誘導灯の視認性検証 ~もし火災時の白煙が充満したら~
①緒言
従来より『非常口のコレ、煙ブワ~ァなっても見えんの?』という質問を、お客様より消防設備士へ定期的に頂くことがあった。その際の回答として『こん位の煙やったら、コレ見えまへんわ~。』という話ができる様な説明用のネタとしてWeb上に簡単な実験と、その結果を置いておきたかった。
防火管理を怠ることで損害を負う当事者となるのは建物オーナーや建物利用者であるが、現在は危機意識が低く『(自分は大丈夫‥)』といった偏見の域を出ておらず大切な人の命を失ってから重要さに気付き、時すでに遅しといった状況。
また、青木防災㈱は消防訓練に注力しており、形骸化してしまった消防訓練から脱却を志向している。あらゆる手段を用いて防火管理意識の向上を図っており、消防用設備等の一つである誘導灯の見え方について言及することを切り口の一つとしたかった。
②実験方法
誘導灯の設置個所と、それを見る人の目線との間の距離を90cmと想定する。
木製の箱(30cm×30cm×90cm)の奥に避難口誘導灯C級を取付け、箱内へスモークマシンの煙を送り込む。
照度計にLEDライトを照射して100lx(ルクス)となる位置を原点とし、そこから煙による減光の濃度%を測定する。
照度とは‥測定面に照射されている光の量のことであり、入射光束の面積に対する密度をいう。単位はlx(ルクス)で表す(1lx=1lm/㎡)
③実験結果
煙の濃度%が増す毎に、誘導灯の視認性は以下の通り変化していった。
煙の濃度が上がるに従って、だんだん誘導灯が見えづらくなることが確認できた。
④考察
火災が進行すると天井付近に高濃度の煙が滞留する為、誘導灯が見づらくなるだけでなく避難者も姿勢を低くした状態で動くことになる。
よって、普段より視野が狭くなる中で、いかに誘導灯を含む種々の手段を用いて非常口の場所を把握して避難できるかが生死を分けると考えられる。
誘導灯のサイズを大きくする(例:C級→B級など)
通路誘導灯を低い位置に設置する
音声・点滅機能付き誘導灯にする
参考音声誘導・点滅機能付き誘導灯停止用の蓄積型煙感知器設置基準
他にも、例えば阪神淡路大震災の被害を受けた結果、防災意識の高い神戸市においては「非常口の扉自体を緑色に塗る」といった策が取られており、一歩先を行く神戸市が取り組んでいることからも非常口を識別させるための工夫が重要であると分かる。
実験結果および考察の内容を踏まえて、より有意義な消防訓練を実施できる様に努めたい。
⑤総括
- 火災発生時の白煙が天井付近に充満した場合を想定した実験装置を用いて、誘導灯の視認性変化の検証が青木防災㈱の義平社員によって実施された。
- 照度計にLEDライトを照射して100lx(ルクス)となる位置を原点とし、そこから煙による減光の濃度%を測定した結果、煙の濃度60%付近から顕著に見えづらさが増していた。
- 火災が進行して天井付近に高濃度の煙が滞留すると誘導灯が見づらくなるだけでなく避難者も姿勢を低くした状態で動くことになる為、普段より視野が狭くなる中で、いかに誘導灯を含む種々の手段を用いて非常口の場所を把握して避難できるかが生死を分けると考えられ、それらを消防訓練時に伝えたかった。