連結送水管の新設工事
◎ 連結送水管の概要
地上からの放水による消火が難しい高層階の建物が火事になった場合に、地上にある「送水口」から消防ポンプ車を用いて加圧送水し、上階に設けられた「放水口」に消火ホースを繋いで消火活動を行う為の設備が「連結送水管」です。
連結送水管の仕組み
連結送水管の仕組みは、以下の通りです。
連結送水管は主に、以下の3つから構成されています。
- 送水口
- 放水口
- 配管(※配管内に水の入った “湿式” の場合のみ補給水槽あり)
連結送水管の設置基準
連結送水管の設置基準は主に、消防法施行令第29条にて以下の通り謳われています。
連結送水管は、次の各号に掲げる防火対象物に設置するものとする。
一 別表第一に掲げる建築物で、地階を除く階数が7以上のもの
二 前号に掲げるもののほか、地階を除く階数が5以上の別表第一に掲げる建築物で、延べ面積が6,000㎡以上のもの
三 別表第一(16の2)項 地下街で、延べ面積が1,000㎡以上のもの
四 別表第一(18)項 商店街アーケード
連結送水管に関わる資格
連結送水管の配管工事については、消防設備士の資格が無くても行うことができます。
ただ、その後に行う連結送水管の耐圧試験については消防設備士の有資格者が行うことになっています。
参考消防法施行規則 第31条の6〔消防用設備等又は特殊消防用設備等の点検及び報告〕
◎ 連結送水管の施工条件
今回、弊社にて届出・施工および検査まで一貫して行う現場の条件は以下の通りです。
配管はスケジュール40
連結送水管の施工時に使用する配管には、主に以下の2種類が挙げられます。
- 配管用炭素鋼鋼管(SGP)JIS G 3452
- 圧力配管用炭素鋼鋼管(STPG)JIS G 3454
配管用炭素鋼鋼管(SGP)JIS G 3452は “ガス管” と呼ばれており、圧力配管用炭素鋼鋼管(STPG)JIS G 3454はスケジュール40の配管なので “スケ4” 等と呼ばれます。
ガス管とスケ4は、厚みが異なります。
スケ4の方が分厚い為、配管内にかかる水圧が大きくなる現場で利用されます。
設計届作成時に配管の摩擦損失計算を行った結果、最遠の放水口で規定の0.6MPa以上の放水圧を得るためには地上の送水口から1MPaを超える圧力を加えなければならないと設計された為、本現場ではスケジュール40管(圧力配管用炭素鋼鋼管(STPG)JIS G 3454)を用いて施工を行いました。
参考消防法施行規則 第31条〔連結送水管に関する基準の細目〕第5項 ロ
地中埋設部分は樹脂製配管
地中埋設部分の配管については、耐震性に優れた合成樹脂管を使用して施工を行いました。
参考もう地中埋設部分で漏水させない!耐震性に優れた消火用樹脂管の施工
乾式
連結送水管の配管には、以下の2つのパターンがあります。
- “湿式” ‥配管内に常時水が満たされている
- “乾式” ‥通常時は配管内が空になっている
湿式か乾式かの判定も、設計届提出時に計算します。
参考連結送水管の設計届作成、連結送水管ブースタポンプ制御盤「鍵」の種類不明で消火活動に支障が!?
◎ 連結送水管の配管工事
今回8階建ての現場にて連結送水管の配管工事を行いましたので、その模様をご紹介させて頂きます。
地中埋設部分の樹脂配管
地中埋設部分については工程の初期に合成樹脂管を敷設していましたので、そこから配管を繋げていきます。
地中に埋まる部分について、鉄管の場合は錆止めを塗布した後に防蝕テープを巻いておきます。
錆止め
防蝕テープ
>>日東 防食テープ No.55 50mm×10m 黒 5550
立管の運搬・固定
建物上階へ伸びていく配管を作成後、吊り上げ運搬・固定していきます。
打合せにて建築側に作成して頂いていた配管固定用アングルへ、縦に伸ばした配管を固定していきます。
配管の作成
配管の作成については、前記事 “【配管工事】旋盤の使い方マニュアル【ねじ切り】” をご参照下さいませ。
【ねじ切り】旋盤の使い方マニュアル|連結送水管の施工事例【配管工事】
続きを見る
接着シール剤
次に、配管へ継手類を接続します。この時、必ず以下の接着剤を使用します。
>>スリーボンド TB2004AQ スプリンクラー配管用・本剤1kg
>>スリーボンド TB2105CQ スプリンクラー配管用・硬化剤500g
上記を「本剤:硬化剤=2:1」の割合で練り混ぜて、配管接続部へ塗布します。
継手類と配管ねじ接続
手締めした後、パイプレンチにて本締めしていきます。
配管をロープで吊り上げる際、継手類が接続しておくことでロープを引っかけることが可能となります。
電動ウィンチ固定
上階の足場支持金具に、電動ウィンチを吊り下げます。
下の階へフックを降ろします。
フックにロープを固定します。
ウィンチのリモコン操作で、ゆっくり配管を吊り上げていきます。
Uボルトで固定
配管が立ち上がったら、アングルへUボルトで固定します。
フランジ固定(※地上のみ)
地中配管との接合部分となるフランジを、ボルトナットで固定します。
ボルトの長さは要確認!
今回、初めに用意したボルトナットが短くてフランジを繋げることができないトラブルが発生しました。
地中埋設部分に樹脂管を使用している場合は、いつもより長いボルトナットを用意しておきましょう。
採寸(※以降くり返し)
メジャーで次に立ち上げる配管の長さを測りとり、作成後に再び吊り上げて固定していきます。
例えば、配管ねじ入り込み深さ+下の配管から上階鉄骨まで+上階鉄骨から放水口ボックス穴までの長さを測ったとすると…
20mm+2060mm+865mm-130mm(配管~放水口BOX間のエルボ高さ)
…の様な計算で、必要な配管の長さが求められます。
同じ作業を繰り返して、配管を上階まで高く接続していきます。
各階の放水口
立上りの100A配管に100Aー65Aの異形チーズを接続してある為、そこから65Aの配管を伸ばして放水口を設置します。
最上階の放水口ボックス
8階部分のみ、階段部分ではなく壁面に放水口ボックスを設置しました。
屋上テスト弁の設置
屋上に上がることが可能な建物の場合、屋上に放水試験用のテスト弁を設けます。
※今回、乾式なので屋上の補給水槽は無しです。
テスト弁を固定する土台や標識は、1階に送水口が設置可能となった時に再び現場に入って設置します。
>>連結送水管の新設工事 part.2 (近日公開)
◎ 仕上げ
配管ねじ接続部分に錆止めを塗布
放水口ボックスの塗装タッチアップ(傷などの修正)
放水口ボックス内の掃除・現場の片付け
◎ まとめ
- 大阪市内8階建ての現場にて、スケジュール40の配管を用いて連結送水管の新設工事を行った。
- 地中埋設部分は合成樹脂管で、通常時は配管内が空になっている “乾式” で施工した。
- 配管長さを測りとり、作成した配管を吊り上げて接続するという繰り返し作業で上階まで立管を敷設した。