スプリンクラー設備のメインバルブとは‥消火ポンプの直上にある大きなバルブ(止水弁)のこと。
コイツ “閉” にすると消火水槽から消火ポンプで吸い上げた水が配管に流れないので、消火ポンプの「締め切り運転」ってのができたりスプリンクラー設備の機能を停止したい時に活躍するものです。
スプリンクラー設備150Aメインバルブ(止水弁)の交換工事
今回、150Aバルブ自体から水が漏れていた為、新品に交換することとなりました。
⓪水抜き
まず配管内の水を抜きます。
補給水槽
今回は11Fに中間ポンプのある高層建物でしたので、屋上だけでなく11階にも補給水槽がありました。
これと直近のバルブを閉めることで、交換工事をするエリアにおける配管内への給水を止めることができました。
補給水槽とは‥建物最上部から重力のかかった水を落とし、配管内を水で満たして置くための水槽。
補給水槽が機能していなければ配管内に空気が入ってしまい、放水時に『ブスッ、ボボッ‥』と下品な音のエアーが連射される。
圧力タンク
次に、圧力タンクの排水を “開” にして配管内に残った水を抜いていきました。
圧力タンクとは‥スプリンクラー設備の配管内の水圧が一定値以下になったことを検出し、自動で消火ポンプを起動させるためのもの。
例えば閉鎖型スプリンクラーヘッドが熱で弾けて配管内の水が出ることで配管内の水圧が減少し、圧力タンク内の水圧も減少して消火ポンプが回るといった動作をする。
①既設150Aバルブ取り外し
配管内の水が抜けたら、バルブを取り外していきます。
ホイスト固定
ウィンチ(小さいホイスト)を天井に固定して、ロープで150Aバルブを吊り上げました。
これにより、電動で150Aバルブの持ち上げが可能となります。
ポイント
ホイストは重量物を持ち上げると大きな電流を要する為、ブレーカーが落ちる可能性があります。
分電盤内ではなく、コンセント部分で過電流を遮断する “ビリビリガード” を介することで落ちたブレーカーを探す手間が省けるので大変オススメです。
ロープ固定
重心が150Aバルブ中央付近となる様に、ロープを結びつけて固定。
撤去完了
その後、電動のホイストで『ウィーン‥』と吊り上げて地上へ降ろしました。
事前の現地調査で採寸して用意しておいた、同じ大きさの150Aバルブと交換していきます。
なぜバルブを吊り上げたのか
この150Aバルブ、実は総重量が72kgもあるのです。
『そんな吊り上げるとか大掛かりな事しなくても、脚立に上って持ちあげればいいじゃん!』という感想をお持ちの方もいらっしゃったかと思います。
しかし例えば「自分の背丈以上の高さにいる成人男性を支えなければならない」‥と考えれば素手では困難ということがイメージできるかと。
参考KITZ 鋳鉄バルブ
◎ 新しい150Aバルブ取り付け
撤去時と同様に、ウィンチで新しい150Aバルブを吊り上げて取り付けていきます。
ここに注意
新しいバルブには琥珀色のカバーが装着されています。
このカバーが着いたままだと、もちろん通水しませんので絶対に取ってから設置する様にして下さい。
新品のツメ
※新品のツメに注意して下さい。
◎ ポンプアップ
配管内の水を空にして工事をしていた為、消火ポンプを起動させて配管内へ消火水槽の水を充水します。
☟ポンプアップ前
☟ポンプアップ後
エア抜き
配管内が空になった時に、空気が入り込んでいます。
屋上のテスト弁や、圧力タンク側でエアが噛んでいないか最終確認しましょう。
配管内のエアが圧縮されることによる圧力低下は、消火ポンプ誤作動の原因になる可能性があります。
◎ 持ち物(工具など)
電動ウィンチ(ホイスト)
メガネレンチ 30×32mm
特に今回、謎にボルト径が30mmと32mmが混ざっていたので重宝されました。
ロープ&カラビナ
ビリビリガード
水系設備のコツ
大体、思ってた通りにならないので余裕を持った計画にしましょう。
◎ まとめ
- 高層ビルにてスプリンクラー設備のメインバルブ2つ(下階の消火ポンプと11階の中間ポンプ)交換した為、その手順について解説した。
- 150Aバルブは総重量が72kgもあった為、電動ウィンチで吊り上げて施工した。
- 配管内の水を一度全て抜いて空にする必要があった為、再びポンプアップした際にエアが残る可能性が高いのでエア抜きをすべきであった。