ブロガーのちきりん氏(@InsideCHIKIRIN)が2011年に「ネット上に超クールな“職業データベース”が出来つつある」というエントリをされていて、それを見た方が自分の仕事について書くという好循環が生まれています。
この前、「インターネットが子供のキャリア形成プロセスに与える影響」というテーマで講演をしました。“子供”とは、小学校5,6年生から中学生くらいを想定して。ちきりんはインターネットの中に‥
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その為、管理人も『消防設備士について書くことで職業データベース構築に貢献して次世代の役に立ちたい!』…と筆を執ったワケです。
ネット上にある「消防設備士の仕事とは‥」的な話って、資格の教材を販売する会社や転職サイトが媒体になっていて恣意的に曲げられている感じがあります。
ですから、消防設備業界内部の現職である管理人が(ピィーーッ!!)なインサイダー情報を織り交ぜながら紹介していきます。
「消防設備士」とは、消防法に基づく国家資格である「消防設備士」の免状を取得した上で自動火災報知設備やスプリンクラー設備といった消防用設備等の施工・メンテナンスをしている会社(専業であれば防災屋)で働く者を指します。
※ちょっと文章が長めなので、目次を見て気になる部分から読まれても良いかも知れません。
「消防設備士」という仕事
◎ 消防設備士の実務概要
まず、消防設備士の実務は以下の3つに分かれています。
- ①工事
- ②改修
- ③点検
①工事
まず①工事については、新築の建物や改装・用途変更に伴う既存の建物といった工事現場にて消防用設備等を設置する作業となります。
消防設備士の実務には、工事現場での作業だけでなく所轄消防署へ提出する書類作成や施工後の消防検査立会い等が含まれます。
着工届‥消防法第17条の14にて、甲種消防設備士(有資格者)が工事着手10日前までに届け出なければならない書類。
特にスプリンクラー設備や屋内・屋外消火栓設備といった水系やハロン・CO₂等のガス系の消火設備に関する着工届は、消火に必要な能力を計算しなければならないので一定の専門性を要する。
また①工事は他の建築工事業者や設備業者と共に仕事をする為、消防設備士の業務の内で「建設業の色合いが強い」です。
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②改修
次に②改修ですが、これは主に③点検で発覚した設備の不良個所や、経年劣化などによる設備の不良個所の改修工事を指しています。
建物や設備の状況によってパターンが無数にある為、消防設備士の実務において最も難易度が高いケースがあるのも②改修の特徴です。
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③点検
最後に③点検ですが、消防設備士が行う点検と言えば消防法第17条3の3にて規定されている消防用設備点検を指すでしょう。
自動火災報知設備がある建物であれば、先端に試験器が装着された棒を持った消防設備士が「天井の感知器を試験するシンボリックな光景」は皆様お馴染みではないでしょうか。
— 株式会社石井マーク (@ishiimark_sign) March 20, 2019
上記の②改修と③点検が適切になされて成り立つのが、いわゆる “メンテナンス” つまり維持管理という意味合いの仕事となります。
消防法に基づく点検は、消防用設備点検だけでなく「防火対象物点検」もあります。
他にも、建築基準法上でも防火戸・防火シャッター等を対象とした「防火設備定期検査」といった消防設備士が行うことで作業効率・技術的に相乗効果が見込めそうなメンテナンス作業が挙げられます。
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◎「どうやって消防設備士になったか」
消防設備業界に足を踏み入れる初めの一歩は人それぞれですが、大きく以下の3つが挙げられるでしょう。
①コネクション
知名度のない消防設備業界に辿り着くルートの一つに、コネがあげられるでしょう。
ちなみに、こんな感じで職業データベース的な発信に辿り着かなければ、消防設備士って仕事があることを認識するのは困難な現状です。
消防設備士になったら、合コンで消防士のフリをして説明をサボることも覚悟しなければなりません。
例えば、管理人なんて同じ消防法に基づく「危険物取扱者」って免状をフルで取得していたのに「消防設備士」については知ることができていませんでした。
②関連業種からの転職
例えば、電気屋さんとして働いていた方が、現場にて自動火災報知設備の工事をする防災屋と関わることがあったします。
その際に『消防って‥面白そうだなぁ』と思って、消防設備業界に入る方もいらっしゃいます。
大変レアなケースとして、元消防士であった方が消防設備士になるといったキャリアも伺ったことがあります。
③工業高校・職業訓練校からの紹介
地域の工業高校などに求人を出して、新卒入社を受け入れている防災屋さんもあります。
ちなみに、消防設備士になるに際して「学歴不問」もしくは「高卒以上」の防災屋が多数を占めます。
◎ 超リアル!消防設備業界の情報
消防設備業界にて、数年ガチで働いてみないと分からない話が沢山あります。
これから消防設備業界の門を叩く可能性のある方向けに、超リアルな話も少し紹介します。
①消防設備業者の立場は弱い
なぜ消防設備士という仕事が成り立っているかといえば「消防用設備等の施工・メンテナンスにおけるエキスパートである」ことに基づいています。
⛑ 工事の場合
例えば、建設業では大きく設備工事という括りがあり、その中の一つが消防用設備等の工事となります。
建築現場には給排水工事を行う衛生屋さんや電気工事を行う電気屋さんが必ず入っており、衛生屋さんであれば水系設備、電気屋さんであれば警報設備の工事を手掛けることもあります。
このことから、建設現場に入る場合だと衛生屋さんもしくは電気屋さんの下請け業者となる場合が多いのです。
また、そもそも設備業者自体が建設現場全体の構造的に三次請け以降になるのが確定しています。
防災屋(消防設備士)が現場で必要とされる理由を解説|マーケティング
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その為、業者間の折衝でも強気で出られないことや、ある程度の値交渉に応じざるを得ない場面があります。
✍ メンテの場合
また、建物のメンテナンスにおいても消防設備業界は完全に警備業界の下位市場となっています。
何故なら、消防機器メーカー最大手のN社や、二番手のH社はいずれも大手警備会社に完全子会社化されている為です。
現役消防設備士が解説!消防設備業界のマーケット【マーケティング】
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以上の理由から、消防設備業者の立場が市場構造的に弱いことを分かって頂けたかと思います。
②消防設備士の給料
消防設備士の給料について平均年収が¥400~600万円だとネット上で公表されていますが、これはズバリ会社に寄りけりです。
各防災屋の給料を推測する目安として、前述した市場構造上で「どのような立ち位置の業務をしているか」が挙げられます。
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もし消防設備士として働く場合は、入社する会社について事前にしっかり調べましょう!
③女性消防設備士が少なく、高齢者が多い
厳然たる事実です。
建設業全般に当てはまることですが、消防設備業界も多分に漏れず‥。
変化の速い今の時代は「若者である」ということが、昔と比べてメチャクチャお得だと思ってます。
何故なら、最新のテクノロジーに触れる時間が人生の多くを占めており、その分だけ爆速で成長できるからです。
消防設備士の仕事は「資格取得」や「現場作業を覚える」等の “初速” こそ要るものの、ある程度までは数年で慣れてプラトーに達します。
プラトー(Plateau)は、一時的な停滞状態のことを言う。
おもに筋力トレーニング時の停滞期を指す。
身体で覚えて作業できることは良い事である反面、若者にとっては頭を使って苦労して成長していく‥というチャンスを逃す事に繋がる恐れがあります。
例えば「消防設備業界についての発信」に挑戦するというのは、いかがでしょうか。
社会全体の為にもなって会社の為にもなり、そして自分のスキルも身に着くのでオススメな気がします。
☆☆☆
以上、ザーッと消防設備士の仕事について述べてみました。
世の中に数多ある職業の中の一つに、消防設備士が入れば幸いです。
その他、不明な点や知りたいことありましたら遠慮なくコメント下さいませ。
◎ まとめ
- ブロガーのちきりん氏のエントリを見て、管理人も『消防設備士について書くことで職業データベース構築に貢献して次世代の役に立ちたい!』…と筆を執った。
- 消防設備士の実務には①工事②改修③点検があり、元々知られていない消防設備士なる職業に就く経路として①コネ②関連業種からの転職③学校の紹介があった。
- 消防設備業界で働く消防設備士には独占業務があるが、市場における立場は弱く多重下請け構造で買い叩かれる一面もあった。
ネットに超クールな“職業データベース”が出来つつある
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