平素より大変ご贔屓に頂いて降りますお客様より、以下の問い合わせが御座いました。
外部階段から北に抜ける通路上にレンタルサイクルを設置するにあたり、消防法の観点より避難通路(障害物とならない様)の確保の通路幅もしくは設置不可の箇所をご教示ください。
レンタルサイクルを設置すると常設となりますので設置後に御社点検時に避難障害として挙がらないようにご教示ください。
また、当該物件の所轄消防署へ問い合わせることをクライアント側が望んでいない為、別の所轄消防署に問い合わせをして回答仰いで頂けますと幸いです。
「レンタルサイクル」とは‥その名の通り、自転車を借りることができるサービス。
大阪市平野区でも “ひらちゃり” なる善意のレンタルサイクルサービスがあったが、24時間¥100円という便利さから民度が低くマナーの悪い利用者層がパクったり乗り捨てしたりとトラブルが相次いだらしく、今調べたらサービス終了していた。
防火対象物点検 第4防炎物品等
消防設備士の観点からの回答だけでなく、消防署の予防課宛に問い合わせた結果を記していきます。
敷地内通路に駐輪場を設けても消防法上は問題無い?
◎ 敷地内通路とは‥
建築基準法施行令 第128条にて、敷地内通路について以下の通り謳われています。
敷地内には、第123条〔避難階段及び特別避難階段の構造〕第二項の屋外に設ける避難階段および第125条〔屋外への出口〕第一項の出口から道又は公園・広場その他の空地に通ずる幅員が1.5m以上の通路を設けなければならない。
◎ 消防検査時に屋外避難階段に係わる指導があった⁉
消防設備士の観点からは、頂いた図面より通路幅1m確保していればレンタルサイクルを設置しても問題ないのではないかと判断しました。
その理由としては消防法施行規則の第5条の2〔避難上又は消火活動上有効な開口部を有しない階〕の有窓・無窓階の判定に係る “開口部” に関する規定で、幅員1m以上の通路その他の空地に面していなければ “避難上又は消火活動上有効な開口部” かどうかの判断が分かれるためです。
避難上又は消火活動上有効な開口部は、道又は道に通ずる幅員1m以上の通路その他の空地に面したものであること。
本件では、レンタルサイクルの駐輪場を設置しても通路幅1m以上か否かが特に変わるわけではないと見受けられた為、問題ないと判断できました。
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☟別件の話
しかし以前、大阪府内某所轄消防署の方から消防検査時に「屋外避難階段の出口にある駐輪場のゼブラゾーンをズラしてくれ」と指摘されたのを思い出しました。
屋外避難階段を出た先の敷地内通路にレンタルサイクルを設置する件について、特に消防法上で引っかかってくることは無いと見受けられましたが、過去に別件で指導されたことあったので念の為に消防署の予防担当者様にも話を伺いました。
◎ 所轄外消防署へ相談
今回お客様の要望で『所轄消防署には相談しないで欲しい』と条件付けありましたので、所轄外消防署へ図面を持参して相談に行きました。
☟以下、予防担当者様の回答です。
予防担当者様の回答
Q. 屋外避難階段前にレンタルサイクル駐輪場を設置しても問題無いか。
A. 本件について、消防側では建物外のことについて法的な指導は無いので、外開きの扉に干渉しなければOKです。
ただし、屋根がつくと建物と同じ扱いになるので、それに留意して下さい。
よって、敷地内通路にレンタルサイクルを設置しても消防法上は問題ないです。
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ちなみに大阪府内某所轄消防署の方から「屋外避難階段の出口にある駐輪場のゼブラゾーンをズラしてくれ」と過去に指摘された件についても見解を仰いだところ、以下の回答を頂けました。
予防担当者様の回答
それは現地を確認した上での「お願い」レベルの話で、法的根拠は特にないと思われます。
設備屋さんもそうですが‥我々が取扱う消防法は基本「建物の中」の話になっているので、建物を出てからの話はしないですよね。
【補足】建築基準法上の注意
その他、消防法ではなく建築基準法等での規定で補足です。
敷地内通路の幅員が0.9m以上でよい場合
敷地内通路の幅員について、法改正で以下の通り緩和されています。
敷地内に設けるべき通路の幅員の合理化
一定の用途や規模等の建築物は敷地内の通路の幅員を1.5m以上としなければならなかったところ、階数が3以下で延べ面積200㎡未満の建築物については、0.9m以上確保すればよいこととする。
2段ラック式の駐輪場はNG⁉
ネット上で調べていた所、江戸川区の建築基準法等における取扱い基準にて以下の文言が謳われていました。
『屋外に十分開放され、かつ、避難上有効に区画された通路』部分は、十分に外気に開放されたピロティ状の通路であること。また、十分に外気に開放されたとは、以下の要件を満たすものとする。
- ① 通路の片側は柱のみで壁は設置しないものとし、有効幅員 50cm 以上開放していること。
- ② 開放された側には物を置かないこと。ただし、隣地境界側のピロティ外部に屋根なし平置き駐輪場で必要最小限に計画された場合はこの限りではない。
※2 段ラック式駐輪場等は開放性を失うため置かないこと。
参考建築基準法等における取扱い基準_江戸川区
消防法だけでなく、建築基準法にも留意しましょう!
◎ まとめ
- 屋外避難階段を出た先の敷地内通路へレンタルサイクルを設置しても消防法上問題が無いかどうか、お客様より問い合わせがあった。
- 消防設備士の観点からだけではなく、実際に所轄消防署の予防担当者様にも話を伺った。
- 消防側では建物外のことについて法的な指導は無いので、外開きの扉に干渉しなければOKであったが、屋根がつくと建物と同じ扱いになるので留意すべきであった。
消防設備士の観点よりご教示願います。
ビル管理会社ご担当者様