このページを見たら、機械基礎を量・式・単位の順に説明できるはず!
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消防設備士2類 過去問講義
このページの対象と到達目標
このページは、消防設備士試験で出会う「力のかかり方」「部材に生じる応力」「安全率」「仕事と動力」を、計算の意味から整理する講義ページです。公式を暗記する前に、何を力として扱い、どの面積で割り、どの単位でそろえるかを理解することを目標にします。
読み終えたときに、次のことができれば十分です。
- 引張・圧縮・せん断を、部材がどう変形しようとしているかで説明できる。
- 応力を
σ = F / Aで求め、N/mm²とMPaを同じ大きさとして扱える。 - 安全率は「余裕の大きさ」であり、許容応力を決める際の前提の一つだと説明できる。
- 仕事、仕事率、ポンプ動力を、力・距離・時間・効率のつながりで追える。
- kg、N、W、kW、L/min、m³/s を混ぜずに、途中式から単位を確認できる。
設計値や施工時の可否は、このページだけで決めません。実設備は図面、仕様書、適用法令・規格、メーカー資料および責任者の判断で確認します。

まず「力」と「応力」を分けて考える
力 F は、物体を押す・引く・切る・曲げる原因です。単位はニュートン N です。同じ 10,000 N の力でも、太い棒にかかる場合と細い棒にかかる場合では、材料の中に生じる厳しさが異なります。この「断面の広さを考慮した厳しさ」が応力です。
σ = F / A
σ:応力F:断面に伝わる力[N]A:その力を受ける有効断面積[mm²]または[m²]
断面積を mm² で使うなら、応力は N/mm² で出ます。これは MPa と等しい関係です。
1 N/mm² = 1 MPa
式に数値を入れる前に、「力は N か」「断面積は mm² か」を紙の余白に書く習慣をつけてください。計算の間違いの多くは、割り算そのものではなく、単位と断面の取り違えから起こります。
説明値:応力を式と単位で確かめる
断面積 600 mm² の部材に、軸方向の力 12,000 N が一様に作用する場面を考えます。これは公式の使い方を示す説明値であり、試験問題ではありません。
σ = 12,000 N / 600 mm² = 20 N/mm² = 20 MPa
この結果は「20 MPa の応力が生じる」という意味です。材料が安全かどうかは、ここからさらに材料の性質、許容値、荷重の変動、接合部、腐食などを確認して判断します。
力の向きから、応力の種類を見分ける
力の名前を丸暗記するより、「部材の両端をどう動かそうとしているか」を思い浮かべると整理しやすくなります。
| 種類 | 力のかかり方 | 部材に起こりやすい変形 | 確認の視点 |
|---|---|---|---|
| 引張 | 両端を外向きに引く | 伸びる | 細くなる断面、吊り材、ボルト軸 |
| 圧縮 | 両端を内向きに押す | 縮む、座屈することがある | 短柱・支持部材、偏心荷重 |
| せん断 | 近接する面を逆向きにずらす | 切れるようにずれる | リベット、ボルト、ピン、せん断面 |
| 曲げ | 中央を押すなど、部材をたわませる | 片側が引張、反対側が圧縮 | はり、支持点、荷重位置 |
| ねじり | 軸のまわりに回そうとする | 断面がねじれる | 軸、ハンドル、回転部 |
引張応力と圧縮応力
棒をまっすぐ引けば、断面には引張応力が生じます。逆に、同じ軸方向から押せば圧縮応力です。どちらも基本式は σ = F / A ですが、圧縮では、材料の強さだけでなく部材の長さや固定状態による座屈が重要になることがあります。短い部材の単純な圧縮計算を、そのまま細長い支柱へ当てはめないことが大切です。
せん断応力
せん断は、紙をはさみで切るときのように、面を横方向へずらす作用です。二枚の板を接合するリベットやピンでは、引っ張る力により接合部の断面がずれる方向へ力を受けます。見た目は「引張っている」場面でも、接合要素の断面にはせん断応力が生じることがあります。
このときも基本は、せん断力をせん断面積で割る考え方です。ただし、実設計では単せん断・複せん断、穴周辺の支圧、端あき、材料や規格などの条件が加わります。基礎計算の式だけで接合部を決めないでください。
安全率と許容応力:余裕を数字にする考え方
材料が一度に破断しなければ安全、とは限りません。繰り返し荷重、衝撃、腐食、加工ばらつき、温度、施工状態などにより、余裕を見込む必要があります。そこで、材料の基準となる強さに安全率を考慮して、使用時に許す応力を小さく設定する考え方を用います。
学習上の基本形は次のとおりです。
許容応力 = 基準となる強さ / 安全率
安全率が大きいほど、許容応力は小さくなります。安全率は単に「大きいほど良い」と決める数字ではなく、用途・荷重の性質・材料・使用環境・適用規格に基づいて定められるものです。
説明値:安全率を通して許容応力を見る
仮に基準となる強さを 300 MPa、安全率を 3 として扱うなら、学習上の許容応力は次のようになります。
300 MPa / 3 = 100 MPa
これは「100 MPa 以下なら実設備でも必ず安全」と示す値ではありません。どの強さを基準にするか、何を安全率に含めるかは、適用する設計条件によって変わります。ここでは、強さから余裕を差し引く方向を理解するための説明値として扱います。
仕事と仕事率:距離と時間を加える
力を加えて物体を移動させると、仕事をしたことになります。力と移動方向が同じとみなせる基礎的な場面では、仕事 W は次式で表せます。
W = F × s
W:仕事[J](ジュール)F:力[N]s:移動距離[m]
1 J = 1 N・m です。ここに時間 t を加えると、単位時間当たりの仕事、すなわち仕事率(動力)になります。
P = W / t = F × s / t
P:動力[W]t:時間[s]
同じ重さを同じ高さまで持ち上げても、短い時間で行うほど必要な動力は大きくなります。ここが「仕事」と「動力」の決定的な違いです。
説明値:時間を含めて動力に変換する
1,200 N の力で物体を 6 m 動かし、12 s かかったとします。
W = 1,200 × 6 = 7,200 J
P = 7,200 / 12 = 600 W = 0.600 kW
途中で N・m を J に、最後に W を kW に読み替えると、計算の意味を見失いにくくなります。
ポンプ動力は「水をどれだけ、どこまで上げるか」から追う
水を送るポンプでは、流量 Q、揚程 H、水の密度 ρ、重力加速度 g、効率 η を使って考えます。水に与える水力は次の形です。
P_h = ρgQH
ポンプ入力側の動力を考えるときは、効率を考慮して次のように表します。
P_in = ρgQH / η
P_h:水に与えられる水力[W]P_in:効率を見込んだ入力側動力[W]ρ:密度[kg/m³]。水の近似値として1,000 kg/m³を用いることがある。g:重力加速度[m/s²]。計算条件に応じて9.8または9.80665を用いる。Q:流量[m³/s]H:揚程[m]η:効率。百分率で示されていれば小数へ直してから使う。
説明値:SI単位でポンプ動力を追う
流量を 0.008 m³/s、揚程を 18 m、効率を 0.70、水の密度を 1,000 kg/m³、重力加速度を 9.80665 m/s² と置きます。
P_in = 1,000 × 9.80665 × 0.008 × 18 / 0.70
= 2,017.4 W
= 2.02 kW(小数第3位を四捨五入)
この例で重要なのは、流量を m³/s にそろえ、効率 70% を 0.70 として割っている点です。効率は掛けるか割るかを、入力側と水側のどちらの動力を求めるかで判断します。入力側動力は、水に与える動力より大きくなるため、効率で割ります。
単位換算を途中で済ませる
| 変換 | 使いどころ | 注意 |
|---|---|---|
1 MPa = 1 N/mm² |
応力 | Pa に直す場合は 1 MPa = 10⁶ Pa |
1 kW = 1,000 W |
動力 | 最後に kW へ直すのか、途中から kW を使うのかを統一 |
1 m³ = 1,000 L |
流量・水量 | L/min をそのまま m³/s の式へ入れない |
1 min = 60 s |
時間・流量 | 分を秒へ直す位置を明記 |
質量 kg と力 N は別 |
吊上げ・動力 | 重力が関係する場面では F = mg を確認 |
流量を変換するなら、例えば 480 L/min は次の順で扱えます。
480 L/min = 0.480 m³/min = 0.480 / 60 m³/s = 0.008 m³/s
変換を一行に詰めず、単位を消していく順番を見せると、桁の誤りを発見しやすくなります。
典型的なミスと、戻る場所
質量をそのまま力として扱う
kg は質量、N は力です。重力による力を求める場面では F = mg が必要です。問題文に「荷重」が書かれているときも、すでに N で与えられているのか、kg から力へ直すのかを確認します。
断面積の単位だけを変え忘れる
直径を mm で計算して面積を mm² にしたのに、応力を Pa として読むと桁がずれます。N/mm² のまま答えるのか、MPa に読み替えるのかを最後に確認してください。
安全率を掛けてしまう
基準となる強さから許容応力を求める基本形では、安全率で割ります。反対に、必要な基準強さを逆算するときは掛ける形になるため、「何を求めているか」を式の前に日本語で書くと混乱を防げます。
効率の 70% を 70 のまま入れる
百分率は 0.70 へ変換します。また、入力側動力を出す式では効率で割るため、効率を掛けて入力側が小さくなっていないかを概算で確かめます。
ポンプの揚程と配管条件を混同する
揚程は高さだけを指すとは限らず、圧力換算や摩擦損失を含めた全揚程として扱う場合があります。設計・点検で使用する値は、配管系統、放水条件、仕様書と照合して確認します。
過去問テスト
次の4問では、力の向き、断面積、時間、単位を順に確認して答えを導きます。
問1 滑車のつり合い
公式問題では図に示された、400 N の重力が働いている物体 A とつり合うための力 F として、正しいものは次のうちどれか。ただし、ロープと滑車の自重及び摩擦損失は、考慮しないものとする。
図の読み取り補助:物体 A は、同じ張力が生じる4本のロープ部分で支えられている。
- 25 N
- 50 N
- 100 N
- 200 N
問2 接合部に生じる応力
公式問題の図のように継ぎ合わせた2枚の鋼板を互いに引っ張った場合、リベットの断面 X-X’ に生じる応力として、正しいものは次のうちどれか。
図の読み取り補助:重ねた2枚の鋼板を左右へ引くと、リベットは板どうしを横方向へずらそうとする力を受ける。
- 引張応力
- 圧縮応力
- せん断応力
- ねじり応力
問3 運動エネルギー
質量10,000 kg のトラックが時速36 km で走っているときの運動エネルギーとして、正しいものは次のうちどれか。
- 250 kJ
- 360 kJ
- 500 kJ
- 720 kJ
問4 圧縮応力と断面積
短い円柱形の軟鋼棒の軸方向に、圧縮荷重50,000 N を加えたとき、圧縮応力が125 MPa であった。この軟鋼棒の断面積として、正しいものは次のうちどれか。
- 250 mm²
- 400 mm²
- 645 mm²
- 800 mm²
実務での注意
- 荷重の大きさだけでなく、荷重の向き、作用点、繰り返し、振動、腐食、温度、支持状態を確認します。
- 接合部は、部材本体と別の壊れ方をします。ボルト・リベット・溶接部を、単純な一本の棒と同じように扱わないでください。
- ポンプ動力の計算では、流量の基準点、揚程の内訳、効率の定義、余裕率の扱いを資料間でそろえます。
- 現場での交換や改修では、計算結果だけで機器能力を判定せず、認定・仕様・施工要領・点検結果と合わせて確認します。
まとめ
応力は「力 ÷ 面積」、仕事は「力 × 距離」、動力は「仕事 ÷ 時間」です。式が似て見えても、扱う量と単位が違います。
- どの力がどの断面に作用しているかを図で考える。
N、mm²、MPa、m³/s、Wを途中式でそろえる。- 安全率と効率は、何を求める式かを確認してから使う。
- 計算結果は、実設備の設計判断ではなく、条件確認の出発点として扱う。
参考文献(一次資料・標準資料)
数値・単位の扱いは、問題文の条件と標準資料を照らして確認します。実務では適用法令、設計図書、機器仕様、所轄の扱いを確認してください。
