今回、実際に大阪市外の某消防署にて『この緩降機、斜降式救助袋に変更して下さい。』と指導された(6)項ロ 福祉施設等へ設ける避難器具の設置基準は以下の通りです。
(6)項ロ 福祉施設等の避難器具
では、緩降機を救助袋に変更する様に指導されると一体どうなるのか‥という部分などを具体的に掘り下げていきます。
【補足】緩降機と救助袋
緩降機とは、調速機のついたロープを用いて地上へ降りる避難器具です。
一応、緩降機も(4)項 デパート等には設置可能ですが、緩降機の場合は使用者が地上まで辿り着かないと、もう一方の身体に着けるベルトが上がってこない為、連続で使用するに際して、特に距離が長い場合は救助袋と比較するとタイムラグが長くなります。
あと、周囲は見えない方が恐怖心が和らぎますYO。 https://t.co/bGzErELXHg pic.twitter.com/P3fv3LuB6g— 青木マーケ㈱【公式】🧯 (@aokimarke) July 19, 2019
斜降式救助袋とは、斜めに展張した救助袋内を滑って降りる避難器具です。
こんにちは!避難器具を用いた訓練は何ら不謹慎ではないと思います。緩降機は救助袋よりも強く恐怖心が感じられますから、是非一度訓練されるべきかと思っています。🏫❕ pic.twitter.com/u8ZSdOFxvB
— 青木マーケ㈱【公式】🧯 (@aokimarke) April 25, 2019
消防署に緩降機を斜降式救助袋へ変更する指導を受けた件について
◎ 緩降機が選ばれる背景
まず、避難器具の設置義務が生じると分かった際、緩降機が選ばれる背景には「救助袋より安いから」という事情が挙げられます。
お客様から消防設備士へ消防用設備等に関する質問をされた際に消防法と実地での経験に基づいた回答をすべきだと思っていますが、バラバラな所轄消防署からの指導への対策として『とりあえず消防署に聞いてみます』と半ば素人対応せざるを得ない状況はプロとして忌避したいところです。
◎ 避難器具使えない問題
今回の(6)項ロ 福祉施設等の用途である新築現場について『この緩降機、斜降式救助袋に変更して下さい。』という指導は緩降機を使用した避難が困難であるという思想に基づいて行われていますが、それ言い出したらキリ無い部分あります。
建物に対して、その収容人員を基準に設置されている避難器具も、残念ながら利用者によっては使えない場合は十分に考えられます。
斜降式救助袋の使用方法
今回、緩降機からの変更を指導された斜降式救助袋ですが、日頃から訓練していないと使用が難しい避難器具ですので要注意です!
斜降式救助袋は「地上で固定する作業が必要となるため一人では使用できない」点に留意されて下さい。
イケてる消防用設備等に係る運用基準をネット上に公開されている “さいたま市” さんについては、(6)項の避難器具について以下の文言を謳われています。
病院、幼稚園、保育園、社会福祉施設その他避難が困難な者が利用する防火対象物に設置する避難器具は、努めて滑り台とすること。
ただし、避難が困難な者の状況に応じて、救助袋とすることができる。
以前よりTwitter上などで『緩降機とか、怖くて使えないでしょ!』みたいな意見を目にしていましたが、それについては今のところ用途によっては “努力義務” レベルで指導している消防署もある(ただし市町村によってバラバラな対応だから業者&お客様は困る)って状況です。
◎ 法改正される可能性はある?
例えばメニューに「チーズバーガー」があって、それを頼んだら『ウチは「てりたまチーズバーガー」しかやってないんです‥』って言われたら『ンならメニュー変えろや』ってツッコミ入れたくなりませんか?
しかし残念ながら、条例一つ変更を加えるのにも膨大な手間や労力が必要となるそうですから簡単に法改正されないものとみて間違いないでしょう。
消防設備士は消防用設備等のプロ。所轄消防署に確認しなければ分からないというコインの表裏を当てる様な仕事をしなければならない状況は忌避されるべき。ルールの改善を求む。
◎ まとめ
- 大阪市外の某消防署にて『この緩降機、斜降式救助袋に変更して下さい。』(6)項ロ 福祉施設等へ設ける避難器具の設置基準に基づいて器具を選定していたにもかかわらず覆される指導がなされていた。
- 緩降機が選ばれる背景には「救助袋より安いから」という事情が挙げられ、緩降機より救助袋の方が1台あたり倍以上も値段が高いので、お客さんが負担する費用に開きが出た。
- 『とりあえず消防署に聞いてみます』と半ば素人対応せざるを得ない状況はプロとして忌避したいところであり、消防設備士が消防用設備等のプロとして仕事ができる様にルールの改善を求めた。