消防関係者は誰もが知っている「令8区画」って「開口部のない耐火構造の床または壁」で区画されている場合および実務でハチャメチャ出てくる概念「令9条かっこ書き」の話です。
同一敷地内に2以上の防火対象物がある場合
消防法施行令第2条にて「同一敷地内に管理について権原を有する者が同一の者である別表第一に掲げる防火対象物が二以上あるときは、それらの防火対象物は、消防法第8条〔防火管理者〕第一項の規定の適用については、一の防火対象物とみなす。」ことができます。
ただし、単に同一敷地内に2以上の防火対象物があるだけでは、別々の防火対象物なので注意。
令8区画とは
令8区画とは、防火対象物が「開口部のない耐火構造の床または壁」で区画されているときは、その区画された部分は、それぞれ別の防火対象物とみなして消防用設備等の設置基準を適用できる区画のことです。
この「開口部のない耐火構造の床または壁」には、例え「特定防火設備である防火戸」や「ドレンチャー設備」であっても設けられていては令8区画は成立しません。
令8区画の「開口部のない耐火構造の床または壁」は消防設備士の試験に頻出です!
複合用途防火対象物の同一用途に適用する規定(令9条)
複合用途防火対象物の部分で、令別表第1の(1)~(15)項の用途のいずれかに該当する用途に供されるものは、消防用設備等の設置基準について、その管理者や階に関係なく同一用途に供される部分を一の防火対象物とみなす規定が、この消防法施行令 第9条です。
ただし、以下の例外である ❝令9条かっこ書き❞ の概念に注意します。
令9条かっこ書き(令9条の例外)
令9条の例外として「全館を一体的に捉えて、その火災危険性を評価して複合用途防火対象物でも建物全体に設置されるべき消防用設備等」の基準について、令9条の( )内に、以下の通り列記されています。
複合用途防火対象物でも全体に設置義務が生じる消防用設備等
令9条かっこ書き内では、これらの消防用設備等は令9条の規定の適用対象から除くと謳われています。
この令9条の例外を ❝令9条かっこ書き❞ といい、しょっちゅう実務で出てくるルールになります。
消防法施行令 第19条〔屋外消火栓設備に関する基準〕
屋外消火栓の設置基準で「建築物相互の一階の外壁間の中心線からの水平距離が、1階にあっては3m以下、2階にあっては5m以下である部分を有するものは、一の建築物とみなす。」という建物同士が近接していたら一つの防火対象物とする規定があります。
この建物間の「距離」で防火対象物を一つにして設置基準を適用する規定は屋外消火栓だけの設置基準なので、他の消防用設備等には適用されません。
同一敷地内にある二以上の令別表第1に掲げる建築物(耐火建築物及び準耐火建築物を除く。)で、当該建築物相互の一階の外壁間の中心線からの水平距離が、1階にあっては3m以下、2階にあっては5m以下である部分を有するものは、屋外消火栓の設置基準(耐火建築物にあっては床面積9,000㎡以上、準耐火建築物にあっては床面積6,000㎡以上、その他の建築物にあっては床面積3,000㎡以上のもの)の適用については、一の建築物とみなす。
ひっかけ問題の選択肢として出題されるので、この屋外消火栓の設置基準についても頭に入れておきましょう。
特定防火対象物の地階 ≒ みなし地下街(令9条の2)
特定防火対象物の地階で、地下街の一体を成すものとして消防長または消防署長が指定したものについては以下に掲げる消防用設備等の設置基準は地下街の一部とみなして適用されます。
みなし地下街の設置基準が適用される消防用設備等
- スプリンクラー設備
- 自動火災報知設備
- ガス漏れ火災警報設備
- 非常警報器具または非常警報設備
それでは以下の消防設備士試験の過去問(※頻出)にチャレンジして、これまでの内容が頭に入っているかを確認しましょう!
【過去問】防火対象物に関する基準|令8区画・令9条かっこ書き
消防用設備等の設置および維持に関する技術上の基準の適用において、一棟の防火対象物であっても別の防火対象物とみなされる部分として消防法令上、正しいものは次のうちどれか。(甲4奈良)
1 耐火構造の建築物であって、特定防火設備である防火戸および耐火構造の床または壁で区画された部分
2 耐火構造の床または壁で区画され、開口部に特定防火設備である防火戸が設けられた部分
3 耐火構造の床または壁で区画され、かつ開口部にドレンチャー設備が設けられた部分
4 開口部のない耐火構造の床または壁で区画された部分
消防用設備等を設置しなければならない防火対象物に関する説明として消防法令上、誤っているものは次のうちどれか。(甲1大阪)
1 防火対象物が開口部のない耐火構造の床または壁で区画されたときは消防用設備等の設置について、その区画された部分をそれぞれ別の防火対象物とみなす。
2 複合用途防火対象物で同一の用途に供される部分は、消防用設備等の設置について用途の管理者または階に関係なく一の防火対象物とみなされる場合がある。
3 同一敷地内にある2以上の防火対象物で、外壁間の中心線からの水平距離が1階は3m以下、2階以上は5m以下で近接する場合、消防用設備等の設置について1棟とみなされる。
4 特定防火対象物の地階で、地下街と一体をなすものとして消防長または消防署長が指定したものは、消防用設備等の設置について地下街の一部とみなされる場合がある。
消防用設備等を設置する場合の防火対象物の基準について、消防法令上、正しいものは次のうちどれか。(甲1滋賀、乙2奈良)
1 防火対象物が開口部のない耐火構造の床または壁で区画されているときは、それぞれ別の防火対象物とみなされる。
2 同一敷地内にある2以上の防火対象物は、原則として一の防火対象物とみなされる。
3 消防用設備等を設置することが義務付けられている防火対象物は、百貨店・病院・旅館等不特定多数の者が出入りする防火対象物に限られている。
4 戸建て一般住宅についても一定の規模を超える場合、消防用設備等の設置を義務付けられる場合がある。
消防用設備等の設置単位は原則として棟ごとであるが、同一敷地内の部分でも別の防火対象物とみなされるものとして、消防法令上、正しいものは次のうちどれか。(甲4京都)
1 耐火建築物または準耐火建築物で、特定防火設備である防火戸および耐火構造の床または壁で区画された部分
2 開口部のない耐火構造の床または壁で区画された部分
3 耐火建築物で、防火戸および耐火構造の床または壁で区画された部分
4 開口部の無い耐火構造の床および特定防火設備である防火戸を有する壁で区画された部分
消防用設備等の設置および維持に関する記述として消防法令上、誤っているものは次のうちどれか。(甲2奈良)
1 市町村は、その地方の気候または風土の特殊性により、消防用設備等の技術上の基準に関する政令またはこれに基づく命令の規定のみによっては防火の目的を充分に達しがたいと認めるときは、条例で当該規定と異なる規定を設けることができる。
2 政令別表第一(16)項に掲げる防火対象物の部分で、同表(16)項以外の防火対象物の用途のいずれかに該当する用途に供されるものは、消防用設備等の設置および維持の技術上の基準の適用について同一用途に供される部分を一の防火対象物とみなす。
3 防火対象物の構造の別を問わず、当該防火対象物が開口部のない耐火構造の床または壁で区画されているときは、その区画された部分は、消防用設備等の設置および維持の技術上の基準の適用について、それぞれ別の防火対象物とみなす。
4 政令別表第一に定める防火対象物以外の防火対象物については、消防法第17条第1項に規定する消防用設備等の設置義務はない。
消防設備士「過去問テスト」は、その名の通り“過去に出た問題” のテストです。
ブログでお馴染みの管理人が過去問に関する情報収集を積み重ね、その中からピックアップして過去問ベースの模擬試験を作成したものです。
上記以外に新傾向問題の情報など提供あり次第、随時追記して解説を更新していきます。