ポイント抑えれば簡単なので、ここでは消防設備士試験の過去問にも触れながら解説していきます!
消防法の「遡及」とは
消防法は一定の条件に当てはまる防火対象物については、過去の建物であっても現行の基準が適用=遡及(そきゅう)する法律です。
まず、消防法が遡及して適用されない場合について確認していきましょう。
消防法が遡及されない防火対象物
消防法が遡及されない=現行の消防法が適用除外されるのは以下の既存防火対象物です。
既に建っている防火対象物や、法改正前に工事に着手していた建物には消防法の遡及適用はされません。
よって消防法においても「既存不適格」の物件は生じ得ます。
しかし、いくつかの条件を満たしてしまうと消防法が遡及して適用される例外の規定が設けられています。
消防法が遡及して適用される条件
消防法が遡及して適用されるかどうかを分ける条件として、大きく以下の3種類が挙げられます。
- 消防用設備等の種類
- 増改築や修繕および模様替えの規模
- 用途変更
詳しく見ていきましょう。
1. 消防用設備等の種類による遡及
消防用設備等の種類によって以下の通り消防法の遡及が適用されるものがあります。
参考消防法施行令 第34条〔適用が除外されない消防用設備等〕
追記
法改正により、不活性ガス消火設備も遡及適用する設備となりました。
(全域放出方式のもので総務省令で定める不活性ガス消火剤を放射するものに限る。)
(不活性ガス消火設備の設置及び維持に関する技術上の基準であつて総務省令で定めるものの適用を受ける部分に限る。)
例えば、もし閉止弁のない二酸化炭素消火設備には閉止弁を設置しなければならない等、現行の二酸化炭素消火設備のルールに合わせる必要があります。
これから試験に出やすい部分でもありますので、最新の情報をチェックしておきましょう!
2. 増改築や修繕および模様替えの規模による遡及
大きく以下の4つの場合については消防法が遡及されます。
- 従前の規定に、もともと違反している場合
- 工事の着手が、法律が施行または適用された後で政令で定める増築・改築または主要構造部である壁について行う過半の修繕もしくは模様替えをした場合
- もとから消防用設備等が規定に適合していた場合
- 特定防火対象物である場合
特に、実務でも消防設備士の試験でも頻出する2. と4. の場合に注意が必要です。
① 従前の規定に、もともと違反している場合
もともと消防法を違反していた建物について、それを是正する際は現行の基準に従わなければならないという意味です。
②工事の着手が、法律が施行または適用された後で政令で定める増築・改築または主要構造部である壁について行う過半の修繕もしくは模様替えをした場合
こちら消防設備士の過去問にて頻出ですから必ず覚えておきましょう。
参考消防法施行令 第34条の2〔増築及び改築の範囲〕、消防法施行令 第34条の3〔大規模の修繕及び模様替えの範囲〕
政令で定める増改築とは
- 増築または改築に係る当該防火対象物の部分の床面積の合計が1,000㎡以上となるもの
- 増築または改築に係る当該防火対象物の部分の床面積の合計が、基準時における当該防火対象物の延べ面積の1/2以上となるもの
③もとから消防用設備等が規定に適合していた場合
本来その建物に不要(任意設置)していた設備が、法改正によって義務設置扱いになったとします。
その際に『メンテナンス費用がかかるから…従前の規定なら不要だったので外します!』というのはダメという話です。
④特定防火対象物
結局、特定防火対象物の用途に該当する建物であれば消防法は遡及するのです。
特定防火対象物と非特定防火対象物については以下のブログをご参照下さいませ。
参考【消防法】特定防火対象物とは?一番わかりやすく解説!【覚え方】
続きを見る
3. 用途変更による遡及
実際もう少しルールは細かいですが、変更後の用途が非特定防火対象物の場合のみ特例で遡及しなくてよいと覚えておいてください。
ちなみにイラストは非特定防火対象物として(15)項 その他の事業所および(14)項 倉庫を、特定防火対象物として(3)項ロ 飲食店を例示しています。
では、ここまで学んだ話を実際に消防設備士の試験に出題された過去問を用いてクイズ形式でおさらいしていきましょう!
【過去問】消防法の遡及適用とは?用途変更の特例も解説
消防用設備等の技術上の基準が改正された場合、すべての防火対象物に改正後の規定が適用される消防用設備等は次のうちどれか。(甲4奈良)
1 スプリンクラー設備
2 動力消防ポンプ設備
3 非常警報設備
4 排煙設備
防火対象物の増築に関する次の記述において、文中の〔 〕に当てはまる数値として、消防法令上、正しいものはどれか。(乙6京都)
「設備等技術基準の施行または適用の際、現に存する特定防火対象物以外の防火対象物における消防用設備等 (消火器・避難器具その他政令で定めるものを除く。) がこれらの規定に適合せず、当該規定が適用されていないとき、当該防火対象物を増築した場合、基準時以降の増築部分の床面積の合計が、〔 〕㎡となるものは、当該消防用設備等を当該規定に適合させなけばならない。ただし、当該消防用設備等が、従前の規定に適合しており、工事の着手は基準時以降であって、増築部分の床面積の合計が、基準時における当該防火対象物の延べ面積の2分の1以上とならないものである。」
1 300
2 500
3 700
4 1,000
既存の特定防火対象物以外の防火対象物を消防用設備等(消火器、避難器具その他政令で定めるものを除く。)の技術上の基準が改正された後に増築した場合、消防用設備等を改正後の基準に適合させなければならないものとして、消防法令上、正しいものは次のうちどれか。ただし、当該消防用設備等が、従前の規定に適合しているものとする。(乙6滋賀)
1 増築部分の床面積の合計が、500㎡を超え、かつ、増築前の延べ面積の1 / 3以上である場合
2 増築部分の床面積の合計が、500㎡以上であるか、または増築前の延べ面積の1 / 3以上である場合
3 増築部分の床面積の合計が、1,000㎡を超え、かつ、増築前の延べ面積の1 / 2以上である場合
4 増築部分の床面積の合計が、1,000㎡以上であるか、または増築前の延べ面積の1 / 2以上である場合
防火対象物の用途が変更された場合の消防用設備等の技術上の基準の適用について、消防法令上、誤っているものは次のうちどれか。(甲4奈良)
1 変更後の用途が特定防火対象物に該当する場合は、変更後の用途区分に適合する消防用設備等を設置しなければならない。
2 用途変更前に設置された消防用設備等が用途変更前の基準に違反していた場合は、用途変更後の基準に適合する消防用設備等を設置しなければならない。
3 用途変更前に設置された適法な消防用設備等については、法令に定める場合を除き、変更する必要は無い。
4 用途変更後、設置義務のなくなった消防用設備等については、撤去するなど確実に機能を停止させなければならない。
現に存する特定防火対象物以外の防火対象物における消防用設備等(消火器・避難器具その他政令で定めるものを除く。)に係る設備等技術基準が改正された後に、当該防火対象物の大規模の修繕または模様替えを行った場合、当該消防用設備等を改正後の基準に適合させなければならない大規模の修繕および模様替えとして、消防法令上、正しいものは次のうちどれか。ただし、当該消防用設備等は、従前の規定に適合しているものとする。(甲5奈良)
1 主要構造部である屋根および柱について行う、それぞれ過半の修繕または模様替え
2 主要構造部である床について行う、過半の修繕または模様替え
3 主要構造部である壁について行う、過半の修繕または模様替え
4 主要構造部である天井・床および屋根について行う、それぞれ過半の修繕または模様替え
防火対象物の用途が変更された場合の消防用設備等の技術上の基準の適用について、消防法令上、誤っているものは次のうちどれか。(甲1大阪)
1 原則として、用途変更前に設置された消防用設備等はそのままにしておいてよいが、その後、一定規模以上の増改築工事を行う場合は、変更後の用途区分に適合する消防用設備等を設置しなければならない。
2 用途変更前に設置された消防用設備等が基準に違反していた場合は、用途変更後の基準に適合する消防用設備等を設置しなければならない。
3 変更後の用途が特定防火対象物に該当する場合は、変更後の用途区分に適合する消防用設備等を設置しなければならない。
4 用途変更後に不要となった消防用設備等については、撤去する等確実に機能を停止させなければならない。
消防用設備等(消火器、避難器具その他政令で定めるものを除く。)の技術上の基準が改正された後に防火対象物を増築または改築した場合で、消防用設備等を改正後の基準に適合させなければならないものとして消防法令上、正しいものは次のうちどれか。ただし当該消防用設備等は、従前の規定に適合しているものとする。
- 延べ面積が1,000㎡の工場を1,500㎡に増築する。
- 延べ面積が1,500㎡の倉庫を2,000㎡に増築する。
- 延べ面積が2,500㎡の図書館のうち、700㎡を改築する。
- 延べ面積が3,000㎡の中学校のうち、800㎡を改築する。
消防設備士「過去問テスト」は、その名の通り“過去に出た問題” のテストです。
ブログでお馴染みの管理人が過去問に関する情報収集を積み重ね、その中からピックアップして過去問ベースの模擬試験を作成したものです。
上記以外に新傾向問題の情報など提供あり次第、随時追記して解説を更新していきます。