実際に女性で消防設備士として活躍されている同志より、以下の様なお話を伺ったことがありました。
私は消防設備業界は、女性も活躍できる業界だと信じております。
実際に女性が独り暮しをするアパートや、ご老人・女子トイレの点検などでは喜んでいただいております。
弊社は未だ考え方も古く、業務に関しては『習うと言うより見て覚えろ、行ったことある物件ならわかるだろう。』と、女はスッこんでろ(言いはしませんが)的なところがあり、まだまだ経験が足りません。
十年先に入社されてる女性社員も、とても苦労されていたそうです…。
女性の消防設備士が少ない理由
【理由①】実績不足
これまで女性の消防設備士が活躍していた前例が無いと、女性の受け入れ体制が整っていない組織だとみられて職場候補から避けられるでしょう。
実際に、女性初の消防設備士‥として会社に入った方には、残念ながら「浮いてしまう」とか「干された様な扱いをされる」といった特有の苦労があったという話も聞きます。
もし、女性の消防設備士さんを迎え入れたい防災屋があるならば、どういう風に女性が消防設備士として活躍できる組織なのか・やっていけるのかをイメージしてもらう必要がありそうです。
理由その①
女性の消防設備士が活躍している「前例」or「情報」が少なく、自分が働く姿をイメージしづらい。
【理由②】分業できていない
消防設備士の実務には複数の要素があり、その中には女性の方が高い成果を出しやすそうな内容が含まれています。
弊社を含む多くの防災屋が携わる実務は、大きく以下の3つに大別されるでしょう。
消防設備士の実務3つ
- 「設計」‥所轄消防署への届出書類に添付する図面類や計算書の作成など
- 「施工」‥建設現場にて消防用設備等の設置工事、不良個所の改修など
- 「メンテナンス」‥消防関係法令に基づく定期点検および整備、報告など
上記の内、力仕事が含まれることで男性向きであるのが「施工」でしょう。
そして、むしろ女性の方が高いパフォーマンスを発揮できる場合がある業務として「設計」と「メンテナンス」が該当します。
よって、そもそも「施工」メインの防災屋については、女性が活躍する場面が少ない設定であるとも言えるので入社前に要調査です。
【補足】消防設備士の「設計」は価値が高い
しかし、多くの消防設備士は “着工届” という甲種消防設備士のみが作成できる独占業務に従事しており、その中に「設計」が含まれます。
そして「設計」はパソコンの操作が得意だったり、デスクワークが平気である‥といった現場堅気な人が苦手とするスキルが必要な業務になっています。
【参考】発注者側の声
発注者側の人と話すと「設計屋」と「施工屋」と呼び分けていて、どちらかというと多くの消防設備士は「施工屋」でしょう。
そして、発注者側のニーズとして以下の様なお声があります。
建設コンサル
施工さんって‥
発注する時に「設計さん」と「施工さん」で分けんのが面倒‥。
しかも「施工さん」が、しばしば設計側の意図を理解して無くて違った施工をしてしまってトラブルになることがあって大変。
だから設計もできる施工屋がいたら、そこに頼みたい!…ってなるわ。
施工が得意な親方と、設計ができる担当者が力を併せることができている組織であれば、お客様にとっても一括で発注できてラクなのです。
理由その②
社内で分業ができておらず、女性の消防設備士が高いパフォーマンスを発揮できる部分が把握できていない。
【理由③】生産性への意識が低い
実務に従事していると『もし女性の消防設備士がいれば‥早く終わるのに。』という場面に遭遇します。
例えば以前(9)項イ 蒸気浴場の現場にて『男湯は自由に出入り可能だけど、女湯は一週間後じゃないと‥』という案件がありました。
この様に顕在化している単純なニーズもある女性の消防設備士が現場に少ないことの背景には、男性でも時間をかければOK的な価値観がある気がしてなりません。
女性が望まれる現場でさえ、半ば無理矢理にでも男性で納めるといった現状は「生産性 = 成果(付加価値) ÷ 投入資源(コスト)」という仕事の効率化への意識が低いまま放置されていることに他ならないでしょう。
理由その③
より少ないコストで大きな成果を出すといった生産性を上げようとする意識が低く、女性の消防設備士を起用した方がいい場面も未だ放置されたままになっている。
【解決策】建設業界で女性が活躍するには
元々『人手不足だぁ~』と嘆くだけ嘆いたものの特に何も改善せずに放置したままってのが建設業界な気がしてましたが、国土交通省から「もっと女性が活躍できる建設業」推進パッケージなる取り組みがあったのを発見しました。
この中で、特に「リーダーとなる女性」って部分について、実現されれば女性活躍のモデルケースとなって大きな一手っぽいですが非常にハードル高そうだなと。
【悲報】無能が占めやすい管理職
大手企業に勤める知人の話を聞くと、軒並みピーターの法則にあてはまる現象が起こっているなと気づきます。
ピーターの法則とは‥組織構成員の労働に関する社会学の法則。
- 能力主義の階層社会では、人間は能力の極限まで出世する。したがって、有能な平(ひら)構成員は、無能な中間管理職になる。
- 時が経つにつれて、人間はみな出世していく。無能な平構成員は、そのまま平構成員の地位に落ち着く。また、有能な平構成員は無能な中間管理職の地位に落ち着く。その結果、各階層は、無能な人間で埋め尽くされる。
- その組織の仕事は、まだ出世の余地のある人間によって遂行される。
参考ピーターの法則
ちなみに現時点における建設業界の女性管理職比率について調べた結果、公開されている24社の平均を計算してみると‥わずか約1.8%でした。
ここで言いたいのは、女性に管理職を目指しましょう…って事ではなく「女性への理解が乏しい無能が上に座っている傾向にあるよ」って話です。
それでも女性が活躍するために…
現時点で数%の女性管理職がいらっしゃるのですが、おそらく男性社会のハンデがあっても上に立てる優秀な方々だろうと察しがつきます。
今後、女性が消防設備士として活躍しやすい風土をもつ組織となる為には、以下の様な条件が挙げられます。
- 既に女性の消防設備士や管理職がいて、女性が消防設備士として働くためのルートが組織内にて確保されている。
- 上席に消防設備士を含む色々な役割で女性が活躍できる組織にしたいという理解があり、それが推進されている。
- たまたま入った女性の消防設備士が『絶対に女性が活躍できる場に変えてやる!』と断固たる決意を持っている。
これまでは “たまたま‥” という個の女性に頼る形の施策に依存しがちですが、これから先は組織内で女性の活躍について理解を示す施策に以降しつつ実績を積み上げていく方向にシフトすべきでしょう。
当たり前に女性の消防設備士が活躍している業界になっていけばと思います。
【追伸】大阪で女性消防設備士の求人をお探しの方
私が経営している(株)防災屋では男女問わず消防設備士を募集しております。
現在まだ大阪の求人しかありませんが、これから全国展開もしていきます。
女性消防設備士として活躍したい方のお問い合わせをお待ちしております。
◎ まとめ
- 女性の消防設備士が少ない理由として、女性の消防設備士が活躍している「前例」or「情報」が少なく、自分が働く姿をイメージしづらいことや、社内で分業ができておらず、女性の消防設備士が高いパフォーマンスを発揮できる部分が把握できていないことが挙げられた。
- より少ないコストで大きな成果を出すといった生産性を上げようとする意識が低く、女性の消防設備士を起用した方がいい場面も未だ放置されたままになっていた。
- たまたま入った女性の消防設備士が『絶対に女性が活躍できる場に変えてやる!』と断固たる決意を持っている場合だけでなく、これから先は組織内で女性の活躍について理解を示す施策に以降しつつ実績を積み上げていく方向にシフトすべきであった。
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