検義務
フード等用簡易自動消火装置(=フード・ダクト消火設備)は、以下の有資格者によって他の消防用設備等と同様に半年に一度の周期で点検を行います。
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参考点検する設備の種類と点検者の資格および点検の期間 能美防災㈱、フード等用簡易自動消火装置点検表 岡山市
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◎ 下引きダクト消火設備の交換工事
先日、(3)項ロ 焼肉店の無煙ロースターに設置されている “下引きダクト消火設備” の交換工事を行いましたので、その模様を紹介していきます。
「無煙ロースター」とは‥
「消火器 作動時点灯」のランプ
各テーブルにある「消火器 作動時点灯」の赤色灯が点灯している箇所の無煙ロースターに設置されている下引きダクト消火設備を交換しました。
ダクト消火設備の仕組み
ダクト消火設備は、消火器に “熱感知器” および “消火薬剤ノズル” 等が接続されている様な仕組みです。
交換工事の模様
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1既設ダクト消火設備の撤去
ダクトに固定されていた “熱感知器” および “ノズル” を撤去し、本体を無煙ロースター下部から外へ出します。
消火薬剤は放出されていませんでしたが、既設ダクト消火設備の蓄圧ゲージの値が0を指していました。
同じメーカーの後継機種と交換します。
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2熱感知器およびノズルの取付け
ダクトに、新しい “熱感知器” および “ノズル” を取り付けます。
今回の現場は、既設で「熱感知器が上、ノズルが下」に設置されていた為、同様の箇所に設置しました。
熱感知器とノズルの位置
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なお、銅管を曲げ加工する際は、適宜「チューブベンダ」等の工具を使用します。
銅管を手で無理に加工すると曲がり過ぎて消火薬剤が詰まる可能性がある為、適切な工具を準備しましょう。
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3安全ピンの抜取り
誤噴射防止の為に設置されている安全ピンを抜き取ります。
この時、間違えて “手動ピン” を引き抜かない様に注意して下さい。
ちなみに、手動ピンを引き抜くと消火薬剤が放射されます。
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4「消火器 作動時点灯」赤色灯の結線
既設コネクタには黒い抜け止め装置が設けられていた為、それを抑えながら電線を差し込んで結線を行いました。
今回の現場は、その他の移報(他の設備と連動)は取っていなかった為、使用しない電線がありました。
使用しない電線は、絶縁処理しておきます。
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5「消火器 作動時点灯」の “消灯” 確認
最後に「消火器 作動時点灯」の “消灯” を確認してから、無煙ロースター下の仕舞いをして作業完了です。
条件によりますが、1台あたり大体30分~1時間程度で納めることができました。
◎ ダクト消火設備の金額
今回、交換工事をした下引きダクト消火設備(ロースターLeo)の定価は80,000円(税抜)です。
なお、青木防災㈱が割安な金額でサービスご提供できる理由に以下の3つが挙げられます。
青木防災㈱が割安な理由
- 製造メーカーであるモリタ宮田工業㈱の代理店であり、機器を安く仕入れることができる。
- 同じ様な内容の工事を何度も行っており、必要な工具類が揃っている(減価償却済)。
- 自社施工によって中間手数料を支払わなくてもよい。
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【補足】無煙ロースターの火災事例
無煙ロースター火災は毎年数件発生しており、大阪市消防局からも警告がされています。
平成27年 | 平成28年 | 平成29年 | 平成30年 | 令和元年 | |
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火災件数 | 3 | 4 | 7 | 5 | 4 |
調査の結果、無煙ロースター火災では「清掃不足により油脂でダンパーが固着しているため、正常に閉鎖していない。」ことが要因の一つになっていたと報告されています。
つまりメンテナンスが火災予防において重要であり、その際に下引きダクト消火設備の「消火器 作動時点灯」や外観も確認して下さいませ。
◎ まとめ
- 「フード消火」は調理場上の油を含んだ湯気や煙を囲い込む “フード” 部分に設置される消火設備で、「ダクト消火」は吸い込まれた排気の通り道である “ダクト” に設置される消火設備であった。
- フード・ダクト消火設備の設置基準は各市町村の火災予防条例にて規定されている為、地域によって若干異なった。
- フード等用簡易自動消火装置(=フード・ダクト消火設備)は、第3類 消防設備士および第1種 消防設備点検資格者の有資格者によって他の消防用設備等と同様に半年に一度の周期で点検を行う必要があった。