覚えたら、解こう。毒物劇物取扱者「過去問テスト」 詳細はこちら

レッスン2-17:電気分解

レッスン2-17:電気分解
毒劇先生

青木さん、今回は電気分解!電池の逆操作です。

強欲な青木

電池と電気分解って何が違うんすか?

毒劇先生

電池=自発的な酸化還元反応で電気を生む電気分解=外部電源で無理矢理酸化還元を起こす。電池では電流が自然に流れるが、電気分解では電源で強制的に流す。でも電極での反応原理は同じで、陰極で還元、陽極で酸化

強欲な青木

陰極・陽極の見分け方は?

毒劇先生

電気分解では:電源の+側に繋がるのが陽極、−側が陰極。陰極には陽イオンが引き寄せられて還元反応(電子受取)、陽極では陰イオン or 電極自身が酸化反応(電子放出)。

強欲な青木

何が析出するかって予測できるんすか?

毒劇先生

可能!イオン化傾向を使う:陰極ではイオン化傾向の小さい金属イオンが先に析出(Cu²⁺等)、大きい場合(Na⁺・K⁺等)は水が還元されて H₂ 発生。陽極では電極が Cu や Ag なら電極自身が溶解、炭素や白金なら水や陰イオンが酸化されて O₂ や Cl₂ が発生。

強欲な青木

ファラデーの法則って?

毒劇先生

流した電気量で析出量が決まるというシンプルな法則。電気量 Q = 電流 I × 時間 t(クーロン)。ファラデー定数 F = 96500 C/mol。Q ÷ F ÷ 価数 = 析出モル数

電気分解の陰極・陽極反応
図解:電気分解の陰極・陽極反応
目次

💪実力試し(3問)

問題1

硫酸銅(CuSO₄)水溶液を白金電極を使って電気分解する場合、陰極で起こる反応はどれか。

  1. 2H₂O + 2e⁻ → H₂ + 2OH⁻
  2. Cu²⁺ + 2e⁻ → Cu
  3. 2H₂O → O₂ + 4H⁺ + 4e⁻
  4. SO₄²⁻ → SO₂ + O₂ + 2e⁻
解答と解説を見る

正解:2

解説:Cu²⁺はイオン化傾向が小さいため陰極で還元され銅が析出する。選択肢1は水の還元(陰極で起こるのはNa⁺・K⁺系の時)、3・4は陽極反応。

間違えやすいポイント:陰極=還元。イオン化傾向が H より小さい金属イオンは析出、大きい場合は水が還元される。

問題2

塩化ナトリウム(NaCl)水溶液を炭素電極で電気分解するとき、陰極で発生するものはどれか。

  1. Na(金属)
  2. 水素 H₂
  3. 塩素 Cl₂
  4. 酸素 O₂
解答と解説を見る

正解:2

解説:Na⁺はイオン化傾向が大きいため陰極で還元されない。代わりに水が還元されて水素H₂が発生(2H₂O + 2e⁻ → H₂ + 2OH⁻)。陽極ではCl⁻が酸化されてCl₂発生。

間違えやすいポイント:Na⁺・K⁺・Ca²⁺・Mg²⁺等のイオン化傾向大の金属イオンは水溶液からは析出しない。水が還元されて H₂。

問題3

硫酸銅水溶液を 1A で 965 秒間電気分解したとき、陰極に析出する銅の質量はいくらか。Cu=63.5、F=96500 C/mol。

  1. 0.0325g
  2. 0.318g
  3. 0.635g
  4. 3.18g
解答と解説を見る

正解:2

解説:電気量 Q = 1×965 = 965 C。モル電子 = 965÷96500 = 0.01 mol。Cu²⁺は2電子受取なので Cu = 0.01÷2 = 0.005 mol。質量 = 0.005×63.5 = 0.318 g。

間違えやすいポイント:Q÷F=電子mol、÷価数で物質mol、×モル質量で質量。Cu²⁺は2価に注意。

🔰基礎教養学習

本単元は①電池との違い ②陰極・陽極の反応 ③ファラデーの法則 ④工業応用の4ブロック構造。

⓪ 電池 vs 電気分解

項目 電池 電気分解
エネルギー 化学→電気(自発的) 電気→化学(強制的)
電流の向き 正極→導線→負極 外部電源が強制
陽極(+) 正極=還元 酸化
陰極(−) 負極=酸化 還元
毒劇先生

電池と電気分解で『正極⇔陽極』『負極⇔陰極』の対応は同じ。混乱しない!

① 陰極(−極)の反応

陰極には陽イオンが引き寄せられ、還元反応が起こる。

陽イオンの種類 陰極の反応
イオン化傾向 小(Cu²⁺・Ag⁺等) その金属が析出 Cu²⁺+2e⁻→Cu
イオン化傾向 大(Na⁺・K⁺等) 水が還元→H₂発生 2H₂O+2e⁻→H₂+2OH⁻
H⁺ 水素発生 2H⁺+2e⁻→H₂

② 陽極(+極)の反応

陽極では酸化反応が起こる。電極の種類で反応が異なる。

電極 陽極の反応
Cu・Ag等 電極自身が溶ける Cu→Cu²⁺+2e⁻
炭素C・白金Pt(不活性) 水 or 陰イオンが酸化
不活性電極+Cl⁻ Cl⁻が酸化→Cl₂発生 2Cl⁻→Cl₂+2e⁻
不活性電極+SO₄²⁻ 水が酸化→O₂発生 2H₂O→O₂+4H⁺+4e⁻
毒劇先生

陽極の判定は電極が活性か不活性かを見る!Cu・Agは溶ける、C・Ptは水・陰イオンが酸化される。

③ ファラデーの法則

ファラデーの法則:電極で析出(または溶解)する物質の量は流した電気量に比例する。

👉公式

  • 電気量 Q (C) = 電流 I (A) × 時間 t (秒)
  • 電子の物質量 = Q ÷ F(F=ファラデー定数96500 C/mol)
  • 析出物質量 = 電子モル数 ÷ イオンの価数
  • 析出質量 = 物質量 × モル質量

👉計算例

例:CuSO₄水溶液を 2A で 48250 秒電気分解すると銅は何 g 析出するか?
Q = 2×48250 = 96500 C。電子 = 96500÷96500 = 1 mol。Cu²⁺は2価 → Cu = 0.5 mol → 質量 = 0.5×63.5 = 31.75 g

④ 工業応用

応用 反応 内容
銅精錬 粗銅→純銅 陽極:粗銅(Cu・Ni・Ag・Au)/陰極:純銅
アルミ精錬 Al₂O₃(溶融塩電解) 氷晶石を融解剤、陽極C消費
水酸化Na製造 NaCl水溶液の電気分解 イオン交換膜法・陽極Cl₂・陰極H₂
金属メッキ 装飾・防食目的 陰極=メッキ対象、陽極=被メッキ金属
水素製造 水の電気分解 2H₂O→2H₂+O₂(燃料電池用)

✅理解度チェックテスト(3問)

チェック1(○✕)

次の記述は正しいか誤りか、○✕で答えてください。

「電気分解では陽極で酸化反応、陰極で還元反応が起こる。」

答えを見る

正解:○(正しい)

解説:正しい。電池も電気分解も陽極=酸化、陰極=還元。

チェック2(穴埋め)

次の文の【 】に入る最も適切な語句を選んでください。

ファラデー定数は【   】C/molである。

  1. 1 C/mol
  2. 9650 C/mol
  3. 96500 C/mol
  4. 9.65×10⁴ eV
答えを見る

正解:3

解説:F = 96500 C/mol(電子1 molが運ぶ電気量)。約 9.65×10⁴ C/mol。

チェック3(4択)

NaCl水溶液を電気分解した場合、陽極で発生する気体はどれか(炭素電極使用)。

  1. 水素 H₂
  2. 酸素 O₂
  3. 塩素 Cl₂
  4. 窒素 N₂
答えを見る

正解:3

ポイント:Cl⁻が酸化されて Cl₂ が発生(2Cl⁻→Cl₂+2e⁻)。陰極ではH₂発生。

🪏深掘り解説

テーマ1:銅精錬と電解精錬

粗銅(Cu 99%・不純物Ni・Fe・Ag・Au等)を陽極、純銅板を陰極、CuSO₄水溶液で電解。陽極で Cu と Ni・Fe は溶解、Ag・Au はイオン化傾向小のため溶けず陽極泥として沈殿。Ni・Fe²⁺は溶液中に残り、Cu²⁺のみが陰極で純銅として析出(純度99.99%)。陽極泥からは金銀が副産物として回収される。

テーマ2:毒物劇物と電気分解

NaCl水溶液の電気分解で大量の水酸化ナトリウム(劇物)と塩素(劇物)が生産される。メッキ工程ではシアン化合物(毒物)が電解液に使われることがあり、電気めっき業は第22条の業務上取扱者届出の対象。

テーマ3:アルミ精錬のエネルギー

アルミ1トン製造には電力約15000kWh必要。Al₂O₃の融解温度(2050℃)を下げるため氷晶石 Na₃AlF₆を混ぜて約950℃で電解。『電気の缶詰』と言われるほどエネルギー集約型。リサイクルは新造の約3%のエネルギーで済むのでアルミ缶回収が重要。

🥊過去問演習(全10問)

Q1. 電気分解の原理として正しいものはどれか。

Q2. 電気分解において陽極(+極)で起こる反応はどれか。

Q3. 電気分解において陰極(-極)で起こる反応はどれか。

Q4. 希硫酸の電気分解で両極から発生する気体として正しい組み合わせはどれか。

Q5. NaCl 水溶液の電気分解で陰極に発生する気体として正しいものはどれか。

Q6. NaCl 水溶液の電気分解で陽極に発生する気体として正しいものはどれか。

Q7. 銅の電解精錬の目的として正しいものはどれか。

Q8. ファラデーの電気分解の法則で最も重要な原理はどれか。

Q9. 1 ファラデー(1 F)の意味として正しいものはどれか。

Q10. 電気分解の工業用途として最も代表的なものはどれか。

あなたのスコアは

📝まとめと次の学習へのつなぎ

今回の学習ポイント

  • 電気分解:外部電源で強制的に酸化還元
  • 陰極=還元(Cu²⁺→Cu、大イオン化傾向なら水還元H₂)
  • 陽極=酸化(Cu→Cu²⁺、不活性電極なら水酸化O₂・Cl⁻酸化Cl₂)
  • ファラデーの法則:Q = It、Q÷F÷価数=析出mol
  • 工業応用:銅精錬・アルミ精錬・NaOH製造・メッキ
毒劇先生

電池と表裏一体の電気分解。イオン化傾向で全てが予測できます!

次回予告:レッスン2-18「有機化合物の基礎」

次回から有機化学へ。炭素骨格・官能基・命名法を学びます。毒劇物にも多数の有機化合物が含まれます。

📍 他のレッスンへ

章全体の学習進度はサイドバーからも確認できます。前後のレッスンで関連事項を横断的に復習しましょう。

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この記事を書いた人

高専から大学院まで9年間にわたり化学を専攻。
消防整備士として10年の実務経験を積み、独立・起業。

消防設備士全類、危険物取扱者全類をはじめ、第二種電気工事士、AI・DD総合種、第三種電気主任技術者など、多数の国家資格を保有。

神戸高等技術専門学院にて危険物取扱者 乙種第4類およびDO第3種の講師を担当。
また、月刊誌「電気と工事(オーム社)」にてコラムを連載中。

実務・教育・執筆の三軸から、専門性と実践力を兼ね備えた情報発信を行っている。

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