消防設備士の実務は、大きく以下の3つに分けられます。
- 工事
- 改修
- 点検
古典的な産業分類において、建設業は第二次産業に該当します。
弊社もまた「建設業の許可票」を事務所内に掲げている通り、建設業における消防施設工事業を営んでおります。
よって我々が携わる生業の一つである “工事” については、第二次産業となっています。
加えて、消防用設備点検や防火対象物点検を始めとする “点検” については、サービス業であり第三次産業に該当するでしょう。
ここで『点検後の “改修” って、どっちに該当すんの?』という話になる為、第二次産業と第三次産業の間だと強調する意味も込めて「第2.5次産業」と表現しています。
ちなみに、農業とかだと以前より「6次産業化」とか盛んに謳われてましたよね。
6次産業(ろくじさんぎょう)とは、農業や水産業などの第一次産業が食品加工・流通販売にも業務展開している経営形態を表す、農業経済学者の今村奈良臣が提唱した造語。 また、このような経営の多角化を6次産業化と呼ぶ。
では、表題の「7.5次産業化する市場では…説」について、検証していきます。
7.5次産業化する市場では「改修」の得意な消防設備士が生き残る説
◎「改修」は最も経験値を要する業務
「改修」と一口に言いましても、大雑把に以下の3つの様な業務があるでしょう。
- 消防用設備点検や防火設備定期検査後の不良個所改修
- 定期点検を承っている建物にある各設備トラブル対応
- 前倒しで起こり得る故障などに備えた設備の定期更新
特に、②のトラブル対応は消防設備士の業務の中でもパターンが多いです。
例えば「スプリンクラー設備の誤作動や水漏れ」及び「自動火災報知設備の誤発報原因特定」なんかは、原因不明スタートですから “謎解き” から始まることも。
水没して誤作動した熱感知器を、交換すること自体は容易でしょう。
しかし水没の原因を突き止めなければ、再び同じ現象が起こって消防設備士が走るハメになります。
当然お客様も『オイ…またかよ!何とかしてくれ消防設備士ィィィ!!』ってな気分に。
感知器誤作動の原因として、弊社対応したレアケースに以下の様なものが…。
- 天井裏で出産した猫の破水で濡れて感知器が発報
- 冬場の朝6時に仕込みの必要なメニューの鍋が出す蒸気による昇温で熱感知器が発報
- 階段近くの喫煙スペースで大量の老人が一斉に煙草を吸うことで発生した大量の煙が流れて煙感知器が発報
こんな感じで、一概にマニュアル化しきれない部分があることも「改修」が得意な消防設備士が重宝される一因となるでしょう。
◎「改修」は建物情報を知っている人がすべき?
消防用設備等の設置については消防法で定められていますが、その設置され方については建物ごとのクセがあったりします。
以前、弊社で長らく消防用設備点検をしていた企業さんがコスト削減の為、破格で作業実施する他社に乗り換えられたことがありました。
その時に「改修」だけ、弊社に振って下さるんですね。
おそらく理由は価格面だったかと思います。
弊社員は当該建物の「どこに何があって、どうなっているのか‥。」を熟知した上で改修に取り組むワケです。
他の人が逐一、調べながら作業するのとは改修の効率が格段に違います。
◎「改修」は最適なメンテナンス提案ができる!
新設建物における “工事” については「消防検査をクリアする」というゴールがあるでしょう。
また “点検” については「消防用設備点検報告書の項目上で○✕を判定する」というゴールが決まっています。
(※いずれも消防法を遵守した状況)
“工事” および “点検” も、あらかじめ明確なゴールが設定されているのです。
一方で2.5次産業と題した「改修」については、お客様によって求めるレベルが異なります。
例えば『劣化している為、交換をオススメします。』という案件があったとして、お客様の反応には以下のパターンが‥。
お客様の声を聞いた上で、最適な状態にする為の仕事が求められるのが「改修」の特徴でしょう。
機械的に全てを完璧な状態にする為、際限なく費用を捻出して頂ける…みたいな状況は非現実的なんです。
そこには依然としてニーズに対する交渉が発生し、人間が介在する余地が残されてしまうでしょう。
工事と点検業務は市場化が進行すると、だんだんサービスの単価維持が難しくなってきます。
接客上の人間味が伴う「改修」が得意な消防設備士は、価値が留まるので相対的に生き残っていくと導かれるのです。
以上、7.5次産業化する市場でも「改修」の価値は留まる為、結果的に生き残りやすいサービスとなっている話でした。
◎ まとめ
- 古典的な産業分類において建設業は第二次産業に該当し、消防用設備点検や防火対象物点検を始めとする “点検” については、サービス業であり第三次産業に該当する為その中間に位置する「改修」を「第2.5次産業」と表現して2+3+2.5=7.5次産業としていた。
- 原因不明スタートですから “謎解き” から始まることもある「改修」は、一概にマニュアル化しきれない部分があることも「改修」が得意な消防設備士が重宝される要素となっていた。
- 「改修」については、お客様によって求めるレベルが異なる為、依然としてニーズに対する交渉が発生するので人間が介在する余地が残った。