著者:青木俊輔(強欲な青木)/青木マーケ(株) 取締役 COO、(株)防災屋 代表取締役 社長、(一社)予防団 共同代表理事(本人確認 2026-10-19)
保有資格:消防設備士(甲種特類・甲種1〜5類・乙種6類・7類)、第二種電気工事士ほか
確認日:2026年10月21日
更新内容:初版
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この記事の結論
消防設備の現場で新人が特に気をつけたい危険は、次の3つです。
- 高所:天井の感知器の点検や交換で、脚立や足場に上る場面が多い
- 感電:受信機や分電盤のまわりで、電気の通った部分に触れるおそれがある
- ガス系消火設備の誤った放出:感知器の試験や点検の手順を間違えると、消火ガスが出てしまうおそれがある
どれも、法令や消防庁の点検要領で対策が決められています。新人のうちは、免状を持つ先輩と組んで作業し、自分だけで判断して設備に手を出さないことが一番の対策です。(株)防災屋では、免状のない新人は補助として、免状を持つ消防設備士の手元についてペアで作業してもらい、単独では作業させていません(本人回答、2026年10月)。

危険1:高所作業
どんな場面があるか
消防設備の仕事では、天井に付いた感知器の点検や交換、スプリンクラーヘッドの工事、避難器具の設置など、高い所での作業がよくあります。青木は書籍で、伸ばせる脚立(アップスライダー)を使って高い天井の感知器を交換する場面は頻繁にあり、危険なタイミングが多いと書いています(書籍 第3章。2023年執筆時の記述)。
法令で決まっている対策
労働安全衛生規則では、高所での作業について、事業者に次のような対策を義務づけています。
| 場面 | 決まっていること | 根拠 |
|---|---|---|
| 高さ2m以上で墜落のおそれがある作業 | 足場を組むなどして作業床を設ける。難しい場合は、防網を張る、墜落制止用器具を使わせるなどの措置をとる | 労働安全衛生規則 第518条 |
| 墜落制止用器具を使うよう命じられたとき | 労働者はそれを使わなければならない | 同 第520条 |
| 墜落制止用器具を使わせるとき | 取り付ける設備を設け、器具と設備に異常がないか随時点検する | 同 第521条 |
| 高さ2m以上で作業床を設けることが難しい所で、フルハーネス型を使う作業 | 特別教育を行う | 同 第36条第41号 |
| 脚立 | 丈夫な構造で、脚と水平面の角度を75度以下にし、折りたたみ式は角度を保つ金具などを備えたものを使う | 同 第528条 |
| 移動はしご | 丈夫な構造で、幅30cm以上、すべり止めなど転位を防ぐ措置をとったものを使う | 同 第527条 |
新人が気をつけたいのは、使う脚立や足場が、この基準に合っているかを上る前に確かめることです。足場が固定されているか、脚立の開き止めが掛かっているか、上る前に一度目で見て、手で揺すってみてください。
危険2:感電
どんな場面があるか
自動火災報知設備の受信機や、設備に電気を送る分電盤のまわりでは、電気の通った部分(充電部)に近づく作業があります。青木は書籍で、分電盤の裏で配線をしていたときに動力(200V)で感電した経験を書いています(書籍 第3章。2023年執筆時の振り返り)。
法令で決まっている対策
| 場面 | 決まっていること | 根拠 |
|---|---|---|
| 電気工事の作業 | 一般用電気工作物等の電気工事は、第一種または第二種電気工事士でなければ従事できない(保安上支障がないとされる軽微な作業を除く) | 電気工事士法 第3条 |
| 電路を止めて(開路して)作業するとき | 開閉器に鍵をかける、通電禁止の表示をする、または監視人を置く。残っている電気を放電させる。作業後に通電するときは、感電のおそれがないことを確かめてから | 労働安全衛生規則 第339条 |
| 低圧の電気が通った部分を扱う作業 | 感電のおそれがあるときは、絶縁用保護具を着用させるか、活線作業用器具を使わせる | 同 第346条 |
| 低圧の充電電路の敷設・修理などの業務 | 特別教育を行う | 同 第36条第4号 |
青木は、甲種の受験資格になるだけでなく、仕事で電気を扱う場面が多いことから、第二種電気工事士の取得をすすめています(YouTube、2025年5月公開)。電気工事士の資格がない人は、先輩の指示があっても電気工事をしてはいけません(保安上支障がないとされる軽微な作業を除く。電気工事士法第3条)。配線など電気工事にあたる作業は資格を持つ人が行うので、新人は自分の判断で配線に触らないでください。
危険3:ガス系消火設備の誤った放出
どんな危険か
不活性ガス消火設備(二酸化炭素など)やハロゲン化物消火設備は、火災のときに部屋に消火ガスを放出して火を消す設備です。二酸化炭素を放出する設備については、消防法施行規則で「二酸化炭素が人体に危害を及ぼすおそれがあること」「消火剤が放射された場合は、当該場所に立ち入ってはならないこと」を表示した標識を設けることが決められています(消防法施行規則 第19条)。
ガス系消火設備は、感知器が火災を感知すると連動して動くものがあります。そのため、点検の手順を間違えると、点検のつもりで消火ガスを放出させてしまうおそれがあります。
青木がヒヤリとした経験
青木は、消防設備士サミット2025のアンケートに答えた動画で、次の経験を話しています(YouTube「事前アンケートに㈱防災屋の青木がガチ回答」2025年9月公開)。
- 暗くてほとんど何も見えない部屋で、感知器を試験のために炙ろうとしていた
- たまたまライトで照らしたとき、感知器の横に「ハロゲン化物消火専用」と書いてあるのに気づいた
- その設備は、感知器が2つ作動すると消火設備が動く仕組み(AND回路)で、気づかずに2つ炙っていたら放射していた
法令・点検要領で決まっている対策
| 場面 | 決まっていること | 根拠 |
|---|---|---|
| 自動火災報知設備の点検 | 点検の前に、ほかの設備(消火設備、放送設備、防排煙設備など)との連動回路を遮断し、点検が終わったら元に戻す | 消防庁「消防用設備等の点検要領」第11 自動火災報知設備 1 一般的留意事項(消防予第412号、令和6年9月10日改正) |
| 二酸化炭素を放出する全域放出方式の設備で、工事・整備・点検などで防護区画に人が入るとき | 閉止弁を閉めた状態にし、自動手動切替え装置を手動にしておく | 消防法施行規則 第19条の2 |
| 消火剤が放射されたとき | 消火剤が排出されるまで、防護区画に人を入れない | 同上 |
| 制御盤の付近 | 設備の構造と、工事・整備・点検のときにとるべき措置と手順を書いた図書を備えておく | 同上 |
| 二酸化炭素を放出する設備 | 起動から放出まで20秒以上の遅延装置、閉止弁、放出を知らせる表示灯、危険を知らせる標識を設ける | 消防法施行規則 第19条 |
新人のうちに身につけてほしいのは、感知器や設備に手を触れる前に、それが何と連動しているかを確かめる習慣です。分からないときは、作業を止めて先輩に確かめてください。
ガス系消火設備の仕組みは、第3類の消防設備士試験の範囲でもあります。試験の全体像は(消防設備士3類の試験ガイド|不活性ガス・ハロゲン化物・粉末消火設備の試験範囲と勉強の進め方)で解説しています。
現場ではほかにも
青木は書籍で、高所と感電のほかに、車での移動が多い仕事なので交通事故にあいかけたことも、危険な場面として挙げています(書籍 第3章)。現場の汚れや体力的なきつさは「消防設備士はきつい?」で解説しています。
新人が守ってほしいこと
- 一人で判断して設備に手を出さない(補助は免状を持つ先輩とペアで)
- 高い所に上る前に、脚立・足場・墜落制止用器具を確かめる
- 資格のない人は電気工事をしない(軽微な作業を除く)。電気工事は電気工事士の資格を持つ人が行う
- 感知器や設備に触る前に、何と連動しているかを確かめる
- 「おかしい」「分からない」と思ったら、作業を止めて先輩に聞く
分からないことをそのままにして作業を進めるのが、一番危ないです。高い所の作業や電気の作業では、聞かずに進めることがけがや事故につながります。
(株)防災屋で新人に守ってもらっている3つの決まり
(株)防災屋では、新人に次の3つを守ってもらっています(本人回答、2026年10月)。
- 分からなかったら聞く
- 準備をする
- 国家資格を取って勉強する
フルハーネス型墜落制止用器具や低圧電気取扱いの特別教育は、仕事で必要になるタイミングで受けてもらっています(本人回答、2026年10月)。
次に読む
- (資格がなくてもできる消防設備の仕事|無資格の新人が担当する範囲)
- (消防設備士の新人が一人前になるまで|覚える順番と、資格と実務の差)
- (現場で伸びる新人の仕事術|メモ・質問・失敗の振り返り(消防設備士編))
- 消防設備士はきつい?(/setsubishi-yametoke/)
消防設備士の仕事の「危険」「きつい」「きたない」といった現実は、書籍『消防設備士0類』の第3章「消防設備士になるデメリット7つ」で書いています。本は2023年に書いたもので、法令で決まっている安全対策の詳しい内容は書籍には載っていません。この記事と公式の資料で確かめてください(紹介ページ)。
参考文献
- 労働安全衛生規則(昭和四十七年労働省令第三十二号)第36条第4号・第41号、第339条、第346条、第518条、第520条、第521条、第527条、第528条、e-Gov法令検索(デジタル庁)https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032 確認日:2026年10月21日
- 電気工事士法(昭和三十五年法律第百三十九号)第3条、e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000139 確認日:2026年10月21日
- 消防法施行規則(昭和三十六年自治省令第六号)第19条、第19条の2、e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/336M50000008006 確認日:2026年10月21日
- 総務省消防庁予防課長「消防用設備等の点検要領の一部改正について(通知)」消防予第412号、令和6年9月10日(別紙1 第11 自動火災報知設備 1 一般的留意事項)https://www.fdma.go.jp/laws/tutatsu/items/20240910tennkennyouryoukaisei.pdf 確認日:2026年10月21日
- 青木俊輔『消防設備士0類 〜消防設備士をする前に読む本〜』改訂版、電子書籍(Amazon Kindle)、本文2023年。第3章03(P0982〜P0992)。確認日:2026年10月21日
- YouTube「強欲な青木&消防設備士」【🗳️10の質問】事前アンケートに㈱防災屋の青木がガチ回答【消防設備士サミット2025 第5セッション】2025年9月30日公開 https://www.youtube.com/watch?v=cPDPbr2K0Hs 確認日:2026年10月21日