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消防設備士2類 過去問講義
このページの対象と到達目標
対象は、消防設備士甲種第2類・乙種第2類を学ぶ初学者です。三相誘導電動機について、回転方向、周波数と回転数、始動時の考え方を「回転磁界」と「電圧・電流」の関係から整理します。
読み終えたときに、次のことができれば十分です。
- 三相の相順と回転方向の関係を説明できる。
- 同期速度
ns=120f/pを使い、周波数と極数から基礎的な回転数を計算できる。 - 極数が一定なら、周波数の比と同期速度の比が等しいことを使える。
- スターデルタ始動の目的を、始動電流を小さくすることとして説明できる。
- 運転・始動・停止・保護を、実回路の無断操作をせず概念として区別できる。
通電中の制御盤、電動機端子、回転体、始動器には近づかず、結線の変更や相入替えを行いません。停止・隔離・検電・ロックアウト等を含む作業手順、資格、保護具、施工要領および責任者の指示を確認します。

三相誘導電動機は回転磁界を利用する
三相交流を固定子の巻線へ加えると、三つの相の時間的なずれによって回転する磁界が生じます。回転子は電磁誘導によって力を受け、この回転磁界に追従する向きに回転します。三相誘導電動機は、三相交流から動力を得る代表的な交流電動機です。
電源へ接続された三本の電線のうち、いずれか二本を入れ替えると相順が反転し、回転磁界の向きも反転します。そのため、三相誘導電動機の回転方向は逆になります。これは試験での基本関係です。実設備では、回転方向の変更が機械・ポンプ・負荷へ及ぼす影響を図面・仕様で確認し、無断で相を入れ替えません。
| 見方 | 試験での整理 | 実務での注意 |
|---|---|---|
| 相順 | 三相の順序が回転磁界の向きに関係する | 端子表示・結線図・制御方式を確認する |
| 二相の入替え | 回転方向が逆になる | 停止・隔離・検電と責任者の指示なしに作業しない |
| 三相すべての扱い | 三本のうち二本を入れ替える関係で覚える | 相順試験や改修は定められた手順・計測器で確認する |
同期速度は周波数に比例し、極数に反比例する
回転磁界の速度を同期速度といい、基礎計算では次の式で表します。
ns = 120f / p
ns は同期速度(min⁻¹)、f は周波数(Hz)、p は極数です。周波数が高いほど同期速度は大きく、極数が多いほど同期速度は小さくなります。
計算では、周波数の単位Hz、回転数の単位min⁻¹、割合の単位%を混同しません。途中で丸めず、問題で指定された桁がある場合は最後に丸めます。
たとえば、60 Hz・6極なら次のとおりです。
ns = 120×60 / 6
= 1200 min⁻¹
誘導電動機の実際の回転子速度は、一般に同期速度よりわずかに低くなります。この差をすべりとして扱います。ただし、試験問題で同期速度の近似値を問うときは、まず上の式で選択肢を絞ります。実機の定格回転数・すべり・負荷特性は銘板、仕様書、設計条件で確認します。
周波数だけを変えると、極数が同じなら速度比も変わる
同じ極数の電動機について、周波数だけを比較するなら、同期速度の比は周波数の比です。
ns2 / ns1 = f2 / f1
50 Hz用を60 Hzの条件と比べると、比は 60÷50=1.2 です。基礎問題では回転数は20 %速くなると考えます。これは極数が変わらず、試験の前提どおりに比較する場合の関係です。定格周波数・電圧・負荷・始動条件を満たさない実使用は別の問題なので、計算結果だけで接続可否を決めません。
始動時は、電流とトルクを一緒に考える
停止している電動機を始動するときは、通常運転とは異なる大きな電流が流れ得ます。始動方式は、電源や負荷へ与える影響を考慮して選びます。試験では、スターデルタ始動を「始動電流を小さくする方法」として整理します。
スターデルタ始動では、始動時は巻線をスター結線とし、ある程度回転してからデルタ結線へ切り替えます。スター結線では各相に加わる電圧が線間電圧より低くなるため、始動電流を抑える方向になります。一方で始動トルクも小さくなる方向なので、どの負荷でも使える方法ではありません。
| 始動時に見る点 | 学習上の整理 | 実設備で確認すること |
|---|---|---|
| 始動電流 | 大きくなり得る。スターデルタ始動は抑制を目的とする | 電源容量、始動器の定格、保護協調、始動回数 |
| 始動トルク | 始動電流を抑えると小さくなる方向も考える | 負荷の始動条件、軸・ポンプ・機械の特性 |
| 切替え | スターで始動し、加速後にデルタへ切り替える | 巻線仕様、切替え条件、インターロック、施工要領 |
| 保護 | 過負荷・異常を検出して保護する考え方 | 保護装置の設定値・復帰・点検は仕様と基準で確認 |
説明用に、各相に加わる電圧はスター始動時に線間電圧の 1/√3 となる関係を用いることがあります。具体的な始動電流・トルクの比、切替え時間、適用機種は、電動機と始動器の仕様で変わるため、本稿では定格値として確定しません。
制御は「始動・運転・停止・保護」の順序を守る
電動機制御は、電力を供給する主回路と、運転・停止・保護の条件を扱う制御の考え方を分けて読むと整理しやすくなります。制御の目的は、必要なときに始動し、定められた条件で運転し、異常時は安全側へ移すことです。
| 段階 | 考えること | 独断でしてはいけないこと |
|---|---|---|
| 始動 | 電源条件、負荷条件、始動方式、回転方向 | 端子の相入替え、始動方式の変更 |
| 運転 | 定格、回転状態、異常音・振動・温度 | 保護装置の無効化、定格を超える運転 |
| 停止 | 停止指令、惰性回転、再始動条件 | 回転体へ接近、通電部への接触 |
| 保護・点検 | 異常の記録、定められた点検・復帰手順 | 原因未確認での繰返し復帰・再始動 |
ここでは制御回路図や端子記号を暗記する前に、何を確認してから始動するかを押さえます。消防用設備のポンプ・制御盤・非常電源は、一般の電動機と共通する原理があっても、設備固有の基準・仕様・点検要領に従って扱います。
典型ミスを先に防ぐ
- 二相を入れ替えると停止すると考える。 三相誘導電動機では、基本的には回転方向が逆になります。
- 同期速度と実回転数を常に同じと考える。 誘導電動機にはすべりがあり、問題の前提を確認します。
- 50 Hzから60 Hzは10 %増とする。
60÷50=1.2なので、極数が同じなら基礎計算では20 %増です。 - スターデルタ始動はトルクを増やすためとする。 主な目的は始動電流を小さくすることです。
- 計算結果だけで電源の変更や結線変更をしてよいと考える。 定格、負荷、保護、設備仕様を確認せずに作業しません。
過去問テスト
次の問題は、学習用に整理しています。図版は学習の要点が分かる新規模式図で説明します。
問1 三相誘導電動機の回転方向
三相誘導電動機の電源に接続された3本の電線のうち、いずれか2本を入れ替えて始動した場合の記述として、最も適当なものは次のうちどれか。
- 回転方向が逆になる。
- 発熱して破損する。
- 断続的に回転する。
- 回転しない。
問2 極数と同期速度
6極の誘導電動機を60 Hz(ヘルツ)で使用する場合、回転数のうち最も近いものは次のうちどれか。
- 600 min⁻¹
- 1200 min⁻¹
- 1800 min⁻¹
- 3000 min⁻¹
問3 周波数を変えたときの回転数
周波数50 Hz用の三相誘導電動機を周波数60 Hzの電源に接続して使用した場合の回転数として、正しいものは次のうちどれか。
- 変わらない。
- 10 %速くなる。
- 20 %遅くなる。
- 20 %速くなる。
問4 スターデルタ始動の目的
三相誘導電動機にスターデルタ始動法を使用する理由として、正しいものは次のうちどれか。
- 始動電流を上げるため
- 始動時の回転数を上げるため
- 始動トルクを増すため
- 始動電流を少なくするため
実務での注意
- 回転方向の確認、相順試験、相入替えは、設備を停止・隔離・検電し、図面・作業手順・責任者の指示に従って行います。
- 電動機の始動方式は、電動機巻線、始動器、電源容量、負荷特性、保護協調、始動頻度で決まります。スターデルタ始動を全ての電動機へ適用しません。
- 騒音、振動、異常発熱、異臭、保護装置の動作があるときは、繰り返し再始動せず、定められた点検・記録・連絡手順に従います。
- 消防用設備のポンプ・制御盤は、電動機の一般原理だけで判定せず、設備固有の点検基準、設計図書、保全要領を確認します。
まとめ
- 三相誘導電動機では、三本のうち二本を入れ替えると相順が反転し、回転方向が逆になる。
- 同期速度は
ns=120f/p。周波数に比例し、極数に反比例する。 - 同じ極数なら、50 Hzから60 Hzへの変更は
60/50=1.2、基礎計算では20 %速くなる。 - スターデルタ始動は、始動電流を小さくすることを目的とする。始動トルクとの関係も考える。
- 実設備の結線・周波数変更・始動器設定は、仕様と手順を確認してから扱う。
ここまでの考え方を、問題を解く順番で繰り返すなら、消防設備士「過去問テスト」で時間を測って確認してください。
最新ver.の過去問情報は、青木マーケ(株)noteの消防設備士「過去問テスト」で毎年更新しています。
参考資料
本文の式は基礎モデルまたは問題条件として説明しています。実務では、最新の図面・機器仕様・適用規格および所轄の指導を確認してください。