著者:青木俊輔(強欲な青木)/青木マーケ(株) 取締役 COO、(株)防災屋 代表取締役 社長、(一社)予防団 共同代表理事
保有資格(記事に関係するもの):消防設備士 甲種特類・甲種1〜5類・乙種6・7類、危険物取扱者 甲種・乙種1〜6類・丙種
確認日:2026年10月19日
更新内容:初版
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この記事の結論
勉強時間の割に点数が伸びないときは、時間を増やす前に、時間の「中身」を点検してください。よくある原因は次の7つです。
- テキストの読み返しが中心になっている
- 問題を解いても、答え合わせと解説の確認を省いている
- 同じ問題ばかり解いて、答えを覚えているだけになっている
- 本番と同じ形式で点数を測っていない
- 弱い科目を後回しにしている
- 机に向かっている時間のうち、集中している時間が短い
- 睡眠を削っている
どれも、勉強している本人には「やっている手応え」があるのが共通点です。手応えと実際の実力がずれることを、研究では「学習の錯覚」と呼ぶことがあります。下の確認リストで当てはまるものを見つけ、上から順に直してください。
手応えと実力は、ずれやすい
学習の研究をまとめた総説(Bjork、Dunlosky & Kornell、2013年)は、人は自分の学び方について誤った思い込みを持ちやすく、学習中の手応えや、すらすら読める感覚に引きずられて、学習の進め方を誤りやすいと指摘しています。
具体例が、読み返しとテストを比べた実験です(Roediger & Karpicke、2006年)。学生に説明文を学ばせたところ、5分後のテストでは読み返したグループが上回りましたが、2日後と1週間後のテストでは、思い出す練習をしたグループが上回りました。そして、読み返したグループのほうが「覚えた」という自信は高かったのです。対象は大学生で、説明文を使った実験室の研究です。
米国の大学生への調査(Karpicke、Butler & Roediger、2009年)でも、多くの学生がノートや教科書の読み返しを繰り返していて、自分をテストする学生は少数でした。
「たくさん勉強した感じがするのに、点数が伸びない」。その原因は、努力の量ではなく、手応えの出やすい勉強に時間が流れていることかもしれません。
確認リスト:点数が伸びない7つの原因
| No | 当てはまるか確かめること | 当てはまったときの直し方 |
|---|---|---|
| 1 | 勉強時間の半分以上が、テキストやノートを読む時間になっている | 一通り読んだら、すぐ問題に移る。読むのは、間違えた所を確かめるときだけにする |
| 2 | 問題を解いて丸つけをしたら、解説を読まずに次へ進んでいる | 間違えた問題と迷った問題は、解説を読んで、理由を言えるまで確かめる |
| 3 | 問題文の最初を見ただけで、答えの番号が浮かぶ | 選択肢ごとに「なぜ正しいか・なぜ誤りか」を言う。言えない問題は「まだ解けない」に入れる |
| 4 | 本番と同じ問題数・形式で、時間を計って解いたことがない | 一度、本番形式で解いて、科目ごとの正答率を出す |
| 5 | 苦手な科目の問題を、得意な科目より少なく解いている | 本番形式で見つかった弱い科目に、勉強時間を寄せる |
| 6 | スマホを手元に置いたまま勉強している、テレビをつけている | 短くても、スマホを離して集中する時間をつくる |
| 7 | 勉強時間を確保するために、睡眠を削っている | 睡眠を削らない。覚えたことの定着には睡眠が関わる |

1・2:読み返し中心、答え合わせの省略
学習法の研究をまとめた総説(Dunloskyら、2013年)は、読み返しを「効果が低い」、思い出す練習(練習テスト)を「効果が高い」と評価しています。教材を読み返したときの上積みは限られている、と報告した研究もあります(Callender & McDaniel、2009年)。
ただし、問題を解けばそれでよいわけではありません。テストと読み返しを比べた研究をまとめた分析(Rowland、2014年)では、問題を解いた後に正解を確かめるほうが効果が大きく、答え合わせがないまま最初の正答率が5割以下だと、テストの効果はほとんど見られませんでした。大学生中心の研究です。
3:答えを覚えているだけ
同じ問題を何周もすると、答えの番号を覚えてしまいます。この状態の正答率は、実力より高く見えます。確かめ方は(過去問は何周すればいい?回数より「理由を言えて8割」で終える|答えを覚えた・まぐれ正解の対処)、初めて見る問題で崩れる場合の対策は(過去問は解けるのに初見問題が解けない理由と対策|「問われ方を変える」練習と本番での捨て方)で詳しく書いています。
4・5:本番形式で測っていない、弱い科目の放置
消防設備士の筆記試験は、各科目40%以上かつ全体60%以上、さらに実技試験60%以上が合格基準です(一般財団法人消防試験研究センター「試験の方法」)。全体の点数が伸びていても、1科目が基準を下回れば不合格です。
本番形式で科目ごとの正答率を出すと、どこに時間を使うべきかが見えます。間違えた問題を記録して、弱い所を潰すやり方は(間違えた問題の管理方法|ノートを作らずに誤答を潰すやり方)で説明しています。
6:集中している時間が短い
同じ1時間でも、机に向かって集中する1時間と、スマホを見ながらの1時間は違う、と私は動画で話しています(下の「青木の考え」を参照)。勉強時間を記録している方は、時間だけでなく、何をしたか(読んだ/解いた/解説を確かめた)も一緒に書くと、中身の偏りに気づけます。
7:睡眠を削っている
徹夜と記憶の研究をまとめた分析(Newburyら、2021年)では、学習の後に徹夜すると記憶が下がり、学習の前に徹夜するとさらに大きく下がっていました。一晩以上の完全な徹夜を扱った研究で、日常の少しの睡眠不足にそのまま当てはまるわけではありません。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」は、成人は6時間以上を目安に必要な睡眠時間を確保することを推奨しています。
見直しの順番
7項目すべてを一度に直す必要はありません。次の順番で1つずつ直してください。
- まず本番形式で一度解き、科目ごとの正答率を出す(原因4)
- 正答率の低い科目を中心に、読み返しを減らして問題を解く時間を増やす(原因1・5)
- 解いた問題は、答え合わせと解説の確認までやる(原因2)
- 解ける問題は理由を言えるか確かめる(原因3)
- 勉強時間の記録に「何をしたか」を足し、集中できる時間と睡眠を確保する(原因6・7)
1〜2週間たったら、もう一度本番形式で解いて、科目ごとの正答率がどう変わったかを見てください。
青木の考え
『消防設備士0類』(Amazon電子版 https://amzn.to/49YGHP1 )で、私は消防設備士の試験に何度も落ちる人の共通点として「アウトプット不足」を挙げました。参考書を一通りやって満足し、自分が本試験を突破できる力があるかを確かめないまま本番に挑んでしまう。バスケットボールにたとえると、ドリブルとシュートの練習だけして試合に出て、ディフェンスがいたら何もできないと試合中に気づくようなものだ、という話です(書籍 第1章「消防設備士とは」の「消防設備士試験の秘密」、2023年執筆)。
勉強時間を扱った動画でも、時間をかけても勉強のやり方が正しくなければ受からないし、ただ机に座って時間を稼いでも意味がない、という話が出ています(YouTube「【⏰勉強時間】どのタイプ?国家資格「消防設備士」甲種と乙種の勉強時間【図解あり】」7:28〜7:46)。同じ1時間でも、机に向かう1時間と、スマホを見ながらの1時間は違う、という話もしました(YouTube「【🪪国家資格】消防設備士の試験に落ちる人の特徴3選【不合格】」13:32〜14:30)。
私自身、消防設備士で一度だけ落ちたのが甲種2類です。実務で関わっていた設備と同じようなものだと高をくくって、テキスト1冊で挑んでしまいました。最低でもテキスト1冊と問題集1冊は手元にそろえて、一通り頭に入れておくべきだった、とブログに書いています(ブログ「徹底分析!消防設備士の試験に受からない人の特徴3つ【勉強方法】」2024年2月21日更新 https://aokimarke.com/setsubishi-ukaranai3/ )。
社員の合否結果を見る動画では、「これでいける」と思うのが早すぎると、勉強が足りないまま本番を迎えてしまう、という話をしました。私は試験当日でも不安でした(YouTube「【🌸合格発表】乙6の合否結果は⁉️バンくん&のっち緊張の瞬間【消防設備士】」12:40〜13:02)。
点数が伸びないときこそ、勉強時間を増やす前に、本番形式で一度測ってみてください。測って初めて、どこに時間を使えばいいかが分かります。
研究の限界
- 紹介した研究の多くは、大学生を対象にした実験や調査です。社会人の資格試験で、勉強時間の使い方と点数の伸びを直接調べた研究は、今回の調査では見つかっていません。
- 確認リストの7項目は、研究と私たちの経験をもとにした点検の目安です。すべての原因を網羅しているわけではありません。
- 「同じ1時間でも集中の度合いで違う」は、私の経験にもとづく考えで、時間の質と点数の関係を数字で示した研究は紹介していません。
次にやること
- 本番形式で一度解き、科目ごとの正答率を出す
- 消防設備士4類「過去問テスト」甲種【冊子版】https://aokimarke.store/products/2026%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E7%89%88-%E6%B6%88%E9%98%B2%E8%A8%AD%E5%82%99%E5%A3%AB%EF%BC%94%E9%A1%9E-%E9%81%8E%E5%8E%BB%E5%95%8F%E3%83%86%E3%82%B9%E3%83%88-%E7%94%B2%E7%A8%AE-%E5%86%8A%E5%AD%90%E7%89%88 /甲種【PDF版】https://aokimarke.store/products/2026%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E7%89%88-%E6%B6%88%E9%98%B2%E8%A8%AD%E5%82%99%E5%A3%AB4%E9%A1%9E-%E9%81%8E%E5%8E%BB%E5%95%8F%E3%83%86%E3%82%B9%E3%83%88-%E7%94%B2%E7%A8%AE-pdf%E4%BB%98%E3%81%8D
- 消防設備士4類「過去問テスト」乙種【冊子版】https://aokimarke.store/products/2026%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E7%89%88-%E6%B6%88%E9%98%B2%E8%A8%AD%E5%82%99%E5%A3%AB%EF%BC%94%E9%A1%9E-%E9%81%8E%E5%8E%BB%E5%95%8F%E3%83%86%E3%82%B9%E3%83%88-%E4%B9%99%E7%A8%AE-%E5%86%8A%E5%AD%90%E7%89%88 /乙種【PDF版】https://aokimarke.store/products/2026%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E7%89%88-%E6%B6%88%E9%98%B2%E8%A8%AD%E5%82%99%E5%A3%AB4%E9%A1%9E-%E9%81%8E%E5%8E%BB%E5%95%8F%E3%83%86%E3%82%B9%E3%83%88-%E4%B9%99%E7%A8%AE-pdf%E4%BB%98%E3%81%8D
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- ほかの類:過去問テストの商品一覧 https://aokimarke.store/collections/all
- 正答率の低い科目を、類別の過去問まとめで分野ごとに解き直す
- 消防設備士 甲4・乙4(自動火災報知設備)https://aokimarke.com/kakomon4/
- 消防設備士 乙6(消火器)https://aokimarke.com/kakomon6/
- 消防関係法令(共通)の過去問・解説まとめ https://aokimarke.com/kyotsu/
- 勉強時間の目安と、正答率の判定(6割未満は参考書へ、6〜8割は反復、8割以上は良好)を確かめる
- 消防設備士試験の勉強時間シミュレーター https://aokimarke.com/study-time/
過去問テストは、本番と同じ問題数・形式でマークシートを使って解く教材です。伸び悩んでいるときに「今どこが足りないか」を測る道具として使ってください。
点数が伸びない原因と並べて、消防設備士の試験に落ちる人の特徴を書いた記事もあります:徹底分析!消防設備士の試験に受からない人の特徴3つ https://aokimarke.com/setsubishi-ukaranai3/ 、消防設備士に受からない人の特徴(消防設備士に受からない人の特徴(原因分析))
「アウトプット不足」の話は、『消防設備士0類』の第1章に書いています(書籍紹介 https://aokimarke.com/0rui-revised/ )。書籍は2023年の執筆で、勉強法だけの本ではなく、消防設備士として働く人に向けた本です。
関連記事:科学的に効果が確かめられた勉強法(【勉強法】資格試験は「読む」より「思い出す」で覚える|科学的に効果が高い覚え方を過去問演習に当てはめる)
参考文献
- Bjork, R. A., Dunlosky, J., & Kornell, N. (2013). Self-regulated learning: Beliefs, techniques, and illusions. Annual Review of Psychology, 64, 417–444. https://doi.org/10.1146/annurev-psych-113011-143823
- Roediger, H. L., III, & Karpicke, J. D. (2006). Test-enhanced learning: Taking memory tests improves long-term retention. Psychological Science, 17(3), 249–255. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2006.01693.x
- Karpicke, J. D., Butler, A. C., & Roediger, H. L., III. (2009). Metacognitive strategies in student learning: Do students practise retrieval when they study on their own? Memory, 17(4), 471–479. https://doi.org/10.1080/09658210802647009
- Dunlosky, J., Rawson, K. A., Marsh, E. J., Nathan, M. J., & Willingham, D. T. (2013). Improving students' learning with effective learning techniques: Promising directions from cognitive and educational psychology. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4–58. https://doi.org/10.1177/1529100612453266
- Callender, A. A., & McDaniel, M. A. (2009). The limited benefits of rereading educational texts. Contemporary Educational Psychology, 34(1), 30–41. https://doi.org/10.1016/j.cedpsych.2008.07.001
- Rowland, C. A. (2014). The effect of testing versus restudy on retention: A meta-analytic review of the testing effect. Psychological Bulletin, 140(6), 1432–1463. https://doi.org/10.1037/a0037559
- Newbury, C. R., Crowley, R., Rastle, K., & Tamminen, J. (2021). Sleep deprivation and memory: Meta-analytic reviews of studies on sleep deprivation before and after learning. Psychological Bulletin, 147(11), 1215–1240. https://doi.org/10.1037/bul0000348
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/suimin/index.html (2026年10月18日確認)
- 一般財団法人消防試験研究センター「消防設備士 試験の方法」https://www.shoubo-shiken.or.jp/shoubou/annai/way.html (2026年10月18日確認)
- 青木マーケ(株)「消防設備士試験の勉強時間シミュレーター」https://aokimarke.com/study-time/ (2026年10月19日確認)