著者:青木俊輔(強欲な青木)/青木マーケ(株) 取締役 COO、(株)防災屋 代表取締役 社長、(一社)予防団 共同代表理事
保有資格(記事に関係するもの):消防設備士 甲種特類・甲種1〜5類・乙種6・7類、危険物取扱者 甲種・乙種1〜6類・丙種
確認日:2026年10月19日
更新内容:初版
この記事の結論
過去問は解けるのに初見問題で手が止まるのは、「問題の見た目」と「答え」をセットで覚えていて、その知識を別の問われ方で使う練習が足りないからかもしれません。
初見問題に対応する力は、次の4つの練習で付けていきます。
- 選択肢ごとに「なぜ正しいか・なぜ誤りか」を言う
- 問われ方を自分で変えてみる(正しいもの→誤っているもの、数字を隠す、図から名前・名前から図)
- 分野を混ぜて解く
- 仕組みや理由を、テキストを閉じて説明する
それでも、本番では見たことのない問題が出ることがあります。そのときは、少し考えて分からなければ飛ばし、ほかの問題で点を取ってください。合格に満点は必要ありません。
初見問題が解けない理由
知識が「その問題の形」でしか使えない状態
過去問を繰り返すと、問題文の最初の数文字で答えが浮かぶようになります。このとき覚えているのは、知識そのものではなく、「この問題にはこの答え」という組み合わせかもしれません。この状態だと、同じ知識を別の聞き方で問われたときに使えません。
問題を解いて学んだ内容が、別の問題にどれだけ通用するか(転移するか)を調べた研究をまとめた分析(Pan & Rickard、2018年)では、次のような結果が報告されています。
- 問題を解いて学んだ内容は、読み返して学んだ内容より、別の問題にも通用しやすい
- 応用や推論を求める問題への通用は比較的強い
- 一方、問われ方の向きを逆にした問題などへの通用は弱い
- 練習のときに理由まで考える(精緻化する)と、通用しやすくなる傾向がある
対象は主に大学生などの実験室の研究で、出版バイアスを補正すると効果は大きく下がるとも報告されています。「問題を解けば必ず別の問題にも通用する」とは言えない、ということです。
消防設備士の試験でも、初見問題は出る
消防設備士の試験は、過去に出た問題と似た問題が出やすいと私は考えています。初めて見る問題と、一度解いたことのある問題とでは、正答率が全然違う、と既存の記事でも書いてきました(既存記事「そのまま出る!消防設備士「過去問テスト」全類公開中!」https://aokimarke.com/setsubishi-kakomon/ )。
それでも、毎年少しずつ新しい傾向の問題は出ます。実務で見たことがあればピンとくるけれど、テキストだけでは分かりにくい問題、テキストに載っていない内容の問題もあります(下の「青木の考え」を参照)。過去問の丸暗記だけでは、こうした問題に対応できません。
初見問題に強くなる4つの練習
①選択肢ごとに理由を言う
正解の番号だけでなく、すべての選択肢について「これは○○だから正しい」「これは○○だから誤り。正しくは△△」と言います。誤りの選択肢を、正しい文に書き直すのも効果的です。
なぜその答えになるのかを自分の言葉で説明する学び方(自己説明)は、研究をまとめた分析(Bisraら、2018年)で、成績を上げる結果が出ています。対象は小学生から大学生などで、課題は問題解決や文章の学習です。
②問われ方を自分で変える
1問の過去問から、問われ方を変えた問題を自分で作ります。
| 元の問題の形 | 変え方 |
|---|---|
| 正しいものはどれか | 誤っているものはどれか、に変えて、残りの選択肢がなぜ誤りかを言う |
| 数値を選ぶ問題 | 選択肢を隠して数値を先に答える。数値から「何の基準か」を逆に答える |
| 名称を答える問題(鑑別など) | 写真や図から名称、名称から用途、用途から名称、と向きを変える |
| 条件から結論を選ぶ問題 | 条件を1つ変えたら結論がどう変わるかを考える |
研究で、問われ方の向きを逆にした問題への通用が弱かったのは、まさにこの部分です。練習の段階で向きを変えておけば、本番で逆向きに聞かれても対応しやすくなると考えられます。

③分野を混ぜて解く
分野別に解いていると、「今は消火器の問題」と分かったうえで答えています。初見問題では、どの知識を使うかを自分で判断する必要があります。
交互練習の研究をまとめた分析(Brunmair & Richter、2019年)では、種類を混ぜて練習するほうが全体として成績が良く、似ていて見分けにくいもの同士ほど効果が大きい傾向でした。教材によっては逆効果もあります。混ぜて解く順序と使いどころは(過去問は分野別と年度別どちらで解く?最初は分野別、仕上げは混ぜて解く理由【交互練習】)で詳しく書いています。
④仕組みや理由を説明する
数字や名称は覚えていても、「なぜそうなっているのか」を知らないと、少し条件を変えられた問題に対応できません。設備の仕組み、基準がある理由を、テキストを閉じて説明してみてください。説明の勉強のやり方は(人に説明する勉強法はなぜ効く?相手がいない社会人のための「ひとり講義」のやり方)で書いています。
本番で初見問題に当たったときの対処
- 問題文の聞き方(正しいもの/誤っているもの)に印をつける
- 選択肢の中で、確実に誤りと言えるものを消す
- 少し考えても分からなければ、仮の答えをマークして飛ばし、ほかの問題を先に解く
- 全部解き終えたら、飛ばした問題に戻る
消防設備士の筆記試験は、各科目40%以上かつ全体60%以上、さらに実技試験60%以上が合格基準です(一般財団法人消防試験研究センター「試験の方法」)。初見の1問にこだわって、解けるはずの問題に使う時間を失わないでください。ただし、科目ごとの基準もあるので、問題数の少ない科目では1問の重みが大きくなります。
青木の考え
私は、消防設備士の乙種は、理解していなくても暗記である程度いけると考えています。ただし甲種の製図は、正解のパターンを覚えるだけでなく、覚えたルールの中で自分で判断して書く要素があるので、応用力が必要です。理解しないで丸暗記で進めてきた人は、ここで「理解の壁」にぶつかる、と動画で話しています(YouTube「誰でも国家資格「消防設備士」甲種4類に一発合格できる勉強方法を解説【🚨製図】」4:41〜5:29)。実務のためにも、ルールを理解して自分で判断できるようにしておくほうがよいと考えています(YouTube「【📝甲4製図】国家資格「消防設備士」甲種4類の製図(平面図・断面図・系統図)の過去問を徹底解説!【実技試験】」1:17〜1:50)。
一方で、実務経験があればピンとくるけれど、テキストだけでは分かりにくい問題や、テキストにない内容の問題が出ることもあります。そういう問題に当たったら、捨てて次の問題に行き、ほかで点を取ればいい、とも話しています(YouTube「【🪪国家資格】消防設備士の試験に落ちる人の特徴3選【不合格】」4:31〜6:37)。
初見問題の対策は、「全部の初見問題を解けるようにする」ことではなく、「理由を知っている問題を増やして、分からない問題は捨てられるようにする」ことだと思います。
研究の限界
- Pan & Rickard(2018年)は主に大学生などの実験室の研究をまとめたもので、出版バイアスを補正すると効果が大きく下がると報告しています。
- 自己説明(Bisraら、2018年)と交互練習(Brunmair & Richter、2019年)の研究も学生が中心で、資格試験の初見問題への対応を直接調べた研究は、今回の調査では見つかっていません。
- 「問われ方を自分で変える」練習は、研究の結果から考えた私たちの提案で、この方法そのものの効果を確かめた研究を紹介しているわけではありません。
- 消防設備士の試験で過去問と似た問題が出やすいというのは、私の受験経験と、受験者の方から寄せられた声にもとづく見方です。試験機関が過去問の再利用を公表しているわけではありません。
次にやること
- 類別の過去問まとめで、解説を読みながら選択肢ごとの理由を確かめる
- 消防設備士 甲4・乙4(自動火災報知設備)https://aokimarke.com/kakomon4/
- 消防設備士 乙6(消火器)https://aokimarke.com/kakomon6/
- 消防関係法令(共通)の過去問・解説まとめ https://aokimarke.com/kyotsu/
- 理由を言えるようになったら、本番と同じ問題数・形式で解き、初めて見る問題の割合と、飛ばす判断の練習をする
- 消防設備士4類「過去問テスト」甲種【冊子版】https://aokimarke.store/products/2026%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E7%89%88-%E6%B6%88%E9%98%B2%E8%A8%AD%E5%82%99%E5%A3%AB%EF%BC%94%E9%A1%9E-%E9%81%8E%E5%8E%BB%E5%95%8F%E3%83%86%E3%82%B9%E3%83%88-%E7%94%B2%E7%A8%AE-%E5%86%8A%E5%AD%90%E7%89%88 /甲種【PDF版】https://aokimarke.store/products/2026%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E7%89%88-%E6%B6%88%E9%98%B2%E8%A8%AD%E5%82%99%E5%A3%AB4%E9%A1%9E-%E9%81%8E%E5%8E%BB%E5%95%8F%E3%83%86%E3%82%B9%E3%83%88-%E7%94%B2%E7%A8%AE-pdf%E4%BB%98%E3%81%8D
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- ほかの類:過去問テストの商品一覧 https://aokimarke.store/collections/all
過去問テストは、本番と同じ問題数・形式でマークシートを使って解く教材です。分野別の過去問で理由まで言えるようになった後、混ざった状態で初めて見る問題にどう対応するかを、本番の前に練習する場として使ってください。
関連記事:過去問は何周すればいい?(過去問は何周すればいい?回数より「理由を言えて8割」で終える|答えを覚えた・まぐれ正解の対処)、消防設備士は過去問だけで受かる?(消防設備士は過去問だけで受かる?過去問で足りる範囲と足りない範囲)、分野別と年度別どちらで解く?(過去問は分野別と年度別どちらで解く?最初は分野別、仕上げは混ぜて解く理由【交互練習】)
参考文献
- Pan, S. C., & Rickard, T. C. (2018). Transfer of test-enhanced learning: Meta-analytic review and synthesis. Psychological Bulletin, 144(7), 710–756. https://doi.org/10.1037/bul0000151
- Bisra, K., Liu, Q., Nesbit, J. C., Salimi, F., & Winne, P. H. (2018). Inducing self-explanation: A meta-analysis. Educational Psychology Review, 30(3), 703–725. https://doi.org/10.1007/s10648-018-9434-x
- Brunmair, M., & Richter, T. (2019). Similarity matters: A meta-analysis of interleaved learning and its moderators. Psychological Bulletin, 145(11), 1029–1052. https://doi.org/10.1037/bul0000209
- 一般財団法人消防試験研究センター「消防設備士 試験の方法」https://www.shoubo-shiken.or.jp/shoubou/annai/way.html (2026年10月18日確認)