2020年12月22日に名古屋市のホテルにある機械式駐車場にて二酸化炭素消火設備が作動し、50代の男性作業員が死亡する痛ましい事故が起こりました。
本来、大切な人の命を火災から救う為に設置されている機器が、結果的に人の命を奪ってしまったことが残念でなりません。
本件について、作動した二酸化炭素消火設備を含むガス系消火設備の工事・整備等を行う為の免状である ”甲種3類消防設備士” 有資格者であり、実務に携わる消防設備士としての見地から解説していきます。
多くの方がガス系消火設備について知り、同じ悲劇が二度と繰り返されない様な世の中になることを切実に願います。
【追記】具体的な対策案について、まとめましたので併せてご覧下さいませ(2021.4.16)。
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【注意喚起!】二酸化炭素消火設備の誤操作による死亡事故への対策案
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実機でつなぐ:起動装置・容器弁・選択弁の働き
系統図を覚えるときは、線をひとまとめにせず、「電気信号」「弁を動かす操作ガス」「放射する消火剤」の3つに分けて追いましょう。実機の外観とつなげると、鑑別でも製図でも、機器の名称だけでなく役割を説明できます。

手動起動装置。動画では、扉を開ける操作と起動ボタンを押す操作を区別して説明しています。(青木マーケ㈱・1分49秒の実写/画像を押すと拡大)
扉を開けると警報が始まることと、起動ボタンの操作で放出のための信号を出すことは別です。扉を開けただけで直ちに消火剤が出る、と覚えてはいけません。警報・遅延などの機能は、放射前に人が退避するための仕組みです。

起動用の小さい二酸化炭素容器は緑色。消火剤を貯蔵する大きい容器と、目的を区別します。(青木マーケ㈱・2分14秒の実写/画像を押すと拡大)
この実機では、電気信号で電磁開放装置が働き、起動用ガス容器から出たガスが細い操作管を通ります。そのガス圧で、容器弁や選択弁の作動部を動かします。操作管は「弁を動かすガス」を送る管であり、防護区画へ消火剤を送る主配管とは役割が違います。

選択弁。弁本体、上部の作動部、細い操作管、消火剤の通る配管を別々に見ます。(青木マーケ㈱・3分51秒の実写/画像を押すと拡大)
選択弁は、共用する貯蔵容器の消火剤を、放射する区画側へ導くための弁です。「どう動くか」はガス圧と作動部、「どこへ送るか」は区画へつながる配管を見ると説明できます。写真の色や球状の外形だけを、すべての選択弁に共通する条件として暗記しないでください。
| 経路 | 運ぶもの・役割 | 実技で見るポイント |
|---|---|---|
| 電気信号の経路 | 起動・警報・状態表示などの信号 | 起動装置、制御盤、電磁開放装置のつながり |
| 操作ガスの経路 | ガス圧で弁などの作動部を動かす | 起動用ガス容器と細い操作管の接続先 |
| 消火剤の経路 | 貯蔵した消火剤を噴射ヘッドへ送る | 容器弁、集合管、選択弁、区画への配管 |
設備を操作するための手順ではありません。二酸化炭素の放射は人命に関わります。区画内に立ち入って作業する際の安全措置では、閉止弁を閉じることと自動・手動切替えを手動にすることを、別々の措置として確認する必要があります。閉止弁だけ閉じれば安全、と読み替えないでください。現場では設備に精通した消防設備士等が関与し、必要な措置を講じます。消防庁の安全対策も確認してください。
実写・説明の出典:青木マーケ㈱の実機講義動画。以下は動画の説明を教材向けに整理したもので、発言の逐語引用ではありません。外観・配置は撮影した実機の例です。
実機記事で、起動から放射までをつないで読む
器具を順に見たい方は、強欲な青木「実機で学ぶ不活性ガス消火設備|起動から放出まで」へ。青木マーケ㈱の実機講義を、手動起動装置・起動用ガス容器・容器弁・選択弁・噴射ヘッド・制御盤の写真と説明で読み直せます。
- 手動起動装置では、扉を開けて警報を始めることと、放出へ進む信号を出すことを分けて確認します。
- 細い操作管と消火剤の配管は、送るものと接続先が違います。容器弁・集合管の写真でそれぞれの役割を追います。
- 天井の噴射ヘッドとスピーカーは、形が似ていても用途が違います。ガスを出す器具と避難を知らせる器具を区別します。
実機記事を読んだ後は、下の鑑別問題で名称・設置目的・作動させる力を説明できるか確かめてください。器具単体の知識を、電気信号・操作ガス・消火剤の3つの経路へつなげる練習になります。
筆記で学んだ働きを、実技で説明する
長崎の実技問題:選択弁の名称・設置目的・ガス圧による作動では、「何を選ぶ弁か」と「何の力で動くか」を答え分けます。解答後の実写解説から、この仕組みの説明へ戻れます。
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【過去問】消防設備士甲種3類@2022/01/30長崎【令和4年】
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東京の実技問題:容器弁と開放装置では、容器を閉じる部品と、その部品を動かす装置を区別します。部品名を覚えたら、上の3つの経路で機能を確認しましょう。
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【過去問】消防設備士甲種3類@2022/01/30東京【令和4年】
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【解説】二酸化炭素消火設備の誤作動について
◎ 二酸化炭素消火設備とは‥
二酸化炭素消火設備はガス系消火設備の一つで、主に窒息消火(燃焼時に必要な酸素の供給を絶つ)によって防護区画内の炎を消すものです。
ガス系消火設備とは‥
ガス系消火設備には大きく、不活性ガス消火設備とハロゲン化物消火設備があります。
その不活性ガス消火設備に用いられる消火用ガスとして、二酸化炭素や窒素が該当します。
二酸化炭素消火設備と比較して危険性が少ないことやコストが低いことからハロゲン化物消火設備が主流となっていました。
しかし近年、ハロンガスが成層圏のオゾン層を破壊するとの理由から世界的に製造を中止することとなった為、再び二酸化炭素消火設備が注目を浴びています。
以下に、主なガス系消火設備の構成機器を挙げていきます。
消火用ガスボンベ
消火用ガスの充てんされたボンベです。

防護区画
消火用ガスが噴射される区画のことで、酸素濃度を下げる為に作動時は開口部が閉鎖されます。

実写で理解する:開口部を閉じる理由とダンパーの復帰装置

青木マーケ㈱の実機講義・6分48秒付近の場面。上は手動起動装置、下はダンパー復帰装置です。画像を押すと拡大できます。
全域放出方式では、防護区画に必要な消火剤濃度を確保することが重要です。開口部からガスが流出したり、換気で外気が流入したりすると、消火に必要な状態を保ちにくくなります。換気停止と自動閉鎖は、容器からガスを出す機能とは別に、この区画側の条件を整える働きです。
手動式の起動装置につながる制御盤は、放出開始信号を受けた後に換気停止・自動閉鎖の信号を送り、必要な遅延時間を経て弁の開放信号を送ります。ただし、遅延中に放出停止の信号を受けた場合は、容器弁・選択弁へ開放信号を送りません。「ボタンを押したら、区画の状態に関係なく即座に放射する」とは覚えません。制御盤の基準・第四第二号。
写真の下にある箱は、ダンパーを作動後に戻す復帰装置の例です。上の手動起動装置とは用途が違います。動画のレバー操作は当該展示の説明であり、すべての設備に共通する復旧手順ではありません。放射後にレバーを戻せば安全に入れる、という意味にもなりません。
二酸化炭素の開口部の条件は、高さだけでなく、消火効果・保安上の危険・未閉鎖開口の面積などを併せて判断します。窒素・IG-55・IG-541では、放射前に閉鎖できる自動閉鎖装置を設ける条件です。「二酸化炭素は重いから、上の開口部は無条件に残せる」と動画を一般化しないでください。消防法施行規則第19条第5項第4号。
学んだ仕組みを実技で使うなら、東京の鑑別⑤:配線の種類へ。回路の接続先を、弁を動かす操作管や消火剤の配管と分けて読みましょう。
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【過去問】消防設備士甲種3類@2022/01/30東京【令和4年】
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区画の条件を薬剤量の計算へつなげるなら、東京の製図②:全開口部に自動閉鎖装置がある例と、長崎の製図①:閉鎖しない開口部がある粉末設備の例を比較してください。消火剤が異なるため、加算係数をそのまま使い回してはいけません。
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【過去問】消防設備士甲種3類@2022/01/30長崎【令和4年】
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この説明は動画を教材向けに整理したもので、発言の逐語引用ではありません。区画の濃度維持と換気設備の連動については、消防庁のガス系消火設備等に関する留意事項・2(2)も確認できます。
音声警報装置
ガス系消火設備の起動がかかった際、消火用ガス噴射までに防護区画から避難するようにアナウンスするもの。

ガス噴射ヘッド
消火用ガスが噴射されるヘッドです。

制御盤
大元の制御盤、ガス噴射エリアの確認や起動・停止操作が可能です。

感知器
火災を感知して、自動でガス系消火設備を起動させる為のもの。

手動起動装置
防護区画のガス系消火設備を手動で起動させる為のもの。

◎ 原因は手動起動装置の誤操作
以下の内容が、FNNプライムオンラインより報道されました。
消火設備が作動した原因について、警察と消防が調査を進めているが、亡くなった玉田さんとは別の男性作業員が、駐車場の出入り口付近にある作動ボタンを誤って押したとみられることが捜査関係者などへの取材で新たにわかった。
◎ 同じ悲劇を繰り返さない為に‥
二度と同じことが起こらない様に、以下の事項について知って頂きたいです。
ガス系消火設備は危険!
ガス系消火設備が起動した際、防護区画内にいると命を落とします。

濃度の高い二酸化炭素は猛毒であり、一度吸い込むだけで死に至る可能性があります。

音声警報が鳴ったら避難する
ガス系消火設備が放出されても、車や貴重品類は一切汚損しません。

自分の命を最優先にして、大切な人と同伴されている際は共に速やかな避難をされて下さい。
設備を熟知した者が立ち会う
当該事故を受けて通知された令和2年12月23日 消防予第410号「二酸化炭素消火設備の放出事故の発生について」にて、以下の文言が謳われています。
今般の事故を踏まえ、二酸化炭素消火設備が設けられている付近で他の設備機器の設置工事、改修工事又はメンテナンスが行われる場合には、誤作動や誤放出を行わせないよう第三類の消防設備士又は二酸化炭素消火設備を熟知した第一種の消防設備点検資格者が立会うこと‥
以上、消防用設備等の中でも聞き慣れないであろうガス系消火設備の仕組みを簡潔に説明しました。
二度と死亡事故が起こらないよう、特にガス系消火設備が設置されている場所に立ち入られる方々は注意して下さい。
【追記】具体的な対策案について、まとめましたので併せてご覧下さいませ(2021.4.16)。
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【注意喚起!】二酸化炭素消火設備の誤操作による死亡事故への対策案
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◎ まとめ
- 機械式駐車場にて二酸化炭素消火設備が作動して50代の男性作業員が死亡する痛ましい事故が起こり、大切な人の命を火災から救う為に設置されている機器が、結果的に人の命を奪ってしまった。
- 作動した二酸化炭素消火設備を含むガス系消火設備の工事・整備等を行う為の免状である ”甲種3類消防設備士” 有資格者であり、実務に携わる消防設備士としての見地から同じ悲劇が二度と繰り返されない為に広報した。
- 二酸化炭素消火設備が作動した原因は、別の男性作業員が、駐車場の出入り口付近にある作動ボタンを誤って押したとみられることが報道されていた。