著者:青木俊輔(強欲な青木)/青木マーケ(株) 取締役 COO、(株)防災屋 代表取締役 社長、(一社)予防団 共同代表理事(本人確認 2026-10-19)
保有資格:消防設備士(甲種特類・甲種1〜5類・乙種6類・7類)、危険物取扱者(甲種・乙種全類)ほか
確認日:2026年10月19日
更新内容:初版
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この記事の結論
ビルメン(ビルメンテナンス業)は、建物の清掃・衛生・設備・警備などを幅広く管理する仕事です。消防設備士は、そのうちの「消防用設備」に絞って、工事・点検・改修をする仕事です。ビルメンが一つの建物を広く見るのに対し、消防設備士は消防用設備を深く扱い、多くの建物を回るのが大きな違いです。
ビルメンの仕事をするのに、消防設備士の免状が法律で必ず要るわけではありません。ただし、消防用設備の整備には免状が必要なものがあり(消防法第17条の5)、一定の建物の点検は消防設備士か消防設備点検資格者でなければできません(消防法施行令第36条第2項)。青木は、ビルメンテナンスをするなら消防設備の資格は持っておいたほうがよい、と話しています。
どちらを選ぶかは、「建物全体を広く見たいか」「消防の設備を深く扱いたいか」で考えると判断しやすくなります。
ビルメンとは:建物の管理を幅広く担う仕事
厚生労働省の職業能力評価基準では、ビルメンテナンス業の仕事を「清掃管理」「衛生管理」「設備管理」「管理サービス」「保安管理」などに分け、業務の内容が多岐にわたるとしています(厚生労働省「職業能力評価基準 39 ビルメンテナンス業」)。
一般に「ビルメン」と呼ばれるのは、このうち設備管理(電気・空調・給排水などの設備の運転・点検・保守)を担う人を指すことが多いです。
大きな建物には、法律で決まっている管理もあります。たとえば、店舗や事務所などに使う延べ面積3,000㎡以上の建物(特定建築物)では、建物の所有者などが「建築物環境衛生管理技術者」を選ばなければなりません(建築物における衛生的環境の確保に関する法律 第6条、同法施行令 第1条)。
消防設備士とは:消防用設備に絞って深く扱う仕事
消防設備士は、消防法にもとづく国家資格です。屋内消火栓設備、スプリンクラー設備、自動火災報知設備、救助袋などの工事や整備の一部は、免状を持つ人にしかできません(消防法第17条の5、消防法施行令第36条の2)。仕事内容の詳細は「消防設備士の仕事内容」で解説しています。
青木は、消防設備業界を「建設業とビルメンテナンス業が合わさったような業態」と説明しています。新しく設備を付ける工事は建設業、点検やメンテナンスはビルメンテナンス業(サービス業)にあたり、点検と工事の割合は会社によって全く違う、という見方です(YouTube「消防設備業界の業界構造とは」2025年9月公開)。
ビルメンと消防設備士の比較
| ビルメン(設備管理) | 消防設備士 | |
|---|---|---|
| 扱う範囲 | 建物の電気・空調・給排水・清掃・衛生など、建物全体 | 消防用設備(消火・警報・避難の設備)に絞る |
| 仕事の中心 | 設備の運転・点検・保守、不具合の一次対応、業者との調整 | 消防用設備の工事・点検・改修、消防署への届出や検査の立会い |
| 働く場所 | 担当する建物(常駐する働き方もある) | お客様の建物を回る。点検の日は複数の建物に行くことも多い |
| 法律で決まっている独占業務 | 職種そのものの独占業務はない(特定建築物の衛生管理技術者の選任など、建物側の義務はある) | 一定の消防用設備の工事・整備(消防法第17条の5)。着工届は甲種のみ(同第17条の14) |
| よく話題になる資格 | 冷凍機械・ボイラー・危険物などの資格(青木の動画での説明) | 消防設備士(甲種・乙種、特類・1〜7類)、消防設備点検資格者 |
| 深さと広さ | 広く見る | 消防の分野を深く扱う |
働き方については、書籍『消防設備士0類』に、建物から建物への車での移動が長いことや、現場作業のあとに事務所で報告書を作る日があることを、消防設備士の仕事の特徴として書いています(書籍 第3章。2023年執筆時の経験)。ビルメンの働き方は、勤務する会社や建物によって大きく違います。
aokimarke.com で以前紹介した、大手ビルメン会社に勤める20代の方(消防設備士を持っている方)は、常駐管理で点検や工事をしていて、ビルメンの仕事を「良くも悪くも広く浅く」と表現していました(「ビルメン勤務の24歳(消防設備士持ち)が転職活動をした結果」2022年11月。個人の体験談です)。
ビルメンに消防設備士は必要?
法律で必要になる場面
ビルメンの仕事をすること自体に、消防設備士の免状は要りません。必要になるのは、次のような作業を自分でする場合です。
| 作業 | 必要な資格 | 根拠 |
|---|---|---|
| 屋内消火栓設備・スプリンクラー設備・自動火災報知設備などの整備(軽微なものを除く) | その類の消防設備士(甲種または乙種) | 消防法第17条の5、施行令第36条の2第2項 |
| 消火器の整備 | 乙種6類 | 同上 |
| 上の設備の工事(設置に係るもの) | その類の甲種消防設備士 | 同上 |
| 延べ面積1,000㎡以上の特定防火対象物などの点検 | 消防設備士または消防設備点検資格者 | 施行令第36条第2項 |
これ以外の建物では、建物の関係者が自ら点検することもできます(消防法第17条の3の3)。
青木の考え:ビルメンをするなら持っておいたほうがよい
青木は動画で、ビルメンでよく話題になる資格のセット(冷凍機械・ボイラー・危険物など)には消防設備士は含まれていないものの、ビルメンテナンスをするなら消防設備の資格は持っておいたほうがよい、と話しています(YouTube「消防設備業界の業界構造とは」2025年9月公開)。
ビルメンで働く人は、消防設備士の何類を取る?
検索では「ビルメン 消防設備士 どれ」「乙4」「乙6」がよく一緒に調べられています。類ごとに扱える設備は次のとおりです(消防法施行規則第33条の3)。
| 類 | 主な設備 | 乙種でできること |
|---|---|---|
| 6類 | 消火器 | 整備(点検を含む) |
| 4類 | 自動火災報知設備、ガス漏れ火災警報設備、消防機関へ通報する火災報知設備 | 整備(点検を含む) |
| 7類 | 漏電火災警報器 | 整備(点検を含む) |
| 1類 | 屋内消火栓設備、スプリンクラー設備など | 整備(点検を含む) |
注意したいのは「乙4」という呼び方です。危険物取扱者の「乙種第4類」(ガソリン・灯油など)と、消防設備士の「乙種第4類」(自動火災報知設備など)は、別の資格です。ビルメンでよく話題になる「乙4」は危険物取扱者のほうを指すことが多いので、求人や資格手当の条件を見るときは、どちらの乙4かを確かめてください。
消防設備士を初めて受ける人に、青木は乙種6類から始めて、第二種電気工事士を取り、甲種4類へ進む順番をすすめています。詳しい理由は「消防設備士はどれから受けるべき?」で解説しています。
ビルメンで働いている人なら、まず受験資格のいらない乙種第6類で消防設備士の試験に慣れて、そのあと担当している建物にある設備の類(自動火災報知設備なら第4類)へ進むのがいいと思います。取った資格を、すぐに自分の現場で使えるからです。
講習で取れる「消防設備点検資格者」との違い
点検だけなら、講習と修了考査で取れる消防設備点検資格者という資格もあります。受講には、消防設備士・電気工事士などの資格や実務経験などの条件があります(一般財団法人日本消防設備安全センター「消防設備点検資格者講習」)。
青木は、講習で取れる資格から入ってすぐ戦力になる道もあるとしたうえで、「消防設備士として働くなら消防設備士はマスト」と答えています(本人回答、2026年10月)。2つの資格の違いは「『消防設備点検資格者』より『消防設備士』な理由3つ」でも解説しています。ビル管理(建築物環境衛生管理技術者)など講習で取れる資格の選び方は、青木の公式サイトの記事でまとめています(講習で取得できる資格の選び方(aoki-of-greed.com))。
ビルメンから消防設備の会社へ、またはその逆を考えるとき
会社が「建設寄り」か「ビルメン寄り」かを確かめる
青木は以前の記事で、消防設備会社に就職・転職するときは、その会社が「建設業」の色が強いのか「ビルメンテナンス業」なのかで、業務内容や給与を含む待遇が違うので、事前に調べておいたほうがよいと書いています(国家資格「消防設備士」について消防設備業界で働くプロが徹底解説!、2022年)。
どう調べるかについては、会社によって工事が中心か点検が中心か、どんなお客様がいるかで仕事内容も年収も変わるので、できればそこで実際に働いている人に話を聞き、その情報を、フィードバックできる消防設備士に判断してもらうのがよい、というのが青木の考えです(本人回答、2026年10月)。
業界の構造も知っておく
建設現場では、消防設備の業者はゼネコン・サブコンや電気・衛生の設備業者の下に入ることが多く、立場が弱くなりがちです。青木は書籍で、建設現場の上下関係が嫌で、元請け側へ転職する人もいると書いています(書籍 第3章。2023年執筆時の記述)。
ビルメンテナンスの側では、警備会社がビルの管理をまとめて請けて、その下に設備の会社が入る構造もある、と青木は動画で説明しています(YouTube「消防設備業界の業界構造とは」2025年9月公開)。業界の構造と、それを踏まえた会社選びのポイントは、青木の公式サイトの記事で詳しく解説しています(消防設備業界の構造を知る(aoki-of-greed.com))。
青木の考え
建物全体を広く見る仕事が好きならビルメン、消防の設備を深く極めて、工事まで自分で仕上げたいなら消防設備士が向いていると思います。どちらが上ということはありません。ビルメンから消防設備の会社へ移ってくる人は、建物全体を見てきた経験が、そのまま強みになります。
次に読む
- 消防設備士の仕事内容(/setsubishi-shigoto/)
- 消防設備士はどれから受けるべき?(/jyunban/)
- (消防設備会社の選び方|求人票では分からない見極めの観点)
- (未経験から消防設備士になるには|入社前に取る資格と最初の1年)
消防設備士の仕事と業界の仕組み、建設現場での立場の弱さは、書籍『消防設備士0類』の第1章と第3章で書いています。本は2023年に書いたもので、ビルメンとの比較は書籍には載っていません。業界の状況は現在と違う点があります(紹介ページ)。
(別枠)消防設備の仕事に転職を考えている方へ:(株)防災屋では消防設備士を募集しています。採用情報を見る
参考文献
- 厚生労働省「職業能力評価基準 39 ビルメンテナンス業」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_09767.html 確認日:2026年10月19日
- 建築物における衛生的環境の確保に関する法律(昭和四十五年法律第二十号)第2条、第6条、e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC1000000020 確認日:2026年10月19日
- 建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行令(昭和四十五年政令第三百四号)第1条、e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/345CO0000000304 確認日:2026年10月19日
- 消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第17条の3の3、第17条の5、第17条の14、e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC1000000186 確認日:2026年10月19日
- 消防法施行令(昭和三十六年政令第三十七号)第36条第2項、第36条の2、e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/336CO0000000037 確認日:2026年10月19日
- 消防法施行規則(昭和三十六年自治省令第六号)第33条の3、e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/336M50000008006 確認日:2026年10月19日
- 一般財団法人日本消防設備安全センター「第1種・第2種消防設備点検資格者講習 受講の手引き」https://www.fesc.or.jp/jukou/setsubi/kousyu/tebiki1.html 確認日:2026年10月18日(台帳 Q19)
- 青木俊輔『消防設備士0類 〜消防設備士をする前に読む本〜』改訂版、電子書籍(Amazon Kindle)、本文2023年。第1章、第3章。確認日:2026年10月19日
- YouTube「強欲な青木&消防設備士」【👮♂️SEC◯Mの下請け業界】建設業界とビルメンテナンス業界のハイブリッド?消防設備業界の業界構造とは、2025年9月29日公開 https://www.youtube.com/watch?v=G0i5W4PU9g0 確認日:2026年10月19日
- 同【🪪難関資格も】講習を受講するだけで取れる国家資格ランキング、2026年2月25日公開 https://www.youtube.com/watch?v=2zzXManna0Q 確認日:2026年10月19日