消防関係法令の共通科目は、消防設備士1~7類すべての試験で登場します。
科目免除も可能ですが、筆記試験はトータルで6割以上を取ればクリアというルールである為、一度マスターすれば貴重な得点源に変身します。
これを機に頭に叩き込むことをオススメします(筆者も全て科目免除せず、共通科目を得点源にしました!)。
また、消防関係法令の共通科目の内容は消防設備士として実務に従事する上でも必須の知識となります。
消防関係法令(共通)
◎ 消防設備士とは‥
皆様が勉強される消防設備士は、消防法 第17条で謳われている消防用設備等の工事または整備の業務に従事するために必要な国家資格です。
◎ 覚える!消防関係キホン用語集
単語の意味を覚えていなければ、いちいち問題毎につまづいてしまいますので要暗記です!
防火対象物と消防対象物
- 防火対象物‥防火対象物とは、山林又は舟車、船きよ若しくはふ頭に繋留された船舶、建築物その他の工作物若しくはこれらに属する物をいう。
- 消防対象物‥消防対象物とは、山林又は舟車、船きよ若しくはふ頭に繋留された船舶、建築物その他の工作物又は物件をいう。
建物の用途によって防火対象物が分類されている消防法施行令 別表第一を暗記しておくと超便利です。
【令別表第1】防火対象物の用途とは?プロなら暗記しよう【判定例一覧】
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特定防火対象物
- 特定防火対象物‥不特定多数の者が出入りする建物
- 非特定防火対象物‥特定防火対象物以外の建物
ちなみに、こんな過去問が出題されています。
消防法令上で特定防火対象物に該当するものは、次のうちどれ?
(1)飲食店
(2)事務所
(3)図書館
(4)寄宿舎
複合用途防火対象物
- 複合用途防火対象物‥防火対象物で政令で定める二以上の用途に供されるものをいう。
この複合用途防火対象物のうち、令別表第1条では特定防火対象物の用途を含むものを(16)項イとし、非特定防火対象物の用途のみのものを(16)項ロとしています。
関係者
- 関係者‥防火対象物又は消防対象物の所有者(オーナー)、管理者(管理会社)又は占有者(テナント)をいう。
- 関係のある場所‥防火対象物又は消防対象物のある場所をいう。
ちなみに、こんな過去問が出題されています。
消防法で規定されている「関係者」に該当しない者は、次のうちどれ?
(1)防火対象物の所有者
(2)防火対象物の防火管理者
(3)防火対象物の管理者
(4)防火対象物の占有者
無窓階
無窓階に該当すると、消防用設備等の設置基準が厳しくなる可能性があります。
- 無窓階‥建築物の地上階のうち、避難上または消火活動上有効な開口部を有しない階をいう。11階以上の階にあっては直径50cm以上の円が内接することができる開口部の面積の合計が当該階の床面積の30分の1を超える階以外の階、10階以下の階にあっては直径1m以上の円が内接することができる開口部又はその幅及び高さがそれぞれ75cm以上及び1.2m以上の開口部を二以上有する普通階以外の階とする。
参考消防法施行令 第10条〔消火器具に関する基準〕、消防法施行規則 第5条の2〔避難上又は消火活動上有効な開口部を有しない階〕
10階以下と11階以上で無窓階かどうかの算定基準に違いがありますので、あわせて覚えておきましょう。
10階以下
11階以上
ちなみに、こんな過去問が出題されています。
消防法で規定されている「無窓階」に該当する説明として、正しいものは次のうちどれ?
(1)建築物の道路に面した外壁に窓が設けられていない階
(2)避難上有効な開口部を有しない階
(3)消火活動上有効な開口部を有しない階
(4)避難上または消火活動上有効な開口部を有しない階
建築基準法関係
- 地階‥床が地盤面下にある階で、床面から地盤面までの高さがその階の天井の高さの三分の一以上のものをいう。
- 延べ面積‥建築物の各階の床面積の合計をいう。
- 床面積‥建築物の各階又はその一部で壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積をいう。
参考建築基準法施行令 第1条〔用語の定義〕、建築基準法施行令 第2条〔面積、高さ等の算定方法〕
◎ 措置命令など
消防機関については、消防組織法に以下の通り規定されています。
消防機関 | 消防機関の長 | 構成員 |
消防本部 | 消防長 | 消防吏員・職員 |
消防署 | 消防署長 | 消防吏員・職員 |
消防団 | 消防団長 | 消防団員 |
屋外における措置命令
消防長と消防署長およびその他の消防吏員は、屋外において火災の予防に危険であると認める行為者又は火災の予防に危険であると認める物件若しくは消防の活動に支障になると認める物件の所有者、管理者又は占有者で権限を有する者に対して、必要な措置をとるべきことを命ずることができます。
参考消防法 第3条〔屋外における火災の予防又は消防活動の障害除去のための措置命令等〕
ちなみに、こんな過去問が出題されています。
屋外において火災の予防に危険であると認める行為者又は火災の予防に危険であると認める物件若しくは消防の活動に支障になると認める物件の所有者、管理者又は占有者で権限を有する者に対して、必要な措置をとるべきことを命ずることができる権限のある者として誤っているものは次のうちどれ?
(1)消防長
(2)消防団長
(3)消防署長
(4)消防吏員
資料の提出命令・報告および立入検査
消防長又は消防署長は、火災予防のために必要があるときは、関係者に対して資料の提出を命じ、もしくは報告を求め、又は当該消防職員にあらゆる仕事場・工場もしくは公衆の出入する場所その他の関係のある場所に立ち入って、消防対象物の位置・構造・設備及び管理の状況を検査させ、もしくは関係のある者に質問させることができます。
参考消防法 第4条〔資料提出命令、報告の徴収及び消防職員の立入検査〕
この辺りの知識は試験に出る可能性は比較的低いですが、実務に携わるのであれば頭の片隅にあると便利な話です。
◎ 建築確認と消防同意
④建築確認とは、建築物の新築・増築・改築・移転・修繕・模様替・用途の変更もしくは使用について、許可・認可もしくは確認をする権限を有する行政庁もしくはその委任を受けた者または指定確認検査機関(建築主事など)に対して、その建築物が基準に適合しているかを確認してもらうことをいいます。
この建築確認をしてもらう際に、まず建築主が建築主事などに①確認申請を行います。
ここで建築主事などが審査を終えて適法であると認めれば、次に建築主事などから建築物の施工地の所轄消防署の消防長または消防署長へ消防用設備等が消防法に適合しているか否かの確認をする依頼を行います。これを②同意を求めるといいます。
消防長または消防署長は同意を求められた日から建物の用途や規模などによって3日以内もしくは7日以内に審査をしなければなりません。その審査を経て、消防長または消防署長が消防法上も適法であると認めれば、建築主事などに③消防同意を与えます。
参考レオパ◯スの消防法違反について解説、消防法 第7条〔建築許可等についての消防長又は消防署長の同意〕
ちなみに、こんな過去問が出題されています。
消防同意に関する記述のうち、誤っているものは次のうちどれ?
(1)建築主は建築主事などへ確認申請を行う。
(2)建築主事は消防長等へ同意を求める。
(3)消防長等は建築主に消防同意を与える。
(4)消防同意がなければ建築確認はできない。
◎ 消防用設備等とは‥?
消防設備と言ってもいいところを、わざわざ “消防用設備等” と表現しているのは「消防法 第17条〔消防用設備等の設置・維持と特殊消防用設備等の適用除外〕にて “消防用設備等” という単語が定義されているから」なる理由が挙げられます。
学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店、旅館、飲食店、地下街、複合用途防火対象物その他の防火対象物で政令で定めるものの関係者は、政令で定める消防の用に供する設備、消防用水及び消火活動上必要な施設(以下「消防用設備等」という。)について消火、避難その他の消防の活動のために必要とされる性能を有するように、政令で定める技術上の基準に従って、設置し、及び維持しなければならない。
よって、消防法上では消防用設備等について、大きく以下の3つに分けられています。
「消防用設備等」の分類
- 消防の用に供する設備
- 消防用水
- 消火活動上必要な施設
消防用設備等に該当する設備の具体的な分類は、下表の通りです。
表 「消防用設備等」の分類
消防の用に供する設備 | 消火設備 | 屋内消火栓設備 |
屋外消火栓設備 | ||
スプリンクラー設備 | ||
水噴霧消火設備 | ||
動力消防ポンプ設備(※1) | ||
泡消火設備 | ||
二酸化炭素消火設備 | ||
ハロゲン化物消火設備 | ||
粉末消火設備 | ||
消火器 | ||
簡易消火器具(※1) | ||
警報設備 | 自動火災報知設備 | |
消防機関へ通報する火災報知設備 | ||
非常警報器具(拡声器・手動式サイレン等)(※1) | ||
非常警報設備(非常ベル・非常放送設備など)(※1) | ||
ガス漏れ火災警報設備 | ||
漏電火災警報器 | ||
避難設備 | 避難はしご・救助袋・緩降機など | |
誘導灯・誘導標識(※1) | ||
消火活動上必要な施設(※2) | 排煙設備(※1) | |
連結散水設備(※1) | ||
連結送水管(※1) | ||
非常コンセント(※1) | ||
無線通信補助設備(※1) | ||
消防用水 | 防火水槽または貯水池その他の用水(※1) |
ちなみに、こんな過去問が出題されています。
消防用設備等に関する記述のうち、誤っているものは次のうちどれ?
(1)消火設備には、屋内消火栓設備・スプリンクラー設備・連結送水管などが該当する。
(2)警報設備には、自動火災報知設備・非常警報設備・漏電火災警報器などが該当する。
(3)避難設備には、避難はしご・救助袋・緩降機・誘導灯および誘導標識などが該当する。
(4)消火活動上必要な施設には、排煙設備・非常コンセント設備・無線通信補助設備などが該当する。
次のうち警報設備に該当しないものはどれ?
(1)非常ベル
(2)非常放送設備
(3)携帯用拡声器
(4)非常コンセント設備
◎ 消防用設備等の設置基準
消防用設備等の設置基準は原則 “棟単位” で適用されますが、以下の様な例外もあります。
令8区画
防火対象物が開口部のない耐火構造の床または壁で区画されているときは、その区画された部分における消防用設備等の設置基準については、それぞれ別の防火対象物とみなされて適用されます。
令8区画の例
令8区画された部分ごとに、それぞれ別の防火対象物とみされて消防用設備等の設置基準が適用されます。
- A‥(5)項ロの用途で延べ面積3,000㎡の防火対象物として消防用設備等の設置基準が適用されます。
- B:(4)項の用途で延べ面積1,000㎡の防火対象物として消防用設備等の設置基準が適用されます。
全体としては(16)項イ 複合用途防火対象物の用途で延べ面積4,000㎡の防火対象物となります。
ちなみに、こんな過去問が出題されています。
同じ建物でも別々の防火対象物として消防用設備等の設置基準が適用されるものとして、正しいものは次のうちどれ?
(1)開口部に煙感知器と連動して自動閉鎖する防火シャッターが設置してある耐火構造の壁で区画したもの。
(2)開口部に常時閉鎖の特定防火設備である防火扉が設置してある耐火構造の壁で区画したもの。
(3)開口部のない耐火構造の壁で区画したもの。
(4)開口部のない防火構造の壁で区画したもの。
複合防火対象物の設置基準
雑居ビル等の複数の用途からなる複合用途防火対象物については、それぞれの用途毎に消防用設備等の設置基準が適用されます。
ただし、以下の設備は用途ごとではなく建物全体に設置義務が生じます。
- スプリンクラー設備
- 自動火災報知設備
- ガス漏れ火災警報設備
- 非常警報設備
- 避難器具
- 誘導灯
ちなみに、こんな過去問が出題されています。
複合用途防火対象物全体に設置基準が適用される消防用設備等として、正しいものは次のうちどれ?
(1)屋内消火栓設備
(2)スプリンクラー設備
(3)粉末消火設備
(4)動力消防ポンプ設備
◎ 既存防火対象物への消防法令適用除外
消防法に改正があった場合、既存の防火対象物については原則 “遡及(そきゅう)” しないことが規定されています。
遡及(そきゅう)‥法律をその施行以前になされた行為や生じた事実にさかのぼって適用すること。
ただし例外があり、以下の通り消防法が遡及される場合もあります。
法令遡及される消防用設備等
次に掲げる消防用設備等については、常に改正後の技術上の基準が適用(法令遡及)されます。
- 消火器・簡易消火器具
- 自動火災報知設備(特定防火対象物および(17)項 重要文化財等のみ)
- ガス漏れ火災警報設備(特定防火対象物および温泉の採取のための設備のみ)
- 漏電火災警報設備
- 非常警報設備・非常警報器具
- 誘導灯および誘導標識
- 避難器具
ちなみに、こんな過去問が出題されています。
事業所の用途を変更した際に、技術上の基準に適合させる設備として誤っているものはどれか。(変更後の用途は特定防火対象物でないとする。)
(1)消火器
(2)漏電火災警報設備
(3)屋内消火栓設備
(4)誘導灯
その他の法令遡及する条件など
次に掲げる場合も、現行法令が遡及されます。
- 法改正前の規定に違反している場合
- 法改正後に1,000㎡以上または延べ面積の1/2以上の増改築がされた場合
- 主要構造部である壁の過半の修繕又は模様替えがされた場合
- 特定防火対象物である場合(※既存建物の用途変更で特定防火対象物になった場合を含む)
ちなみに、こんな過去問が出題されています。
消防用設備等の技術上の基準が改正された場合に、既存の防火対象物でも改正後の基準に適合させなければならない条件として、正しいものは次のうちどれ?
(1)法改正後に延べ面積の1/2以上の増改築がされた
(2)法改正後に1,000㎡以下の増改築がされた
(3)主要構造部である床の過半の修繕がされた
(4)主要構造部である屋根の過半の模様替えがされた
◎ 消防用設備等の設置の届出と検査
消防用設備等又は特殊消防用設備等(政令で定めるものを除く。)を設置したときは、総務省令で定めるところにより、防火対象物の関係者が消防長又は消防署長に届け出て、検査を受けなければなりません。
参考消防法 第17条の3の2〔消防用設備等又は特殊消防用設備等の検査〕
※再検査という文字も見たくない程、消防設備士は再検査に怯えています。
消防検査を受けなければならない防火対象物
以下の防火対象物について、消防検査の実施義務が生じます。
参考消防法施行令 第35条〔消防機関の検査を受けなければならない防火対象物等〕
特定一階段等防火対象物
別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項又は(九)項イに掲げる防火対象物の用途に供される部分が避難階以外の階に存する防火対象物で、当該避難階以外の階から避難階又は地上に直通する階段が二(当該階段が屋外に設けられ、又は総務省令で定める避難上有効な構造を有する場合にあつては、一)以上設けられていないもの
- 延べ面積に関係無く消防検査が必要な用途は(2)項二 カラオケボックスや(6)項の様に火災リスクが高いもの。
- それ以外の特定防火対象物は延べ面積300㎡以上のみ消防検査が必要。
- 非特定防火対象物は延べ面積300㎡以上で、かつ消防長または消防署長がい指定した場合のみ消防検査が必要。
ちなみに、こんな過去問が出題されています。
消防検査を受ける必要のある建物として誤っているものは次のうちどれ?
(1)延べ面積150㎡の(6)項イ 診療所
(2)延べ面積200㎡の(2)項二 カラオケボックス
(3)延べ面積250㎡の(3)項ロ 飲食店
(4)延べ面積300㎡の(4)項 店舗
設置届(消防用設備等設置届出書)
消防検査を受けようとする防火対象物の関係者は、当該防火対象物における消防用設備等又は特殊消防用設備等の設置に係る工事が完了した場合において、その旨を工事が完了した日から4日以内に消防長又は消防署長へ消防用設備等試験結果報告書を添付して届け出なければなりません。
参考消防法施行規則 第31条の3〔消防用設備等又は特殊消防用設備等の届出及び検査〕
ちなみに、こんな過去問が出題されています。
消防検査を受ける前に提出する消防用設備等設置届出書について正しいものは次のうちどれ?
(1)消防用設備等設置届出書は、甲種消防設備士が提出する。
(2)消防用設備等設置届出書は、工事が完了した日から10日以内に提出する。
(3)消防用設備等設置届出書は、消防長または消防署長宛てに提出する。
(4)消防用設備等設置届出書には、消防用設備等点検結果報告書を添付する。
◎ 消防用設備点検と報告
消防用設備等の設置義務が生じている防火対象物の関係者は、消防用設備等または特殊消防用設備等を提起に点検し、その結果を消防長または消防署長に報告しなければなりません。
参考第17条の3の3〔消防用設備等又は特殊消防用設備等の点検及び報告〕
点検「実施」の周期
消防点検の実施周期
消防点検は2つに分かれており、以下の周期で実施することが消防法上で規定されています。
- 機器点検‥半年に1回実施
- 総合点検‥1年に1回実施
---
総合点検は機器点検+αみたいな扱いである為、実質「消防点検は半年に1回する」といったルールになっています。
点検の実施義務に関する周期が上述した通りですが、その点検結果を所轄消防署へ報告する周期は異なります。
点検結果「報告」の周期
点検結果の報告周期
点検結果の報告時期は、建物用途が特定防火対象物(※不特定多数の人が出入りする建物)かどうかで異なります。
- 特定防火対象物‥1年に1回報告
- 非特定防火対象物‥3年に1回報告
---
よって、消防点検を実施したからといって毎回所轄消防署へ報告書を提出しなくてもいいルールになっています。
ちなみに、こんな過去問が出題されています。
消防用設備等の報告期間について、次のうち正しいものは次のうちどれ?
(1)(5)項イ ホテル・旅館など‥‥半年に1回
(2)(5)項ロ 共同住宅など‥1年に1回
(3)(9)項イ 蒸気浴場など‥2年に1回
(4)(9)項ロ その他の公衆浴場‥3年に1回
消防設備士または消防設備点検資格者に点検させなければならない防火対象物
有資格者が消防用設備点検をしなければならない防火対象物は以下の通りです。
- 延べ面積1,000㎡以上の特定防火対象物
- 延べ面積1,000㎡以上の非特定防火対象物で、消防長または消防署長が指定するもの
- 特定一階段等防火対象物
上記以外の防火対象物については、関係者が自ら消防用設備点検を行うことも可能となっています。
ちなみに、こんな過去問が出題されています。
有資格者に消防用設備点検をさせなければならない建物として、次のうち正しいものは次のうちどれ?
(1)延べ面積1,000㎡以下の(3)項ロ 飲食店で消防長または消防署長が指定したもの
(2)延べ面積1,000㎡以上の(5)項イ ホテル・旅館
(3)延べ面積1,000㎡以下の(7)項 学校で消防長または消防署長が指定したもの
(4)延べ面積1,000㎡以上の(12)項イ 工場
消防用設備等に係る設置維持命令
消防長又は消防署長は、防火対象物における消防用設備等が設備等技術基準に従って設置または維持されていないと認められるときは、当該防火対象物の関係者で権原を有するものに対し、当該設備等技術基準に従ってこれを設置すべきこと、又はその維持のため必要な措置をなすべきことを命ずることができます。
参考消防法 第17条の4〔消防用設備等又は特殊消防用設備等の設置維持命令〕
ちなみに、こんな過去問が出題されています。
防火対象物の消防用設備等について、技術基準に従って設置または維持されていていない場合の設置維持命令を命じるものと命ぜられる者の組み合わせとして、次のうち正しいものは次のうちどれ?
命じる者 | 命ぜられる者 | |
(1) | 都道府県知事または市町村長 | 消防用設備等の施工・点検を行っている消防設備士 |
(2) | 都道府県知事または市町村長 | 防火対象物の関係者で権限を有する者 |
(3) | 消防長または消防署長 | 消防用設備等の施工・点検を行っている消防設備士 |
(4) | 消防長または消防署長 | 防火対象物の関係者で権限を有する者 |
◎ 消防設備士の免状
消防用設備等は下記の通り分類されており、それぞれ対応する消防設備士の免状があります。
消防設備士の免状は、以下の様に設備毎に分類されています。
- 特類‥特殊消防用設備等
- 1類‥スプリンクラー設備、屋内・屋外消火栓設備など
- 2類‥泡消火設備
- 3類‥不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備
- 4類‥自動火災報知設備、誘導灯など
- 5類‥救助袋、緩降機等の避難器具
- 6類‥消火器具
- 7類‥漏電火災警報設備
甲種と乙種
また、免状には工事と整備ができる甲種と、整備のみ従事可能な乙種があります。
消防設備士の資格に合格すると、都道府県知事から免状が交付されます。(消防法 第17条の7〔消防設備士の免状の交付資格〕)
消防設備士の免状
免状の記載事項
消防設備士の免状には、以下の項目が記載されています。(消防法施行令 第36条の4〔免状の記載事項〕、消防法施行規則 第33条の5〔免状の様式及び記載事項〕)
- 免状の交付年月日及び交付番号
- 氏名及び生年月日
- 本籍地の属する都道府県
- 免状の種類
- 過去10年以内に撮影した写真
都道府県知事は、以下の条件に該当する者については消防設備士の免状を交付しないことができます。(消防法 第17条の7〔消防設備士の免状の交付資格〕)
消防設備士の免状を交付しない条件
- 消防設備士免状の返納を命ぜられ、その日から起算して一年を経過しない者。
- この法律又はこの法律に基く命令の規定に違反して罰金以上の刑に処せられた者で、その執行を終り、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して二年を経過しない者。
免状の書き換え
免状の交付を受けている者は、免状の記載事項に変更を生じたときは、遅滞なく、当該免状に総務省令で定める書類を添えて、当該免状を交付した都道府県知事又は居住地若しくは勤務地を管轄する都道府県知事にその書換えを申請しなければならない。(消防法施行令 第36条の5〔免状の書換え〕)
もし免状を無くした場合‥
免状の交付を受けている者は、免状を亡失し、滅失し、汚損し、又は破損した場合には、総務省令で定めるところにより、当該免状の交付又は書換えをした都道府県知事にその再交付を申請することができる。(消防法 第36条の6〔免状の再交付〕)
免状を亡失してその再交付を受けた者は、亡失した免状を発見した場合には、これを10日以内に免状の再交付をした都道府県知事に提出しなければならない。
◎ 消防設備士の独占業務
免状が無ければ従事できない独占業務が消防設備士には規定されていますが、消防設備士でなくても工事・整備できる部分もあります。
第1類 | 消防用設備等の種類 | 消防設備士でなくても工事または整備できる部分 |
屋内消火栓設備 | 電源、水源及び配管の部分 | |
スプリンクラー設備 | ||
水噴霧消火設備 | ||
屋外消火栓設備 | ||
共同住宅用スプリンクラー設備 | ||
パッケージ型消火設備 | 電源の部分 | |
パッケージ型自動消火設備 | ||
第2類 | 泡消火設備 | |
特定駐車場用泡消火設備 | ||
第3類 | 不活性ガス消火設備 | |
ハロゲン化物消火設備 | ||
粉末消火設備 | ||
第4類 | 自動火災報知設備 | |
ガス漏れ火災警報設備 | ||
消防機関へ通報する火災報知設備 | ||
共同住宅用自動火災報知設備 | ||
住戸用自動火災報知設備 | ||
特定小規模施設用自動火災報知設備 | ||
複合型居住施設用自動火災報知設備 | ||
第5類 | 金属製避難はしご | 固定式のものに限る |
救助袋 | なし | |
緩降機 | ||
第6類 | 消火器 | |
第7類 | 漏電火災警報器 |
特定小規模施設用自動火災報知設備の設置に資格は要る?
特定小規模施設用自動火災報知設備について、現在は一次電池を電源とするものが主流になっています。
その為、電源の工事および整備はなく、有資格者でなくても取扱うことが可能となっています。
着工届
着工届(正式名称:工事整備対象設備等着工届出書)の作成・提出は、甲種消防設備士しか従事できない独占業務の一つです。
工事に際して所轄消防署へ提出する書類である為、整備のみを行う乙種消防設備士には着工届を作成することができません。
着工届は、工事に着手する日の10日前までに、消防長または消防署長宛に提出しなければなりません(消防法 第17条の14〔工事着手の届出〕)。
着工届と設置届
着工届を提出後に工事を完了した後、設置届(正式名称:消防用設備等(特殊消防用設備等)設置届出書)という書類を4日以内に消防長または消防署長宛に提出します。
設置届の提出者は、防火対象物の関係者となっていることに注意が必要です(※着工届の提出者は甲種消防設備士)。
ちなみに、こんな過去問が出題されています。
着工届について、次のうち消防法令上で正しいものは次のうちどれ?
(1)着工届は、防火対象物の関係者が工事着手の10日前までに消防長または消防署長に届け出る。
(2)着工届は、防火対象物の関係者が工事着手の10日前までに都道府県知事に届け出る。
(3)着工届は、甲種消防設備士が工事着手の10日前までに消防長または消防署長に届け出る。
(4)着工届は、甲種消防設備士が工事着手の10日前までに都道府県知事に届け出る。
消防設備士に関する罰則
甲種消防設備士が工事着工の届出を怠った場合、拘留または30万円以下の罰金が科せられます。(消防法 第44条〔罰則〕)
消防設備士の免状や義務について、誤っているものは次のうちどれか。
(1)消防設備士免状を紛失し、再交付をした後に免状が出てきた場合は、10日以内に返納する。
(2)消防法令違反により免状返納を命ぜられ、その日から1年未満に試験を受け合格しても免状は交付されない。
(3)甲種消防設備士が工事着工の届出を怠った場合、拘留又は30万円以下の罰金が科せられる。
(4)免状の記載事項に変更が生じた場合、免状の交付を受けた都道府県知事でなければ書換えはできない。
◎ 消防設備士の義務講習
消防設備士の免状取得者は、各類に応じた義務講習を受けなければなりません(消防法 第17条の10〔消防設備士講習〕)。
余談ですが、義務講習は以下の通り4つの区分があります。
- 特殊消防用設備等‥特類
- 消火設備‥1・2・3類
- 警報設備‥4・7類
- 避難設備・消火器‥5・6類
科目免除等の制度もあるので、できるだけ近い時期に受けた方がお得です。
義務講習の受講時期
消防設備士の講習受講時期は、初回と初回以降で異なります(消防法施行規則 第33条の17〔講習〕)。
講習を受ける周期
ただし、上述した区分で同じ講習となるものについては、同じ講習区分で置けていれば新たに免状を取得しても以前に受けた講習日から5年以内の周期で受ければ良いこととなっています。
◎ 防火管理者
防火対象物の管理について権原を有する者は、その用途および収容人員によって防火管理者を定めて防火管理上必要な業務を行わせなければなりません。
防火対象物の区分・用途 | 甲種防火対象物 | 乙種防火対象物 | |||
※要介護福祉施設 (6)項ロ | 特定防火対象物(※を除く) | 非特定防火対象物 | 特定防火対象物(※を除く) | 非特定防火対象物 | |
延べ面積 | すべて | 300㎡以上 | 500㎡以上 | 300㎡未満 | 500㎡以上 |
収容人員 | 10人以上 | 30人以上 | 50人以上 | 30人以上 | 50人以上 |
防火管理者 | 甲種防火管理者 | 甲種または乙種防火管理者 |
乙種防火対象物とは、特定防火対象物で延べ面積が300㎡未満、その他の防火対象物で延べ面積500㎡未満のものをいいます(それ以外は甲種防火対象物)。
また、新築工事中の建築物や建造中の旅客船についても、収容人員が50人以上であれば防火管理者が必要です。
参考消防法 第8条〔防火管理者〕、消防法施行令 第1条の2〔防火管理者を定めなければならない防火対象物等〕、消防法施行規則 第1条の2〔工事中の防火対象物における防火管理〕、消防法施行令 第3条〔防火管理者の資格〕
ちなみに、こんな過去問が出題されています。
防火管理者の選任義務がない防火対象物は、次のうちどれ?
(1)収容人員22名の(6)項ロ 特別養護老人ホーム
(2)収容人員33名の(3)項ロ 飲食店
(3)収容人員44名の(9)項ロ 公衆浴場
(4)収容人員55名の(12)項イ 工場
統括防火管理者
雑居ビルなどで複数のテナントが入っている建物で何名もの防火管理者が選任されておりややこしい為、それらの防火管理者を取りまとめる役割を担うのが統括防火管理者です。
統括防火管理者の選任基準
ちなみに、こんな過去問が出題されています。
統括防火管理者の選任義務が生じる防火対象物(管理権原が分かれており、高層建築物でないもの)として、正しいものは次のうちどれ?
(1)地下1階・地上2階で、かつ収容人員が44名以上の(6)項イ 診療所
(2)地下1階・地上3階で、かつ収容人員が44名以上の(14)項 倉庫および(15)項 事務所からなる複合用途防火対象物
(3)地階なし・地上3階で、かつ収容人員が55名の(5)項ロ 共同住宅
(4)地階なし・地上3階で、かつ収容人員が55名の(3)項ロ 飲食店
◎ 防炎規制
火災発生時の危険性が高いとされる建物に設置するカーテンやカーペットなどは、延焼しにくい防炎物品を使うことが規定されています。
参考第8条の3〔防炎対象物品の防炎性能〕、民泊には“防炎物品”を使用下さい
防炎対象物品
防炎性能を有する製品としなければならない物は、以下の通りです。
- 仕切に用いられる布製のアコーディオンドアカーテン・衝立て
- 室内装飾のため壁に沿って下げられている布製のもの
- 布製ののれん,目隠布,装飾幕,紅白幕等で,下げ丈がおおむね1m以上のもの
- 映写用スクリーン
- 展示会場で用いられている合板で,台,バックスクリーン,仕切用等に使用されるもの
- 店舗部分で,商品の陳列棚としてではなく,天井から下げられた状態又はパネル等として使用される合板
- 屋外の観覧席,通路等の部分に敷かれているじゅうたん等
- 人工芝
また、防炎規制の生じる建物を防炎防火対象物といい、以下のものが該当します。
防炎防火対象物
- 特定防火対象物
- (12)項ロ テレビ・映画スタジオ等
- 高さ31mを超える建築物
- 工事中の建築物
ちなみに、こんな過去問が出題されています。
防炎規制の対象になっていない物品は、次のうちどれ?
(1)映画館の暗幕・どん帳
(2)福祉施設の間仕切りカーテン
(3)図書館のブラインド
(4)工事現場の防音シート
◎ 検定制度
消防の用に供する機械器具若しくは設備・消火薬剤又は防火塗料・防火液その他の防火薬品のうち、一定の形状・構造・材質・成分及び性能等を有しないときは火災の予防もしくは警戒、消火又は人命の救助等のために重大な支障を生ずるおそれのあるものであり、かつ、その使用状況からみて当該形状等を有することについてあらかじめ検査を受ける必要があると認められるものについては、検定をするものとされています。
検定対象機械器具
以下の検定対象機械器具については検定を受けた後、検定合格証が付されたものでなければ販売や販売の目的で陳列できないことになっています。
検定対象機械器具12項目
検定方法2つ
検定には「型式承認」と「型式適合検定」の2段階があります。
型式承認
商品化されようとしている消防用設備等の形状などが規格に適合している場合、総務大臣が型式承認を行います。
型式適合検定
型式承認を受けて作られた製品が検定対象機械器具の形状等に適合しているかを確認するのが型式適合検定です。
型式適合検定は日本消防検定協会または総務大臣の登録を受けた検査機関が行います。
検定合格証
型式適合検定に合格したものには、合格の表示が付されます。
型式承認の失効
総務大臣は技術上の規格が変更され、既に型式承認を受けた検定対象機械器具等の型式に係る形状等が当該変更後の同項に規定する技術上の規格に適合しないと認めるときは、当該型式承認の効力を失わせ、又は一定の期間が経過した後に当該型式承認の効力が失わせる「型式承認の失効」をします。
この「型式承認の失効」が行われた場合、同時に日本消防検定協会などが行った型式適合検定の効力も失う「型式失効」となります。
ちなみに、こんな過去問が出題されています。
消防用設備等の検定制度について、正しいものは次のうちどれ?
(1)型式承認は、商品化されようとしている消防用設備等の形状などが規格に適合している場合に総務大臣が行う。
(2)型式承認に合格したものには合格の表示が付され、販売や販売の目的で陳列できるようになる。
(3)型式適合検定では、型式承認を受けて作られた製品が検定対象機械器具の形状等に適合しているかを確認する。
(4)型式適合検定は日本消防検定協会または総務大臣の登録を受けた検査機関が行う。