覚えたら、解こう。毒物劇物取扱者「過去問テスト」 詳細はこちら

レッスン2-15:金属のイオン化傾向

レッスン2-15:金属のイオン化傾向
毒劇先生

青木さん、イオン化傾向は化学者必修のゴロ!

強欲な青木

貸そうかな…?はじめて聞きました。

毒劇先生

高校化学の教科書にも載る定番ゴロです!分解すると:貸(K)そう(Ca)か(Na)ま(Mg)あ(Al)あ(Zn)て(Fe)に(Ni)す(Sn)ん(—)な(Pb)ひ(H)ど(Cu)す(Hg)ぎる(Ag)借(Pt)金(Au)。この順番が電子を失いやすい(酸化されやすい・陽イオンになりやすい)順です。

強欲な青木

リチウム(Li)は入らないんすか?

毒劇先生

毒劇試験ではLiを除いた16元素のゴロが定番!高校化学の一部教材ではLi含みの『リッチに貸そうか…』もありますが、毒劇試験の参考書・過去問では『K・Ca・Na…Pt・Au』の16元素が一般的です。試験対策としてはこちらを覚えるのが安全です。

強欲な青木

これ覚えると何がわかるんすか?

毒劇先生

たくさん!①水との反応性(K/Ca/Na→常温水、Mg→熱水、Al/Zn/Fe→高温水蒸気、それ以下→反応せず)、②酸との反応性(Hより左→希塩酸/希硫酸に溶ける、右→溶けにくい)、③電池の起電力(差が大きいほど大きな電圧)、④電気分解の陰極析出順(小さい金属ほど析出しやすい)。

強欲な青木

実例だとどうなるんすか?

毒劇先生

ダニエル電池は Zn(負極)と Cu(正極)の組合せ。Zn は Cu よりイオン化傾向が大きいので Zn → Zn²⁺ + 2e⁻ と電子を放出(酸化)し、Cu²⁺ + 2e⁻ → Cu と電子を受取って銅が析出(還元)。起電力 ≒ 1.10V(Cu²⁺/Cu = +0.34V、Zn²⁺/Zn = −0.76V の差)。

金属のイオン化傾向(標準16元素ゴロ)
図解:金属のイオン化傾向(標準16元素ゴロ)
目次

💪実力試し(3問)

まずは腕試し。本番レベルの問題3問を解いてから、解説で確認しましょう。

問題1

次の金属をイオン化傾向の大きい順に並べたものとして正しいものはどれか。

  1. Ag > Cu > Zn > Na
  2. Na > Zn > Cu > Ag
  3. Cu > Zn > Ag > Na
  4. Zn > Na > Ag > Cu
解答と解説を見る

正解:2

解説:イオン化傾向の正しい順:Na > Zn > Cu > Ag。Na(アルカリ金属)が最も大、Ag(貴金属)が最も小。教科書標準ゴロ『貸そうかな、まああてにすんな、ひどすぎる借金』の順。

間違えやすいポイント:ゴロを唱えて素早く順位を判定。Na(最初の方)と Ag(後ろの方)の比較がポイント。

問題2

次の金属のうち、常温の水と激しく反応するものはどれか。

  1. Cu(銅)
  2. Na(ナトリウム)
  3. Fe(鉄)
  4. Zn(亜鉛)
解答と解説を見る

正解:2

解説:Naはイオン化傾向が非常に大きく、常温の水と激しく反応(2Na + 2H₂O → 2NaOH + H₂↑、発熱・発火の危険あり)。Mgは熱水、Al・Zn・Feは高温水蒸気でないと反応しない。Cuは水と反応しない。

間違えやすいポイント:常温水と反応:K・Ca・Na(流派により Li も含む)。Mg は熱水、Al/Zn/Fe は高温水蒸気。Hより右の金属は水と反応しない。

問題3

鉛(Pb)は希硫酸にほとんど溶けない。その理由として最も適切なものはどれか。

  1. 鉛のイオン化傾向が水素より小さいため
  2. 鉛がイオン化傾向では水素より大きいが、表面に難溶性の硫酸鉛(PbSO₄)皮膜が生成して反応が止まるため
  3. 鉛が酸と反応すると気体ではなく固体ができるため
  4. 鉛は不動態を形成するため
解答と解説を見る

正解:2

解説:鉛はイオン化傾向では水素より大(Hより左)だが、希硫酸と反応するとPbSO₄(難溶性)の皮膜が表面にでき、それ以上反応が進まない。希塩酸でも同様にPbCl₂(熱水可溶)皮膜ができ反応が遅い。『不動態』(Al/Fe/Ni/Cr)とは別現象。

間違えやすいポイント:鉛は『反応皮膜による不溶』であり、不動態ではない。Cuのような『イオン化傾向小』とも別。中間的な特殊事例。

🔰基礎教養学習

本単元は①イオン化傾向の意味 ②16元素ゴロ ③水・酸・空気との反応 ④鉛と不動態の特殊性 ⑤毒劇物・実生活との関連の5ブロック構造です。

① イオン化傾向とは

金属が水溶液中で陽イオンになろうとする傾向の強さを並べた順列。大きい金属ほど:・電子を失いやすい(酸化されやすい)・還元剤として強い・陽イオンとして安定・電池の負極になりやすい

② イオン化傾向ゴロ合わせ(教科書標準16元素)

貸そうかな、まああてにすんな、ひどすぎる借金

順位 元素 ゴロ対応 性質メモ
1 K(カリウム) 貸(か) 常温水と激しく反応
2 Ca(カルシウム) そう 常温水と反応
3 Na(ナトリウム) か(な) 常温水と激しく反応
4 Mg(マグネシウム) 熱水と反応
5 Al(アルミニウム) 高温水蒸気と反応・濃硝酸で不動態
6 Zn(亜鉛) 高温水蒸気・希酸に溶ける
7 Fe(鉄) 高温水蒸気・希酸に溶ける・不動態
8 Ni(ニッケル) 希酸に溶ける・不動態
9 Sn(スズ) 希酸にゆっくり溶ける
10 Pb(鉛) 希塩酸/希硫酸では皮膜形成で反応停止
(H)(水素) 境界線(基準)
11 Cu(銅) 希酸に溶けず・濃硝酸/熱濃硫酸には溶ける
12 Hg(水銀) 常温で液体金属・濃硝酸に溶ける
13 Ag(銀) ぎる 貴金属・濃硝酸に溶ける
14 Pt(白金) 王水のみに溶ける
15 Au(金) 王水のみに溶ける
毒劇先生

毒劇試験ではLiを除いた16元素のゴロが標準。高校化学の一部教科書には Li を加えた「リッチに貸そうか…」もありますが、試験対策としては「貸そうかな、まああてにすんな、ひどすぎる借金」を覚えるのが正解です。

③ 水・酸・空気との反応性

👉水との反応

イオン化傾向 反応条件 該当金属
最大級 常温の水と激しく反応(H₂発生) K, Ca, Na
熱水と反応 Mg
高温水蒸気と反応 Al, Zn, Fe
水と反応しない Ni, Sn, Pb, H, Cu, Hg, Ag, Pt, Au

👉酸との反応

  • Hより左の金属:希塩酸・希硫酸に溶けてH₂発生(例:Zn + 2HCl → ZnCl₂ + H₂↑)
  • Hより右の金属:希塩酸・希硫酸には溶けない
  • Cu・Hg・Ag:希酸には溶けないが、濃硝酸・熱濃硫酸には溶ける(酸化作用による)
  • Pt・Au:通常の酸にも溶けない。王水(濃塩酸:濃硝酸=3:1)のみに溶ける

👉空気(酸素)との反応

イオン化傾向 酸化のしやすさ 保管・実用
大(K〜Na) 常温で速やかに酸化 灯油中保存
中(Mg〜Zn) 加熱で酸化 燃やすと酸化物
小(Fe〜Cu) 湿気で徐々に酸化(錆) 防食処理
最小(Ag〜Au) 酸化されにくい 装飾・電子部品

④ 鉛と不動態の特殊性(試験頻出)

👉鉛 Pb の特殊性

鉛はHより左(イオン化傾向では水素より大きい)にも関わらず、希塩酸・希硫酸では反応皮膜(PbCl₂・PbSO₄)が表面にできて、それ以上反応が進まない。これは『不動態』とは別の現象。

👉不動態(ふどうたい)

Al・Fe・Ni・Crは濃硝酸に入れると、表面に薄い酸化皮膜が形成されて反応が止まる。通常は溶けるはずなのに、特定条件で「不動」になる現象。濃硝酸を鉄製タンクで運搬・保管できるのはこの不動態のおかげ!

金属 現象 理由
Pb 希塩酸・希硫酸でほぼ溶けない 反応皮膜(PbCl₂/PbSO₄)形成で反応停止
Al 濃硝酸で不動態 酸化アルミ皮膜
Fe 濃硝酸で不動態 酸化鉄皮膜(鉄製濃硝酸タンク可)
Ni 濃硝酸で不動態 酸化ニッケル皮膜
Cr 濃硝酸で不動態 酸化クロム皮膜(ステンレスの錆防止)

⑤ 毒劇物・実生活との関連

応用 内容
電池 イオン化傾向の差=起電力。差が大きいほど大電圧
電気分解 陰極ではイオン化傾向が小さい金属イオンほど析出しやすい
金属メッキ 犠牲防食(亜鉛メッキ=トタン)と隔離防食(スズメッキ=ブリキ)
毒劇物鑑別 金属イオンの識別にイオン化傾向応用
水銀(Hg) イオン化傾向小→液体金属→蒸気が毒物
鉛・水銀・カドミウム イオン化傾向中〜小の重金属系毒物劇物
王水 Pt・Auも溶かす最強酸(濃HCl:濃HNO₃=3:1)
毒劇先生

トタン(Zn/Fe):鉄より亜鉛のイオン化傾向大→亜鉛が犠牲に酸化→鉄を守る。ブリキ(Sn/Fe):鉄より錫の方が小→錫が保護膜→傷つくと鉄が先に錆びる。どちらも実生活製品で活躍する応用例!

✅理解度チェックテスト(3問)

チェック1(○✕)

次の記述は正しいか誤りか、○✕で答えてください。

「イオン化傾向が大きい金属ほど、陽イオンになりやすく電子を失いやすい(酸化されやすい)。」

答えを見る

正解:○(正しい)

解説:正しい。イオン化傾向=陽イオンになろうとする傾向の強さ。大きい金属ほど還元剤として強く、電池の負極になりやすい。

チェック2(穴埋め)

次の文の【 】に入る最も適切な語句を選んでください。

教科書標準のゴロ『貸そうかな、まああてにすんな、ひどすぎる借金』の『貸そうか』は【   】を表す。

  1. カリウム K のみ
  2. K・Ca・Na
  3. Ca・Na・Mg
  4. リチウム Li
答えを見る

正解:2

解説:『貸(K)そう(Ca)か(Na)』=K・Ca・Na。続く『な(Mg)ま(Al)あ(Zn)あ(Fe)て(—)にすんな(Ni・Sn・Pb)、ひ(H)ど(Cu)す(Hg)ぎる(Ag)借金(Pt・Au)』の順。

チェック3(4択)

次のうち『希硫酸に溶ける金属』として最も適切なものはどれか。

  1. Cu(銅)
  2. Ag(銀)
  3. Au(金)
  4. Zn(亜鉛)
答えを見る

正解:4

ポイント:ZnはHより左で希硫酸に溶けてH₂発生(Zn + H₂SO₄ → ZnSO₄ + H₂)。Cu・Ag・Auは希酸に溶けない(Cu・Agは濃硝酸には溶ける、Auは王水のみ)。

🪏深掘り解説

テーマ1:王水(おうすい)の科学

濃塩酸:濃硝酸 = 3:1の混合液。単独の酸では溶けないPt・Auも溶かせる唯一の試薬。機序:濃硝酸の酸化力で金を一旦Au³⁺に酸化→塩化物イオンと結合してAuCl₄⁻錯イオン形成→溶解。「王の酸」の名は、最も貴重な金(王の金属)も溶かすことから。

テーマ2:標準電極電位とイオン化傾向

金属 標準電極電位 E°(V) イオン化傾向
K −2.93 最大
Ca −2.87
Na −2.71
Mg −2.37
Al −1.66
Zn −0.76
Fe −0.44
Ni −0.25 やや小
Sn −0.14 やや小
Pb −0.13 やや小
H 0.00 基準
Cu +0.34
Ag +0.80
Pt +1.20 最小
Au +1.50 最小

標準電極電位がマイナスほどイオン化傾向が大きい。プラスほど小さい。

テーマ3:犠牲防食の科学

防食法 仕組み 実例
犠牲防食 イオン化傾向の大きい金属でコート→代わりに酸化 トタン(Zn/Fe)・船底の亜鉛板
隔離防食 イオン化傾向の小さい金属でコート→水分・酸素遮断 ブリキ(Sn/Fe)・クロムメッキ
陰極防食 他の金属と電気的に接続→陰極化で酸化防止 地下タンク防食
塗装 塗料で水分・酸素を遮断 自動車ボディ

🥊過去問演習(全10問)

本番形式の10問に挑戦!基礎・深掘りで学んだ内容を総動員して解きましょう。

Q1. 金属のイオン化傾向の並びとして一般に正しい先頭部分はどれか。

Q2. イオン化傾向が大きい金属の性質として正しいものはどれか。

Q3. 水と常温で反応して水素を発生する金属はどれか。

Q4. 希塩酸と反応して水素を発生しない金属はどれか。

Q5. 濃硝酸を加えても不動態を形成する金属はどれか。

Q6. 金と白金について正しい記述はどれか。

Q7. イオン化傾向の序列を覚える語呂として一般的なものはどれか。

Q8. 鉄がさびやすいのはなぜか。

Q9. めっきの原理として正しいものはどれか。

Q10. 青銅(Cu-Sn)と鉄を比較した場合の腐食挙動として正しいものはどれか。

あなたのスコアは

📝まとめと次の学習へのつなぎ

今回の学習ポイント

  • 教科書標準ゴロ:貸そうかな、まああてにすんな、ひどすぎる借金
  • 順序:K > Ca > Na > Mg > Al > Zn > Fe > Ni > Sn > Pb > (H) > Cu > Hg > Ag > Pt > Au
  • 常温水と反応:K・Ca・Na(必要に応じLiも)
  • 希酸に溶ける:Hより左の金属(H₂発生)
  • 濃硝酸・熱濃硫酸にも溶ける:Cu・Hg・Ag
  • 王水のみに溶ける:Pt・Au
  • Pb:Hより左だが、希塩酸/希硫酸ではPbCl₂/PbSO₄皮膜で反応停止
  • 不動態:Al・Fe・Ni・Crが濃硝酸で形成(鉄製タンクで濃硝酸保管可)
毒劇先生

教科書標準ゴロを覚えれば、金属の反応性予測は完璧!特にPb の皮膜現象と Al/Fe の不動態は試験で頻繁に問われます。

強欲な青木

貸そうかな、まああてにすんな、ひどすぎる借金!覚えました!

次回予告:レッスン2-16「電池」

次回は電池。ボルタ電池・ダニエル電池・鉛蓄電池などの仕組み。イオン化傾向を活用して起電力を予測し、正極・負極・電解液の関係を学びます。

📍 他のレッスンへ

章全体の学習進度はサイドバーからも確認できます。前後のレッスンで関連事項を横断的に復習しましょう。

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この記事を書いた人

高専から大学院まで9年間にわたり化学を専攻。
消防整備士として10年の実務経験を積み、独立・起業。

消防設備士全類、危険物取扱者全類をはじめ、第二種電気工事士、AI・DD総合種、第三種電気主任技術者など、多数の国家資格を保有。

神戸高等技術専門学院にて危険物取扱者 乙種第4類およびDO第3種の講師を担当。
また、月刊誌「電気と工事(オーム社)」にてコラムを連載中。

実務・教育・執筆の三軸から、専門性と実践力を兼ね備えた情報発信を行っている。

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