消防設備士

消防士と消防設備士の違い|「火を消さない消防士」と二人三脚で働く仕事

消防士と消防設備士の違い

著者:青木俊輔(強欲な青木)/青木マーケ(株) 取締役 COO、(株)防災屋 代表取締役 社長、(一社)予防団 共同代表理事(本人確認 2026-10-19)
保有資格:消防設備士(甲種特類・甲種1〜5類・乙種6類・7類)ほか
確認日:2026年10月19日
更新内容:初版

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この記事の結論

消防士は、市町村の消防本部・消防署に勤める地方公務員です。火を消す仕事のほかに、救急・救助、そして火災を未然に防ぐ「予防」の仕事があります。

消防設備士は、建物に付いている消防用設備の工事・整備・点検をする国家資格者で、多くは民間の消防設備会社で働きます。

2つの職業が一番深く関わるのは「予防」の場面です。消防署の予防担当の消防士が建物を検査・指導し、消防設備士が設備を付けたり直したりして、建物を消防法に合う状態にします。青木は書籍『消防設備士0類』(2023年執筆)で、この関係を「二人三脚」と書いています。

消防士と消防設備士の違い(比較表)

消防士 消防設備士
立場 市町村の消防本部・消防署に勤める地方公務員 消防法に基づく国家資格を持つ人。多くは民間の会社員か個人事業主
なり方 自治体の消防職員の採用試験に合格し、消防学校で教育を受ける 消防設備士試験に合格し、免状の交付を受ける(乙種は受験資格なし)
主な仕事 警防(消火)、救急、救助、予防 消防用設備の工事・改修・点検、消防署への届出
職場 消防署、火災・事故の現場 お客様の建物、工事現場
勤務 災害現場へ出動する部隊(消火・救急など)は24時間勤務の交替制。予防などの部署は日勤(毎日勤務)が多い(書籍 第1章、神戸市の採用案内) 日勤が中心(会社による)

消防本部・消防署は市町村が設け、消防職員は市町村長の承認を得て消防長が任命します(消防組織法第9条・第11条・第15条)。地方公務員法にも消防職員についての定めがあります(第52条第5項)。採用後の消防学校での教育や勤務の形は自治体によって違います。例えば神戸市では、採用された全員が全寮制の消防学校に6か月間入校し、災害現場へ出動する隊員は3つの係が交替で24時間勤務をする「3交替制」です(神戸市「消防学校」、神戸市「勤務体制・福利厚生」、2026年10月22日確認)。

消防設備士試験の受験資格や試験の内容は消防試験研究センターで確認できます(2026年10月18日確認)。消防士が地方公務員であることは「消防士は国家公務員?それとも地方公務員?」で解説しています。

消防士の仕事は4種類

書籍では、消防士の仕事を次の4つに分けて説明しています(書籍 第1章)。

  1. 警防:火災の現場で火を消す
  2. 予防:火災を未然に防ぎ、起きたときの被害を小さくする
  3. 救急:救急車で救命活動をする
  4. 救助:事故や災害で取り残された人を助ける

多くの人が思い浮かべる「消防士」は、警防・救急・救助の仕事でしょう。一方、予防の仕事は火災現場には行かない「火を消さない消防士」の仕事です。青木が仕事で関わる予防担当の消防士に聞くと、消防士になる前は予防課を知らなかった、という人が多いそうです(書籍 第1章)。

強欲な青木
消防士って、みんな火を消しに行くんちゃうの?
予防担当の消防士は、火災現場に行きません。仕事で関わる予防担当の消防士に「消防士になる前に予防課を知っていましたか?」と聞くと、だいたい「知りませんでした…」と返ってきます。
消防設備士

予防担当の消防士と消防設備士の関わり

予防担当の消防士は、主に次の仕事をしています(書籍 第1章)。

  • 建物への立入検査と、消防用設備の設置・維持についての指導
  • 消防用設備の届出書類の受付と審査
  • 設備を付けたあとの検査(いわゆる消防検査)

消防設備士の側から見ると、次のような流れで関わります。

場面 予防担当の消防士 消防設備士
工事の前 着工の届出を受け付ける 甲種消防設備士が、工事に着手する10日前までに届け出る(消防法第17条の14)
工事のあと 設置の届出を受け、検査をする 建物の関係者の届出(消防法第17条の3の2)にあわせて、書類づくりや検査の立会いを担うことが多い(書籍 第3章)
点検 点検結果の報告を受け付ける 建物の関係者に代わって点検をする(報告義務は建物の関係者。消防法第17条の3の3)
立入検査のあと 不備を指導する 指導を受けた建物の関係者から、改修や点検を依頼される
消防署の予防担当(消防士)が建物の関係者に立入検査・指導を行い、建物の関係者が消防設備士に工事・点検を依頼し、消防設備士が着工の届出を、建物の関係者が設置の届出と点検結果の報告を予防担当に出し、予防担当の消防検査に消防設備士が立ち会う、という三者の関係を示した図

予防担当の消防士には、専門的な知識を持つ人を認定する「予防技術資格者」の制度もあります。検定は防火査察・消防用設備等・危険物の3区分です(平成17年消防庁告示第13号、総務省消防庁、2026年10月18日確認)。

強欲な青木
消防設備士と消防士って、どういう関係なん?
火災予防という共通の目的を、協力して達成するビジネスパートナーです。商売人目線で言うと、予防担当者が行政指導をしてくださるおかげで、依頼が来るという面もあります。
消防設備士

書籍で青木が書いた「予防の時代」

書籍で青木は、緊急事態に活躍する消防士と違い、予防の仕事は目立たないものの、そもそも火災を起こさない方が価値がある、と書いています。友人の消防士たちも「これからは予防の時代」と言っている、とも書いています(書籍 第1章。2023年執筆時の考え)。

そのうえで、予防担当の消防士にとって「話が分かる玄人」でありたい、というのが、消防設備士としての青木の考えです(同)。

消防設備士は、民間にいる予防担当者だと思っています

強欲な青木
予防の仕事って、地味で大変そうやな…
窓口でクレーマー気質の市民と揉めている予防担当の消防士を見たことがあります。民間なら「そんな方は客じゃない」と断れますが、消防士はそうはいきません。私にはできないなと思って尊敬しています。予防は、人命救助の最前線なんです。
消防設備士

消防士から消防設備士へ、という道

書籍で青木は、消防学校で社会人と消防の基礎を学んだ人に、もっと民間の消防設備業界に来てほしい、と書いています。特に予防の部署で身に付けた法令の知識は、民間でも活かしやすい、という考えです(書籍 第1章。2023年執筆時の考え)。

予防の部署にいる消防士の皆さんには、自分たちの法令の知識をもっと誇ってほしいです

活かせる経験、入ってから学び直すこと、求人で確かめることなど、転職の詳しい話は「消防士から消防設備士への転職を考える」で解説しています。

青木は今、消防士と消防設備士の関係を「火災予防という共通の目的を、協力して達成するビジネスパートナー」と表現しています(本人回答、2026年10月)。

よくある質問

消防士が消防設備士の資格を取ることはできますか

できます。消防設備士試験は、乙種なら受験資格はありません。甲種は、国家資格・学歴・実務経験などの受験資格があります(消防試験研究センター 受験資格、2026年10月18日確認)。

消防設備士は消防署で働くのですか

いいえ。消防設備士の多くは民間の消防設備会社で働き、消防署には書類の提出や検査の立会いで行きます。職場はお客様の建物です。

消防士が副業で消防設備士の仕事をしてもよいですか

消防士は地方公務員なので、自由に副業はできません。地方公務員法第38条第1項では、職員は任命権者の許可を受けなければ、営利企業の役員などを兼ねたり、自ら営利企業を営んだり、報酬を得て事業や事務に従事したりしてはならない、と定めています。許可の基準は、各自治体の人事委員会規則などで定めることができます(同条第2項)。

つまり、消防設備士の免状を持っていても、消防士のまま報酬を得て点検や工事の仕事をするには、勤め先の自治体の許可が必要です。許可の基準や手続きは自治体によって違うので、まず所属の人事担当に確認してください(地方公務員法、2026年10月19日確認)。

強欲な青木
免状を取ったら、休みの日に点検のアルバイトしようと思ってたんやけど…
消防士は地方公務員なので、報酬を得て働くには任命権者の許可が必要です。まずは職場の人事担当に確認してください。
消防設備士

消防士を辞めて消防設備士として働く場合の話は「消防士から消防設備士への転職を考える」、消防設備士の副業を始める前に確かめることは「消防設備士の副業を始める前に」で解説しています。

次に読む

消防士と消防設備士の関係、予防担当の消防士の仕事は、書籍『消防設備士0類』の第1章「知らなきゃ損! 火を消さない消防士と消防設備士」で詳しく書いています。本は2023年に書いたもので、統計の数字や著者の肩書きなど現在と違う点があります(紹介ページ)。

参考文献

  • この記事を書いた人

aokimarke

平成元年生まれ
消防設備士12年目の経営者

【◎経 歴】
鈴鹿高専 ⇨ 静岡大学(3年次編入)⇨ 院 ⇨ 鈴与㈱ ⇨ 消防設備士など

【◎免 許】
消防設備士全類、危険物取扱者全類、第二種電気工事士、工事担任者(AI・DD総合種)、電験三種、予防技術検定(消防用設備等)など

【◎活 動】
月刊誌:電気と工事(オーム社)にてコラム執筆、消防設備士「過去問テスト」および予防技術検定「過去問テスト」の制作・販売、YouTubeチャンネル「強欲な青木&消防設備士」の動画作成・編集、青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団など

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