【注意喚起!】二酸化炭素消火設備の誤操作による死亡事故への対策案
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不活性ガス消火設備の消火薬剤を二酸化炭素から窒素に交換すると何本ボンベ増えるか計算してみた
以下の機械式タワー駐車場(タテ7m×ヨコ7m×高さ25m)に不活性ガス消火設備を設置することを想定します。
参考第05_01_不活性ガス消火設備(二酸化炭素消火設備)さいたま市
防護区画の体積は以下の通り計算できます。
7×7×25=1,225㎥
◎ 二酸化炭素消火設備の場合
以下の通り防護区画の体積ごとに、1㎥あたりの二酸化炭素消火薬剤の量が規定されています。
防護区画の体積 | 防護区画の体積1㎥あたりの消火薬剤の量 |
50㎥未満 | 1.00kg |
50㎥以上~150㎥未満 | 0.90kg |
150㎥以上~1,500㎥未満 | 0.80kg |
1,500㎥以上 | 0.75kg |
よって、防護区画に対して必要な薬剤の量は以下の通り計算できます。
1,225×0.80=980kg
また、使用するボンベについては内容量82.5ℓで充填比1.5のものを使用すると仮定します。
参考二酸化炭素貯蔵容器 NITTAN
ボンベ1本あたりの二酸化炭素の重量は、以下の通り計算できます。
82.5÷1.5=55kg
よって、必要なボンベの本数は以下の通り計算できます。
980÷55≒17.8
小数点以下を繰り上げて計18本の二酸化炭素ボンベが、防護区画の体積に対して必要であると導けました。
◎ 窒素の場合
窒素の場合、防護区画の体積1㎥あたりに必要な消火薬剤の量は0.516㎥以上0.740㎥と規定されています。
よって、防護区画に対して必要な薬剤の量は以下の通り計算できます。
1.225×0.516=632.1㎥
また、窒素の貯蔵容器の内容積とボンベ1本あたりの充填量は以下の通りです。
貯蔵容器の内容積 | 容器1本あたりの充填量 |
83ℓ | 20.3㎥ |
77ℓ | 18.8㎥ |
68ℓ | 16.6㎥ |
参考第05_02_不活性ガス消火設備(イナートガス消火剤を放射する不活性ガス消火設備)さいたま市
今回、83ℓのボンベを使用するとすれば、必要なボンベの本数は以下の通り計算できます。
632.1÷20.3≒31.1
小数点以下を繰り上げて計32本の窒素ボンベが、防護区画の体積に対して必要であると導けました。
◎ ボンベ室に収まるかどうか
二酸化炭素ボンベが18本に対して窒素ボンベは32本と約1.78倍の数が必要となる為、その設置場所によっては物理的に交換不可能というケースもあり得ます。
ピンポーン♪
数秒後に『ハイ。』男性の声が聞こえたので、火災報知器の点検であることを伝えた。
ガチャリと開いた扉の先には、60歳ほどの男性の姿があった。
『散らかっとるけどスマンな。』
色々な部屋に入っている消防設備士にとっては、そんじょそこらの散らかり具合など気にならない。
ワンルームの細い廊下を抜けて火災報知機のある場所に到着すると、机にノートパソコンが置いてあった。
そのノートパソコンでは、大人の男女が裸で何かをしている映像が再生されていた。
出演する女優が発している音声が部屋中に響き渡っている中、点検を開始した。
『‥‥‥‥‥!?』
男性は気付いた、そして即座にノートパソコンの画面をバタン!と閉じた。
しかし、二つに折りたたまれたノートパソコンからも、まだ女優が発する音声が響き渡っていた。
こちらの様子をチラチラと伺う男性、そして目が合うと少し目をそらす男性。
『‥‥‥‥‥‥。』
数十秒の沈黙、時が流れる。
その部屋の天井の熱感知器の作動試験を終え、声をかけようとしたその時‥
『‥‥‥見てた。』
恥ずかしそうに「見てた」の三文字を発した男性に、火災報知器が正常であった旨を伝えて去った。
◎ まとめ
- 消火薬剤自体が有毒な二酸化炭素から窒素に変更した場合に、二酸化炭素ボンベが18本に対して窒素ボンベは32本と約1.78倍の数が必要となると計算できた。
- ボンベの本数は不活性ガス消火設備の防護区画の体積が分かれば導けますから、それぞれ二酸化炭素と窒素の場合について計算した。
- 不活性ガス消火設備の薬剤交換を二酸化炭素からその他へ検討する際は、ボンベ室を設置する場所についても考慮しなければならなかった。