消防設備業界の現状および課題と今後の展望
◎ なぜ民間市場に消防設備業界があるのか
『そもそも、消防用設備等については消防法第17条にて設置義務が定められているのだから所轄消防署が施工・メンテナンスをすればいいのでは‥?』という疑問を抱いたことはないですか?
世間では続々と “民営化” が進んでいると見受けられますが、民営化する理由として「公共部門がもっている非効率性を、競争原理によって是正する。」という狙いがあります。
また、消防用設備等は “オーナーの建物” に設置される為、血税を財源とするとオーナー以外の方は不公平感を抱くでしょう。
また、新宿歌舞伎町ビル火災を契機に消防法第8条の2の2にて規定された “防火対象物点検” を民間企業の有資格者が行うこととなった背景には、所轄消防署の予防担当者では雑居ビル等が多すぎて手に負えないという事情もありました。
仮に、消防用設備等の施工・メンテナンスや防火対象物点検を、各市町村の財源を使って遂行しようとすれば莫大な “手間” と “お金” がかかるのは明らかです。
よって、消防設備業界が民間市場にある理由に、競争原理を用いて適切な「節約」をする為という背景あることが挙げられます。
余談ですが、消防署を民営化してしまうと「お金持ちの家にしか消火活動に行かない」とか「儲かる消火活動を増やすために予防に力を入れない」などの問題が生じるだろうと言われたりします(※そんな消防士さんはいません)。
◎「オーナー」と「ショーボー」の三角関係
オーナー(管理権原者)様と、消防関係者(消防士さん及び消防設備士)は、以下の通り「全くドキドキワクワクしない三角関係」を形成しています。
よく一括りにされてオーナー様に面倒クサがられている「ショーボー」ってのは、次のような仕組みで成り立ってます。🧩
- ☑ 消防士さんは各種業務が委託されている消防設備士より、点検結果等の報告を受ける
これらは、全て「国民」の生命等を守る為に行われています。
ところが今、この「全くドキドキワクワクしない三角関係」において、オーナー(管理権原者)様が法令順守する為に支払う費用が “認識の齟齬(そご)” により釣り合っていない現状があります。
要は、消防法を遵守する為の費用について理解が得られていないということなのですが、その理由に以下の二点が挙げられます。🎩
- ☑ 何を実施すればいいか知らない
- ☑ 知った上で消防をナメている
上述した状況が「中身の伴わない点検を破格で実施し、短期的な利益を得る」業者を存在させることに繋がってしまっています。
◎悲惨!「安すぎて出来ない」問題と解決策
3年前の民泊ブーム時に、管理人が見たのは自社で点検していない建物の悲惨な状況でした。
(5)項イ 民泊は特定防火対象物(不特定多数の人が出入りする火災リスクの比較的高い建物)である為、(5)項ロ 共同住宅などから用途変更する際は既存の不良個所を是正する必要があります。
それに際して入手した前回の点検報告書を見ながらパッと確認するだけで、明らかに改修が必要な箇所についても “◯” で報告されている‥様な悲惨な状況の数々を目の当たりにしました。
特に入札案件については「だいたい同じ位の額なら、安い業者を選ぶ。」というルールに基づいている為、ごまかしたモン勝ちな論理でサービスを行う業者が多く利益を得る状況は残念ながら暫く変わらないでしょう(※しっかり点検されている業者さんもいます)
これらの「不適切な節約」がされている状況を改善する為の解決策は、ズバリ「オーナー様の理解を得る工夫をする」ことだと思っています。
◎ 消防設備士には「市場を作る裁量」がある!
消防設備士の資格制度ができたのが1966年と浅いこともあり、これまで消防法第17条に基づく消防用設備等の施工・メンテナンスの “市場作り” の歴史も他業界と比べると未熟な部分があることは否めないでしょう。
お陰様で現在バリバリ活躍中の世代は、これまで着手されなかった広報やマーケティング等に充てる時間を捻出できております。
現在、弊社ホームページのGoogleサーチコンソール(通称:さちこ)を見ると消防設備士のキーワードで月間10万PV以上の発信をしており、少なからず業界に貢献していると言えそうです。
少し話がそれていましたが、今を生きる消防設備士にも「未来を決める “裁量” の一部は与えられている」わけですから、消防法第17条によって強制的に創出されている需要に甘んじた「おんぶにだっこ」みたいな状況で甘んじることなく、自ら良いサービスをする為の工夫(例えば現場由来の一次情報発信など)をすべきなのです。
◎ 日々の積み重ねのみが盤石な未来を作る
今、消防設備業界にて我々が満足に仕事ができているのは、先人たちが知恵を出し合い、身体を動かして市場の土台を築いて下さった結果に他ならず大変有難い状況なのです。
次は、我々が新たに積み上げてより良い業界にし、次世代にバトンを渡す為に脳と身体に汗する出番。
今後、長きに渡って消防設備士がマトモな商売として有り続ける為には、適切なサービスを納められる “市場作り” への更なる注力が欠かせないでしょう。
そうして消防法第1条で謳われた「国民の生命・身体及び財産を火災から保護する」という目的を、血の通ったものとして循環させ続けるのです。
◎ まとめ