消防設備士2類 過去問講義
このページの対象と到達目標
対象は、消防設備士甲種第2類・乙種第2類を学ぶ初学者です。泡消火設備の試験を、単に「水を出す試験」と捉えず、放射量、混合濃度、発泡倍率、ポンプの運転状態を別々に確認する工程として学びます。

- 放射量、混合濃度、発泡倍率、ポンプ性能が異なる確認項目であると説明できる。
- 移動式設備では、試験する場所、同時に試験する数、放射量の判定を分けて読める。
- 発泡倍率の計算で、容器質量を先に差し引き、単位をそろえて最後に丸められる。
- ポンプの運転確認を、放射・濃度試験の結果だけで代用しない理由を説明できる。
- 実放射を伴う試験の前後に、排出抑制、回収、復旧、関係者連絡を確認すべきことを理解する。
試験は一つの数字だけで判定しない
泡消火設備では、ポンプが始動しただけでも、泡が見えただけでも、性能確認が終わったとはいえません。試験で見ようとしている対象を、次の四つに分けます。
| 確認項目 | 何を確かめるか | 混同しやすいもの |
|---|---|---|
| 放射量 | 放射区域・方式に必要な泡水溶液が出るか | 圧力値だけを見て放射量を決めること |
| 混合濃度 | 水に対して薬剤が所定の割合で混ざるか | 薬剤原液量だけを見ること |
| 発泡倍率 | 泡水溶液が空気を含んで何倍の泡になったか | 泡の見た目の高さだけで判断すること |
| ポンプ性能 | 定格条件に対し、流量と全揚程の組合せが設計どおりか | 運転音や圧力計の一瞬の表示だけで判断すること |
このページでは、試験の入口となる放射場所の選び方、放射後に採取した泡の判定、計算の順序を扱います。ポンプ固有の性能曲線、型式別の設定圧力、許容運転時間は、設計図書・仕様書・現行基準をそろえなければ決められないため、固定値としては扱いません。
放射試験は「どこで、何を、どの条件で」行うか
移動式の泡消火設備では、試験場所を任意に選びません。放射圧力が最も低くなると予想される箇所を選び、同一階では最大二個の泡消火栓を対象に、実際の放射に近い条件で確認します。これは、配管の途中で圧力損失が生じるため、最も不利になりやすい条件で性能を確認するためです。
放射量の基準は、防護対象物又はその部分の用途によって異なります。道路、自動車の修理・整備、駐車の用に供される部分に設ける移動式設備は、泡水溶液の放射量をノズル一個当たり毎分100 L以上とする条件です。それ以外の防火対象物又はその部分では、毎分200 L以上という別の条件です。用途を取り違えると、100 L/min と 200 L/min を反対にしてしまいます。
放射量は圧力だけから断定せず、該当する泡ノズルの圧力と吐出量の関係、又は現行の試験方法に基づいて読み取ります。試験条件を変えた場合は、圧力の単位(MPa、kPaなど)、流量の単位(L/min、m³/minなど)、ホース条件、同時使用数を記録してから比較します。
発泡倍率は「容器の重さを引いてから割る」
発泡倍率は、泡の体積を、空気が混じる前の泡水溶液の体積で割った無単位の比です。容器へ採取する方法では、容器の容量を、容器を除いた泡試料の量で割って求めます。問題で泡の質量 1 g を 1 mL とみなす条件が示される場合に限り、正味質量 g を泡水溶液体積 mL として計算できます。
発泡倍率 = 容器容量(mL)÷ {採取量(g)−容器質量(g)}
計算の手順は、次の順です。
- 採取量から空の容器質量を引き、泡の正味量を出す。
- 問題の条件がある場合だけ、正味量 g を mL と対応させる。
- 容器容量 mL を正味量 mL で割る。
- 途中では丸めず、選択肢又は試験基準が求める桁で最後に丸める。
容器を含む採取量を分母にすると、泡水溶液の量を大きく見積もるため、発泡倍率を小さく誤ります。発泡倍率の合否は、泡消火薬剤の種類を問わず 5 倍以上という試験上の判定と結び付けて確認します。ただし、発泡方法、薬剤、器具、試験の適用範囲を無視して、任意の泡へ一律に当てはめてはいけません。
ポンプ性能は「流量と全揚程」を対で見る
放射量が不足するとき、ポンプだけを原因と決めることはできません。水源、吸水側の空気混入、弁の状態、配管の閉塞、混合装置、泡ノズル、ホース条件も順に確認します。その上でポンプ性能を試験するときは、流量と全揚程を対にして、定格条件、性能曲線、設計図書、機器の仕様書と照合します。
圧力計の一つの読み、音、振動、漏水だけでは、性能曲線上のどの運転点かは分かりません。試験配管での流量、全揚程、計器の指示、回転・異音・漏水、起動条件を同じ記録に残します。途中の換算では単位を統一し、計算結果の丸め又は四捨五入は、試験基準又は設計図書の指定を優先します。
典型的なつまずき
| つまずき | なぜ誤るか | 立て直し方 |
|---|---|---|
| 100 L/min と 200 L/min を反対にする | 用途の区分を読まず、数字だけを覚える | 道路・整備・駐車の部分と、それ以外を先に二分する。 |
| 発泡倍率で容器質量を引かない | 「採取量」を泡だけの量と誤解する | 総量、容器量、正味量を三行に書く。 |
| 圧力が出ていれば放射量も十分と考える | 圧力と吐出量の関係を省略している | ノズルの圧力-吐出量関係、ホース条件、同時使用数を確認する。 |
| ポンプの運転確認を一つの数値で終える | 流量・全揚程・系統条件を切り離している | 水源から放出口までを戻り、条件を同じ表に記録する。 |
過去問テスト
次の問題は、学習用に整理しています。図版は学習の要点が分かる新規模式図で説明します。
問1 移動式設備の放射試験
移動式の泡消火設備の試験に関する記述として、誤っているものは次のうちどれか。
- 道路の用に供される部分に設置される移動式の泡消火設備の放射量は、100 L/min 以上であること。
- 移動式の泡消火設備は、放射圧力が最も低くなると予想される箇所の泡消火栓について、最大2個の同一階の泡消火栓を対象に実施する。
- 駐車の用に供される部分に設置される移動式の泡消火設備の放射量は、200 L/min 以上であること。
- 試験は、放射圧力が最も低くなると予想される箇所の泡消火栓について実施する。
問2 発泡倍率の合否判定
泡放射試験における発泡倍率の合否判定として、正しいものは次のうちどれか。
- 泡消火薬剤の希釈容量濃度が3%型では5倍以上、6%型では6倍以上であること。
- 水成膜泡消火薬剤の場合は5倍、その他の泡消火薬剤の場合は6倍以上であること。
- 泡消火薬剤の希釈容量濃度が3%型では6倍以上、6%型では8倍以上であること。
- 泡消火薬剤の種類に限らず5倍以上であること。
問3 発泡倍率の計算
容器質量230 g、容積1,000 mL、泡試料採取量(容器を含む)370 gだった場合の発泡倍率として、正しいものは次のうちどれか。
- 約7倍
- 約8倍
- 約9倍
- 約10倍
実務での確認メモ
| 工程 | 確認すること | このページだけで決めないこと |
|---|---|---|
| 放射試験前 | 試験区域、用途区分、同時使用数、関係者連絡、排出抑制・回収計画 | 放射試験を実施する時期、排液・廃棄の具体的手順 |
| 放射量測定 | ノズル、ホース条件、圧力-吐出量関係、L/minという単位 | 他方式・他用途の放射量を流用すること |
| 濃度・発泡倍率 | 薬剤種別、容器容量、容器質量、採取量、測定手順 | 写真だけで器具の適合や薬剤種別を決めること |
| ポンプ性能 | 流量、全揚程、計器、起動、異音・振動・漏水、水源からの系統 | 型式別の設定値、性能曲線、調整方法 |
| 試験後 | 弁・制御・警報・水源・薬剤・排出先の復旧、記録 | 復旧済みと推測して連絡や監視を省くこと |
実放射を伴う試験では、薬剤成分を含む泡水溶液の排出を最小化し、回収・処理を含む現場の手順に従います。測定値が求まっただけで、排出・薬剤交換・設備の運用可否を判断しません。
まとめ
- 放射量、混合濃度、発泡倍率、ポンプ性能は、同じ「試験」でも別の確認項目である。
- 移動式設備の放射試験は、放射圧力が最も低くなると予想される箇所で、用途区分に応じた放射量を確認する。
- 道路・自動車の修理又は整備・駐車の用に供される部分は、移動式設備の放射量をノズル一個当たり毎分100 L以上で確認する。
- 発泡倍率は、容器質量を差し引いた正味量を使い、計算の最後に丸める。
- ポンプ性能の判断には、流量、全揚程、系統条件、仕様書・設計図書が必要である。
次は KAN-01「泡放出口・ヘッドの鑑別」 で、放射する機器を、名称の暗記ではなく用途・接続・働きから見分けます。