それとも地方公務員?
一方、同じ消防関係の仕事をしている総務省消防庁(FDMA)に勤める公務員は「国家公務員」であり、総務省消防庁には実働部隊(いわゆる消防士)はいません。
消防署で働いている消防士は「地方公務員」で、総務省消防庁の官僚が国家公務員です。
この記事の信頼性
この ❝消防士は「地方公務員」❞ なる結論だけでは ❝そこで試合終了❞ してしまう為、最後まで希望を捨てずに消防設備士が準公務員と呼べる理由についても解説していきます。
消防士は国家公務員?それとも地方公務員?【消防設備士は準公務員】
◎消防士は地方公務員
消防署で働いている消防士は地方公務員です。
日本の消防は市町村長の管理下にあり、市町村が消防の責任を負っています。
公務員の種類2つ
公務員には大きく以下の2種類があります。
公務員の種類2つ
- 国家公務員
- 地方公務員
消防士が属する消防署は、各市町村の消防本部毎に権限が分かれている為、地方公務員となります。
◎総務省消防庁の官僚は国家公務員
一方で同じ消防関係の仕事をしている総務省消防庁に勤める公務員は国家公務員であり、いわゆる官僚です。
総務省消防庁は「日本の消防行政の企画・立案、各種法令・基準の策定」など行う役割の組織である為、職員は消防吏員ではなく官僚であるため実働部隊(消防士)はいません。
総務省消防庁と東京消防庁は別の組織です!
総務省消防庁と東京消防庁は別!
「総務省消防庁」と「東京消防庁」は両方 ❝消防庁❞ とつきますが、東京消防庁は東京全域を管轄するクソデカ消防本部なので混同しない様に注意して下さい。
都道府県レベルで、クソデカ消防本部が設置されているのは東京都のみです。
総務省消防庁長官または都道府県知事は市町村消防へ助言・勧告・指導を行う役割に留まっており、市町村消防(消防本部)を管理する権限を持っていません。
◎消防関係業務のルールが決まる仕組み
消防関係にまつわる業務は、まず総務省消防庁(国家公務員)が決定を下し、そこから各消防本部(地方公務員)へ通達がいきます。
総務省消防庁は消防機関への直接的な指揮権はなく、助言や指導、調整等に留まります。
その後、各市町村の消防本部が消防署へ運用通知が出され、それらに基づいて消防士と消防設備士が二人三脚で業務をする仕組みとなっています。
よって我々消防設備士の業務は、そもそも公務員の業務が一部民営化されたものである事実があります。
◎消防設備業者の準公務員性
消防設備士が属する消防設備業者(=防災屋)の仕事のニーズは消防関係法令に基づく「消防用設備等の設置・維持管理」の規定および「地方公務員である消防士が建物関係者に指導」する公的な強制力によって生み出されています。
つまり、たとえ我々のサービスの消費者となる建物関係者が『いらない!』と言ったとしても、消防関係法令に基づく強制力があるので無理矢理ニーズが担保される仕組み(≒マーケティングされた状態)となっているのです。
よって、公的に無くせないサービスを提供する民間企業である防災屋も、その他の企業と比較すると圧倒的に潰れにくい会社だと言えるでしょう。
この事実からも防災屋が担っている役目は公務に準ずるものであり、いわゆる以下の「準公務員の定義」と合致しています。
準公務員の定義
準公務員の定義ですが、おおまかに以下の通りです。
「公務に準ずる公共性や公益性のある仕事をしている人のこと」
一般的に準公務員というと、民営化された組織に勤める人(≒もともと公務員だった者)を指します。
しかし公益性があって安定しており、これから「無くなる可能性が、極めて低い職業に従事する者」が ❝準公務員❞ と呼ばれる場面もあります。
なぜ鈴与㈱の社員は準公務員と呼ばれていたのか
大学院を修了した後、新卒で就職した ❝静岡を牛耳っている某大手企業❞ の一つ上の人事担当者が以下の様なことを言っていました。
鈴与㈱の人事担当者
『鈴与㈱は準公務員とも呼ばれているからね…』
その際、初めて ❝準公務員❞ なる言葉を耳にしました。
清水港の荷役を司る200年企業
鈴与㈱が準公務員と言われていた由縁として、清水港での荷役業務が長年安定した収益を生んでいる200年企業であったことが挙げられます。
参考鈴与㈱HP
静岡には大手メーカーが多数あり、もし船で物を運んで静岡の工場などへ輸送する場合、鈴与㈱が荷役を司る清水港を使うことになります。
鈴与㈱はビジネスモデル的に極めて「潰れにくい会社」であり、準公務員と呼ばれる者が属するに相応しい民間企業でした。
◎なぜ消防設備士は準公務員と呼ばれていないのか
消防設備業もまたビジネスモデル的に「潰れにくい会社」となりやすいですが、これまで消防設備士のことを準公務員だと明言している人に会ったことがありません。
では、なぜ消防設備士が準公務員と呼ばれていないか。
その理由は「消防設備士の属する消防設備業界が安定しているが故に競争原理にさらされず、マーケティングの努力を怠ってきたから」ではないでしょうか。
ビジネスモデルの「強み」がマーケティング力の弱体化を招いた
上述した通り、消防設備士は公的機関である消防署の業務のうち一部のみ民営化された部分を担う準公務員と言えるポジションにいます。
しかし、そのことをビジネスモデル上の「強み」として理解している人が少なく、その武器を全くと言っていいほどマーケティングに活かせていません。
その理由として「これまで市場競争をしなくても、それなりに飯が食えてしまっていた」ことが挙げられます。
つまり自分達だけは満足な状態が実現されていた為、特に工夫しなくてもよかったのです。
各々、正体が単なる値下げ営業でしかない好き勝手な独立&自己満足の東京進出といった「自分だけよければいい発想」でバラバラに動き続けた結果、長期的な業界ブランディングへの投資を怠ってきたのではないでしょうか。
公的機関である消防署の下で言わば殿様商売を続けていたことが業界全体のマーケティング力の弱体化を招き、結果的に消防機器メーカーが全て警備業界に飲み込まれるという事態に発展しているのです。
◎消防設備士は「消防色」を出すべし!
今一度、消防設備士は一部民営化された消防署の業務を行う者であることを再確認し、それを消費者にも伝えて認識(≒識別)してもらう工夫をすべきです。
例えば消防士の服(ユニホーム)はカラーが全国で統一(オレンジを基調など)しており、パッと見で消防士だと誰が見ても識別できるものとなっています。
消防署は公的機関であるにも関わらず、その辺りのブランディングの仕組みは非常によくできたものがあり大成功しています。
マーケティングが下手過ぎる消防設備士
一方、消防設備士の作業着は、その多くが一般的な現場作業員が着用するものと同様の物を選んでしまっている民間企業がほとんどである状況です。
これではサービスの消費者である建物関係者に「消防関係の仕事をしている専門家」であると識別してもらえません。
消防関係の仕事をしている専門家だと認識されていないことは、サービスの価格低下に繋がります。
他の工事業者と差別化されぬが故に、サービスの価格帯も競争原理が作用している民間企業側に引っ張られてしまうのです。
クライアントのためにもマーケティングすべし
サービスの価格が安くなること自体は消費者(顧客・クライアント)にとっては嬉しいことですが、本来すべきサービスや結果が蔑ろにされてしまっていては意味がありません。
提供側からすれば消防関係法令に精通し、それに準じてサービスを提供(≒法を順守し、建物の安全を担保)する専門家なのですから然るべき対価をキチンと得るべきだと思っています。
消防設備士が業界全体で一体となって「消防色」を出すことで公務員側に寄せていく、そうすることで我々の ❝準公務員性❞ を消費者に理解して頂く。
その状況下であれば、より公務由来で求められているクオリティのサービスが提供しやすい就労環境になるでしょう。
◎ 過度な価格競争への対策
何故こんなことを今、私が言っているかというと「消防の仕事をしている」ことが消費者に知られていないが故に、過度な価格競争が横行しているからです。
実際にあったダンピング
元青木防災㈱社員で独立された方が学校系の点検を入札で落とされたのですが、弊社員で4人1日のところを、前回の点検業者は何と2人で半日で終了されていました。どういう点検がされたのか分かりませんが、例えるならフルマラソンを1時間で走るイメージで有り得ないです。
この過度な価格競争によって、本来消防設備士に求められている業務がされていない状況があり、それが放置されてしまっています。
「シール貼り点検」を駆逐せよ!
例えば警備会社の下で入っている点検業者は、元請けである警備会社の営業が「到底ムリ」な価格で消防用設備点検の受注をする為、「シール貼り点検」と呼ばれる何も点検・整備および確認せずに点検済証のシールを貼るという不適切な方法を選択している業者がはびこっている実態があります。
ここで問題なのは以下の二点。
シール貼り点検の問題点
- 点検が適切に行われていないこと
- マトモな点検業者が価格競争で排除されてしまっていること
この二つの問題を解決して起死回生する為、消防設備士は今一度「消防色」を出すべきなのです。
そして「準公務員」であることを消費者に認知してもらう為、本気でマーケティングに注力すべきなのです。
◎ 消防設備業界全体でマーケティングすべき!
消防設備士という職業を、これから次世代が『消防設備士、やってみたい!』と手を挙げてくれるような状態で残し続けるためには、どうすればいいか。
消防人という括りで準公務員のポジションを獲得するだけでなく、市場および業務に従事する当人たちが「準公務員の仕事である」ことが理解できるようなポジション取りを意図的にやっていく(≒マーケティングをする)必要があると思っています。
もし、この ❝準公務員マーケティング❞ が成功すれば消防設備士は準公務員として世間(クライアント)に認められ、次世代にも胸を張って消防設備業界のバトンパスができるでしょう。
◎ まとめ
- 消防署で働いている消防士は「地方公務員」で、総務省消防庁の官僚が「国家公務員」であった。
- 「総務省消防庁」と「東京消防庁」は両方 ❝消防庁❞ とつくが、東京消防庁は東京全域を管轄するクソデカ消防本部なので混同しない様に注意すべきであった。
- 消防設備士の業務は公務員の業務が一部民営化されたものである事実があり、市場および業務に従事する当人たちが「準公務員の仕事である」ことが理解できるようなポジション取りを意図的にやっていく必要があった。