【解説】大阪府内 800超の小中学校 防火扉が火災時に閉まらないおそれ
◎ NHKニュースさんのツイート
以下の様な、防火扉の不備に関するツイートがNHKニュースさん(@nhk_news)投稿されました。
参考大阪府内 800超の小中学校 防火扉が火災時に閉まらないおそれ
大阪府内の800を超える小中学校で不備がある防火扉が見つかり、火災の際に正常に閉まらないおそれがあることが、NHKの取材で分かりました。専門家は「大きな被害が出るおそれがあり、速やかにメンテナンスを行うのが基本だ」と指摘しています。
公立の小中学校の防火扉やシャッターといった防火設備について、大阪府内の自治体の教育委員会などは年に1回、正常に作動するか点検しています。
この結果について、大阪府内に33ある市の教育委員会に情報公開請求したところ、全体のおよそ6割にあたる838の小中学校で、不備がある防火扉が見つかっていたことが分かりました。
扉がゆがんで床や天井に接触したり、煙や熱を感知する機械が故障したりといった不備が多く、火災の際に、正常に閉まらないおそれがあるということです。
公立の小中学校は1970年代の第2次ベビーブームに合わせて建てられたものが多く、老朽化が進んでいて、さまざまな設備に改修が必要になっています。
各地の教育委員会によりますと、防火扉の改修には多額の費用がかかることから、不備が見つかってもそのままにせざるをえないケースも多いということです。
◎ 校舎の老朽化
全国の多くの公立小中学校は、1970年代の第2次ベビーブームにあわせて建設され、校舎の老朽化が進んでいます。
文部科学省の平成28年度の調査では、床がはがれたり、外壁が崩れたりといった建物の老朽化による不備が全国の小中学校で3万件以上見つかりました。
大阪 松原市の小学校で去年1月、およそ800キロあるひさしが落下したほか、去年10月には長崎県大村市の小学校で窓枠が外れて児童の背中に当たり、背中の骨が折れる大けがをするなど、老朽化による事故も全国で相次いでいます。
◎ 専門家の意見
「火災が起きれば大きな被害が出るおそれがある。財政の問題があり、すぐにできないことは分かるが、故障は最近のものではなく、小さなものが積み重なっているはずで、ちゃんと点検して直せばコストは今ほどかからなかったはずだ。防火設備の優先順位が低かったのが、大きな問題だと思う」
◎ こまめにメンテナンスしている自治体
大阪 枚方市では、遅くとも平成16年からは、法律で義務づけられているものに加えて、防火扉の点検を行っていて、年に2回、異常がないかチェックしています。
見つけた場合は、随時改修工事を行っているということで、昨年度の点検では、市内に64ある小中学校のうち、不備があり正常に作動しないおそれがある防火扉が見つかったのは4校でした。
枚方市教育委員会事務局まなび舎整備室の久保佑樹さんは「児童の安全を確保するため点検の頻度を増やしています。防火扉は定期的に開放しないと隙間にほこりやゴミがたまり正常な動作が難しくなるので、こまめな点検が重要だと考えています」と話していました。
◎ 改修に手が回らない小学校
東大阪市にある小学校では、昨年度の検査で、校舎内に設置された29枚の防火扉のうち26枚に不備があり、正常に作動しないことが確認されました。
市の教育委員会によりますと市内の小中学校は老朽化が進んで、改修が必要な箇所が多く、防火扉まで手が回らない状況だということです。
東大阪市教育委員会施設整備室の高橋伸吾室次長は「これまで多額の費用がかかる耐震化工事や空調設備の設置などを優先して行ってきたので、防火扉の改修まで手が回らなかった。学校の防火扉の改修も順次進めたいが、まだすべての学校で計画が立っているわけではないというのが現状だ」と話していました。
◎ 防火設備定期検査の実施義務
防火扉が作動せず、多くの人が亡くなる火事はその後も相次ぎ、国は建築基準法を改正し、4年前から年に1度、防火扉の点検を行うことを義務づけました。
義務化は、
▼一定の規模があり、不特定多数の人が利用する病院やホテル、商業施設に加え、高齢者が暮らす福祉施設などが対象で、
▼都道府県や規模の大きな市といった「特定行政庁」が必要だと判断した建物も対象になります。
大阪府内では学校も点検を義務化しています。
定期点検では、扉がゆがんでいて床や天井と接触しないかや、煙などを感知する機械が適切に作動するかなど、17の項目について資格を持った業者が年に1回調査します。
不備が見つかっても改修は「努力義務」とされていて、罰則などは設けられていません。
◎ まとめ
- NHKのニュース『大阪府内 800超の小中学校 防火扉が火災時に閉まらないおそれ』について、普段から防火設備の改修工事でも頻繁に小中学校に出入しており事情も少し知っているので解説した。
- 防火設備の不良個所改修工事費用は、建物自体が歪んでいて防火戸が床や天井に当たって閉まらない‥となると建物側を加工する必要があったりするので高額になる場合があった。
- 多額の予算を急に用意することが難しいこともある為、現実的には徐々に直していく計画を作っては修正して‥という建物メンテナンスのサイクルを “今から” 回していくべきといった具合であった。
長谷見 雄二 教授
早稲田大学理工学術院