上述した通り弊社で消防用設備点検をした建物で、その翌日に計4箇所の断線表示が出るという奇妙な現象が起こっていました。
前提条件
- 消防用設備点検が終了した後、翌日の朝に計4箇所の断線表示が出ていた。
- 点検時は、自動火災報知設備に不具合は無く全数の作動が確認されていた。
- 誘導灯ブレーカー入り切り時、他の照明類ブレーカーも落ちる現象が起こっていた。
- 他の照明類ブレーカー原因調査の為、同じタイミングで電気屋さんも入っていた。
- お客様は出来るだけ早く正常復旧を望んでおり、急ぎの案件であった。
上記の案件対応を管理人が行い、無事復旧に至るまでの経緯を紹介していきます。
なぜ消防用設備点検後に複数の断線が出たのか
◎ トラブル対応の背景
弊社の点検部が消防用設備点検を行った翌日の朝、お客様より『受信機で警戒番号4・5・6・7の断線表示が出ている』と連絡がありました。
その一次対応については現地で点検した社員が対応していたのですが、他の現場に行かなければならないので断線復旧の為に現地調査をする時間が確保できない!…ってなワケで管理人がピンチヒッターとして起用されたのです。
◎ いざ現地調査へ
※その後、無事に心を切り替えて元気よく担当者様に挨拶をし、現地調査を開始しました。
受信機内
おそらく断線の出方からしてコモン(共通線:C)にエラーが出ているのではないかと検討をつけていたので、受信機内のコモンを確認してみました。
コモン(共通線)とは‥火災報知器はプラス+とマイナス-が短絡(くっつく)と作動する仕組みとなっており、そのマイナス-をコモン(共通線:C)という。
プラス+はライン(表示線:L)であり、コモン(共通線:C)1本に対して7本までライン(表示線:L)をペアにして警戒区域を設定できる。
コモン表
コモン(共通線:C)とペアになっているライン(表示線:L)は、表にして受信機内に掲げてあるので確認します。
受信機内の電線について、特に断線の原因となってそうな箇所は見受けられませんでした。
各階の終端抵抗
次に、断線表示が出る原因となり得る「終端抵抗」が適切に接続されているかを確認してみました。
終端抵抗とは‥自動火災報知設備の回路は “送り配線” という一筆書きで敷設されており、その最後尾に接続する電気的な壁。
終端抵抗を接続してやることで、受信機(大元の制御盤)側で『おっ、ちゃんと終端抵抗が存在している断線なしヨシ!』と断線しているかどうかを検知できる仕組みになっています。
図面類を確認してみる
大ヒントが、電気回路の系統図にありました(※もうちょい早く見ろ等のツッコミは一切受け付けません)。
あ、遠隔試験用の中継器あるわ。
◎ メーカーの友人に電話
ーーーーー ✂ 数分後 ✂ ーーーーー
やけどバッテリーの盤あって、そっから電源供給されていないと受信機上で断線出るみたいよ。
点検時に起きていた「もう一つのトラブル」
実は消防点検時に「誘導灯のブレーカーを入り切りしていたら、他の照明類のブレーカーが落ちた。」という不可解な現象が起こっていました。
その対応をする為に、電気屋さんも現地に駆けつけており色々調査されていました。
自火報の断線調査をしている際、電気屋さんがEPS内で色々されているのを傍目に見ていた時にパッと盤っぽいものが視界に入っていたのを思い出しました。
EPSとは‥Electric Pipe Space /Shaft(エレクトリック パイプ スペースまたはエレクトリック パイプ シャフト)の略で、電気の配線や配管を通すスペースのこと。
『(‥アレだ!)』と半ば確信して、EPSへ足を運びました。
蓄電池設備の盤を確認すると‥
分電盤のブレーカーを確認すると、赤いハンドルロックがされていたものの中のブレーカーは落ちていました。
消防用設備点検時にブレーカーが落ちてしまっていたものの、予備電源で駆動していたので断線表示が出るまでに時差が生じていたのです。
ここに注意!
赤いハンドルロックは「ブレーカーを切らない!」という目印なだけで、中のブレーカーはOFFになるので見た目で判断しない。
ブレーカーをONにして蓄電池設備の盤を確認すると、電圧計の針が24Vあたりを指していました。
その後、おそるおそる受信機を確認すると‥無事に断線表示が消えていました!
よって、断線表示の原因は「自火報の中継器ブレーカーが落ちていたから」でした。
‥実に面白い。
同様の断線表示に遭遇された消防設備士の皆様は、是非3分で解決して速やかに現場から離れて下さい。
◎ まとめ
- 消防用設備点検が終了した翌日の朝に計4箇所の断線表示が出ており、その案件対応を管理人が行って無事復旧に至るまでの経緯を紹介した。
- 一通り断線調査をするも原因がハッキリ分からずメーカーの友人に聞いたところ、自火報中継器用の電源が落ちていると断線表示が出ることが分かった。
- 「誘導灯のブレーカーを入り切りしていたら、他の照明類のブレーカーが落ちた。」という不可解な現象が起こっており自火報中継器用のブレーカーも実は落ちてしまっていたものの、予備電源で駆動していたので断線表示が出るまでに時差が生じていた。