本記事では、以下の様な疑問を解決していきます。
「蒸発燃焼」と「分解燃焼」の違いがよくわからない!
なぜ第5類の火災に「窒息消火」は効かないのか?
燃焼形態を明確に区別し、それぞれが消防法の規制や実際の危険性(リスク)とどう結びついているのかを解説していきます。
燃焼形態4つ&固体の燃焼3つ(蒸発・分解・表面燃焼)+α
◎ 基礎教養学習パート
物質は、その状態や性質によって、主に4つの燃焼形態に分けられます。
- 気体の燃焼
- 液体の燃焼
- 固体の燃焼
- 特殊な燃焼形態(自己燃焼)
順番に詳しくみていきます。
1. 気体の燃焼
- 定常燃焼(拡散燃焼):ロウソク🕯の炎のように、可燃性ガスと空気が混ざり合いながら燃焼する、比較的穏やかな燃焼。
- 予混合燃焼:ボンベのガス漏れなど、あらかじめ空気と可燃性ガスが適切な濃度で混ざった状態で着火し、爆発的に燃焼する非常に危険な燃焼。
2. 液体の燃焼
- 蒸発燃焼:第4類危険物(ガソリン、灯油、アルコールなど)の燃焼形態であり、危険物取扱者の乙4にて最重要な燃焼形態です。
液体そのものが燃えているのではなく、液体の表面から蒸発して発生した可燃性蒸気が、空気と混ざって燃焼しています。
この ❝蒸気❞ の存在こそが、規制と安全対策のすべての基本となります。
3. 固体の燃焼
固体の燃え方は、物質の性質によって3つに分けられます。
① 蒸発燃焼(昇華燃焼)
加熱すると液体にならず、直接気体になる昇華性を持つ固体がこの燃え方をします。発生した可燃性ガスが燃えます。
代表例:ナフタレン、硫黄、樟脳(しょうのう)
② 分解燃焼
加熱されると物質そのものが熱で分解され、その際に発生した可燃性ガスが燃えます。
代表例:木材、紙、石炭、プラスチック類など、ほとんどの有機物。
③ 表面燃焼
蒸発も分解もせず、固体の表面で直接、酸素と反応して赤熱状態で燃えます。炎を上げないのが特徴です。
代表例:木炭、コークス、金属粉(燃焼速度は速い)
4. 特殊な燃焼形態
自己燃焼(内部燃焼)
第5類危険物(自己反応性物質)に見られる特殊な燃焼。
分子内に可燃物と酸素供給源の両方を持っているため、外部からの酸素なしで燃焼が進みます。
分解燃焼の一種とされます。
代表例:ニトロセルロース、ダイナマイト
◎ 理解度チェックテスト
ガソリンの火災に水をかけても消火が困難な理由の一つを、「蒸発燃焼」という言葉を使って説明してください。
線香やタバコの火は、固体の燃焼形態のうちどれに最も近いですか?
◎ 実力テスト(2問)
物質とその燃焼形態の組み合わせについて、正しく理解できているか確認してみましょう。
物質の燃焼形態について、次のうち誤っているものはどれか。
- ガソリンは、蒸発燃焼する。
- 木材は、分解燃焼する。
- 木炭は、表面燃焼する。
- ナフタレンは、蒸発燃焼する。
- 石炭は、蒸発燃焼する。
次の第4類危険物のうち、常温(20℃)で液面から発生する可燃性蒸気が燃焼する(蒸発燃焼のリスクが顕在化する)ものはどれか。
- ガソリン
- 灯油
- 軽油
- 重油
- ギヤー油
◎ 基礎深掘り解説
燃焼形態と消防法上の消火原則
燃焼形態を理解することは、消防法が定める消火の基本原則を理解することに直結します。
- 蒸発燃焼:燃えているのは「蒸気」なので、液体の蒸発を抑えることが消火の本質です。だからこそ、消防法では第4類危険物の火災に、泡で液面を覆い蒸気発生を止める泡消火設備(窒息効果)が最も効果的とされているのです。
- 分解燃焼:物質の熱分解を止めることが重要です。そのため、水をかけて温度を発火点以下に下げる冷却消火が原則となります。
- 表面燃焼:固体の表面から酸素を遮断する(窒息効果)か、温度を発火点以下に下げる(冷却効果)必要があります。ただし、禁水性の金属粉火災など例外も多く存在します。
- 自己燃焼:外部の酸素を必要としません。このため、消防法では第5類危険物の火災に対し、窒息消火は原則として無効であり、唯一の有効手段は大量注水による冷却消火であると定められています。これが、自己反応性物質を貯蔵する施設に厳格な冷却設備や散水設備が求められる法的な理由です。
なぜ金属粉火災に水は使えないのか?
金属粉(第2類危険物)は「表面燃焼」をします。
では、なぜ消防法では金属粉火災に注水消火を原則として禁止しているのでしょうか?
ヒント:水との反応性
【過去問】燃焼形態4つ&固体の燃焼3つ(蒸発・分解・表面燃焼)+α
燃焼の仕方について、次のA~Dのうち正しいものをすべて掲げているものはどれか。
A. 液体危険物は、液面から蒸発する可燃性蒸気が空気と混合して燃焼するもので、これを蒸発燃焼という。
B. 木材は、熱分解により可燃性ガスが発生し、これが空気と混合して燃焼するもので、これを表面燃焼という。
C. 木炭は、加熱されても分解ガスを発生せず、その表面で燃焼するもので、これを分解燃焼という。
D. ニトログリセリンなどのように、分子中に酸素を含み、自己燃焼するものを内部燃焼という。
- A, B
- B, C
- A, D
- C, D
- B, D
燃焼の仕方について、A~Dのうち正しいものはいくつあるか。
A. 可燃性ガスと支燃性ガスがあらかじめ混合した状態で燃焼することを拡散燃焼という。
B. 木材、紙、石炭、プラスチックなどは分解燃焼をする。
C. ろうそくは蒸発燃焼、木炭は表面燃焼をする。
D. マグネシウム、アルミニウムなどの金属粉は分解燃焼をする。
- 1つ
- 2つ
- 3つ
- 4つ
- 0
燃焼の形態について、次のうち誤っているものはどれか。
- ガソリンは、蒸発燃焼をする。
- 石炭は、分解燃焼をする。
- 木炭は、表面燃焼をする。
- ナフタレンは、分解燃焼をする。
- ニトロセルロースは、自己燃焼をする。
物質の燃焼形式について、次のA~Dの記述のうち正しいものはいくつあるか。
A. 木材、紙、石炭などは、加熱によって分解し、発生した可燃性ガスが燃焼する。
B. ガソリン、アルコールなどは、液体そのものが燃焼するのではなく、液面から蒸発した可燃性蒸気が燃焼する。
C. 木炭、コークスなどは、炎を上げて燃焼する。
D. ニトロセルロースなどは、分子内に酸素を含有し、空気中の酸素がなくても燃焼する。
- 1つ
- 2つ
- 3つ
- 4つ
- 0
物質の燃焼形態について、次のうち誤っているものはどれか。
- ガソリンは、蒸発燃焼する。
- 木材は、分解燃焼する。
- 木炭は、表面燃焼する。
- ナフタレンは、蒸発燃焼する。
- 石炭は、蒸発燃焼する。
ガソリン、軽油、重油の燃焼形態は、次のうちどれに分類されるか。
- 分解燃焼
- 蒸発燃焼
- 表面燃焼
- 自己燃焼
- 予混燃焼
次の物質のうち、燃焼の仕方が他の4つと異なるものはどれか。
- 紙
- プラスチック
- 石炭
- 木炭
- 木材
第5類危険物(自己反応性物質)の燃焼形態である自己燃焼(内部燃焼)の最大の特徴として、正しいものはどれか。
- 炎を上げずに燃える。
- 燃焼速度が非常に遅い。
- 着火するためには非常に高い温度が必要である。
- 窒息消火の効果がほとんどない。
- 必ず有毒なガスを発生する。
次のA~Cの燃焼形態の組み合わせとして、正しいものはどれか。
A. メタノール
B. 硫黄
C. コークス
- A:分解燃焼, B:蒸発燃焼, C:表面燃焼
- A:蒸発燃焼, B:分解燃焼, C:表面燃焼
- A:蒸発燃焼, B:蒸発燃焼, C:表面燃焼
- A:表面燃焼, B:蒸発燃焼, C:分解燃焼
- A:分解燃焼, B:表面燃焼, C:蒸発燃焼
気体の燃焼に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 可燃性ガスと空気が混合しながら燃焼する形態を拡散燃焼という。
- ガスコンロの炎は、主に拡散燃焼である。
- あらかじめ可燃性ガスと空気が適切な割合で混合した状態で着火すると、爆発的な燃焼(予混燃焼)が起こる。
- 予混燃焼の燃焼速度は、拡散燃焼よりもはるかに遅い。
- ガス漏れによる爆発は、予混燃焼の一種である。
◎ まとめ
学習の要点(今回)
- 燃焼は物質の状態や性質により、気体の燃焼、蒸発燃焼、分解燃焼、表面燃焼、自己燃焼に区分される。
- ガソリンなど第4類危険物の燃焼は蒸発燃焼であり、発生する蒸気が燃えている。これは消防法上の「引火性液体」の定義の根拠である。
- 木材や紙は分解燃焼、木炭やコークスは表面燃焼であり、燃え方が全く異なる。
- 第5類危険物は、酸素供給源を必要としない自己燃焼をするため、窒息消火が無効であると消防法で想定されている。
次に学ぶ内容
→ 次は「3. 燃焼の難易」に進み、発火点、引火点、燃焼範囲といったキーワードを理解し、物質の危険性を評価する方法を学びましょう。