弊社のメンテナンス部を任されている社員より、お客様から以下の様な質問があったと報告されました。
お客様から『地震が発生した場合に、消防用設備等って作動するんですか?』と質問ありました。
取り急ぎ『消防用設備等は、火災に対して反応する為、作動しない。※例外あり』と回答しておきましたが、補足したいのでページあると有難いです。
※非常放送設備に地震速報を受けて警報を発するものもある
こういった事情もある為、地震によって影響を受ける消防用設備等と、その対処法について記していきます。
地震で消防用設備等が受ける被害と対処方法
例:スプリンクラー設備の破損
令和3年2月13日23時07分に発生した福島県沖を震源とする地震によって、以下の様な被害を受けたというツイートがありました。
サニーランドフォルテ店
@sunnyland_forte
地震でスプリンクラーが作動してしまい商品がほとんど水に浸かってしまいました。
とてもつらいです。
売り物になりません。
なんとかしなければなのですが。
地震による被害とはいえ、火災から財産を守る為の消防用設備等による水損とあっては消防設備士として悔やみきれない思いです。
大規模地震で被害を受けやすいスプリンクラー設備
以下のデータは、東日本大震災による消防用設備毎の被害内訳です。
過去の大規模地震において消防用設備等にも被害が及んでおり、他の消防用設備等と比較すると特にスプリンクラー設備が適切に動作しなかった事が報告されています。
水が漏れた場合は「制御弁」を閉める!
スプリンクラー設備は配管内の水圧が低下すると消火ポンプが起動し、消火水槽内にある大量の消火用水が加圧送水される仕組みになっています。
よって、地震による衝撃で天井裏の配管が折れる等で水が漏れ出てしまうと、そこから消火ポンプから送られた水が勢いよく噴き出てしまいます。
上述した様なスプリンクラー設備の故障による “水損” を最小限に抑える為には、各階にある「制御弁」のバルブを閉める必要があります。
制御弁の設置場所
制御弁は「制御弁(スプリンクラー設備)」と赤字に白文字の標識が掲げられている箇所に設置されています。
制御弁室には流水検知装置(アラーム弁)が設けられており、その直下部にある “仕切弁” というバルブを閉めることで消火ポンプからの水が当該階の配管へ送られなくなります。
☟分かりにくい場合は前ブログ “【図解】アラーム弁の構造・仕組み” も、ご参照下さいませ。
【図解】アラーム弁(流水検知装置)の構造・仕組み|スプリンクラー設備
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水損を最小限に抑える為には、建物の関係者サイドの方々(防火管理者など)が制御弁を閉める操作を行うことが不可欠です。
何故なら、一刻も早く水を止めなければ急速に水損の被害が拡大してしまい、例えば我々の様な業者が到着した段階では既に手遅れ‥という状況になってしまうからです。
地震や台風といった自然災害発生時においては、交通がマヒしたり業者も緊急対応に追われてしまい作業実施の時間が遅れる傾向にあります。
続いて、地震発生に伴う消防用設備等と係る他のトラブルと対策について代表的なものを紹介していきます。
◎ 地震発生直後に起こる消防用設備等のトラブルと対応策
地震に伴って起こる、消防用設備等の主なトラブルが数パターンありますので順に解説します。
消火設備の水槽水位異常
消火設備には、以下の様な水を蓄えておく3つの水槽があります。
- 消火水槽(消火用水を溜めておくメインの大きな水槽)
- 補給水槽(配管内を水で満たして置く為に建物最上部にある水槽)
- 呼水槽(消火ポンプと埋設の消火水槽の間の配管を水で満たす為の水槽)
これら3つの水槽には、いずれも水位が低くなると自動で給水をする “ボールタップ” が備わっています。
地震によって水面が揺れてボールタップが下がることで、通常の水位より上まで給水されてしまうケースが発生します。
その後、水位が上がったという情報が電極棒によって検知され、例えば「消火水槽 満水」といった異常が警報盤へ送られて警報音が鳴ります。
電極棒とは‥水槽内の “満水” と “減水” を感知し、その信号を制御盤や自動火災報知設備の受信機に送るもの。
長さの異なる3本の棒から構成されており、水位の変動で水との接し方が異なることを利用して電気信号を発する。
水位異常時の対応方法
地震によって警報盤上で水槽関係の異常が出ている場合において、その対処法は主に以下の通りです。
- 水面が揺れて一時的に満水が出た場合‥警報盤上のリセット操作のみで異常ランプ復旧可能
- 給水されて水位そのものが上がってしまった場合‥警報盤の異常ランプを消すには水抜き操作が必要
- 減水関係の警報が出ている場合‥水槽からの漏水が考えられる(※緊急性あり)
配管からの水漏れ
配管系統から水が漏れている場合は、消火ポンプや補給水槽のバルブを閉じて新たに配管内へ水が流れることを防ぎます。
また、配管内の圧力低下によって消火ポンプが起動してしまう場合は、電源を落とす等しておかないとトラブルの原因になります。
停電が起こっていた場合の異常
消防用設備等の電源は、停電時にも使用できる様に非常電源が備わっています。
https://twitter.com/aokibosai/status/1182541369966874624?s=20
もし、予備電池の不具合が回復せずにトラブル音が鳴り続けた場合は電池を交換します。
◎ 地震直後に確認しておきたい箇所3つ
こちらは設備を知っている建物管理者向けの話になりますが、記載しておきます。
☑ スプリンクラー制御弁の圧力が安定しているか
地震による配管の損傷などに伴う微量の漏水などがあった場合に、早期発見が可能です。
☑ 水槽の水位に異常がないか
水槽そのものが損傷してしまうことで水位が減少したり、配管内の水が漏れることで充水が行われると自動で給水されている場合があります。
☑ 各種制御盤にエラーなどが出ていないか
消火ポンプや水槽の異常だけでなく、過電流など電源系の異常が発生している危険もあるので制御盤は要確認です。
◎ まとめ
- 地震の被害を受けやすいスプリンクラー設備の故障による “水損” を最小限に抑える為には、各階にある「制御弁」のバルブを閉める必要があった。
- 一刻も早く水を止めなければ急速に水損の被害が拡大してしまう為、水損を最小限に抑える為には建物の関係者サイドの方々(防火管理者など)が制御弁を閉める操作を行うことが不可欠であった。
- お客様から『地震が発生した場合に、消防用設備等って作動するんですか?』と質問があった為、その際に利用できる話をページにまとめた。
お客様から質問ありました
メンテナンス社員