消防ポンプは、火災で建物の常用電源が失われたときこそ確実に動かなければなりません。非常電源は、電源装置だけでなく、専用回路、切替装置、設置場所、保有距離、接地までを一つの系統として読みます。
この講義では、次の順に整理します。
これから覚える5つ
- 非常電源の種類と屋内消火栓の30分容量
- 自家発電設備の設置・切替・保有距離
- 蓄電池設備の停電時切替と復電時の動作
- 非常電源専用受電設備と配電盤の現行基準
- 接地工事の目的、接地線、接地抵抗
step
1非常電源の種類と屋内消火栓の30分容量
step
2自家発電設備の設置・切替・保有距離
step
3蓄電池設備の停電時切替と復電時の動作
step
4非常電源専用受電設備と配電盤の現行基準
step
5接地工事の目的、接地線、接地抵抗
非常電源は「電源装置+切替+専用回路+負荷」で読む。
現在地:電気・配線2(2/4)|この講義5問・単元全18問
🔌非常電源の種類と専用性
屋内消火栓設備の非常電源には、消防法施行規則第12条に基づき、次の方式があります。
- 非常電源専用受電設備
- 自家発電設備
- 蓄電池設備
- 燃料電池設備
ただし、特定防火対象物で延べ面積1,000m²以上のものは、小規模特定用途複合防火対象物を除き、非常電源専用受電設備だけでは足りず、自家発電設備・蓄電池設備・燃料電池設備のいずれかによります。
どの方式でも、消防用設備の回路が他の電気回路の開閉器や遮断器によって遮断されないようにします。一般負荷の主開閉器を切った結果、消防ポンプまで無電圧になる構成では非常電源の意味がありません。
屋内消火栓設備では、自家発電設備等の容量を、設備を有効に30分間以上作動できるものとします。この30分は、誘導灯やスプリンクラー等の他設備の必要時間へ無条件に流用できる数字ではありません。
消防法施行規則第12条第1項第4号は、屋内消火栓設備の非常電源の種類、専用性、自家発電設備等の30分容量及び自動切替を定めています。
30分は設備名とセット。「屋内消火栓設備を有効に30分以上」。
⚙自家発電設備|停電を検出し、40秒以内に電源を確立
自家発電設備は、原動機、発電機、制御装置、始動装置、燃料系統等から構成されます。
消防庁告示の自家発電設備の基準では、原則として常用電源の停電時に自動的に電圧確立・投入・送電を行い、その所要時間を40秒以内とします。管理者が常駐し直ちに操作できる設備など、告示上の例外もありますが、試験の基本は「停電→自動始動→電圧確立→非常負荷へ送電」です。
キュービクル式以外の自家発電設備は、機器ごとに保有距離を確認します。
| 対象 | 原則の最小距離 |
|---|---|
| 自家発電装置の周囲 | 0.6m以上 |
| 独立した操作盤の前面 | 1.0m以上 |
| 燃料タンクと予熱方式の原動機 | 2.0m以上 |
| 燃料タンクとその他の原動機 | 0.6m以上 |
燃料タンクと原動機の間に不燃材料の有効な遮へい物を設ける場合など、規則には例外があります。表の数値だけで現場を判定せず、方式、区画、認定仕様を確認します。
消防法施行規則第12条は自家発電装置周囲0.6m、独立操作盤前面1m、燃料タンクと原動機の間隔を定めています。消防庁告示第1号は停電時の自動電圧確立・投入・送電と原則40秒以内を定めています。
自家発電装置の周囲0.6m。独立操作盤の前面1m。
🔋蓄電池設備|停電時は自動、復電時は装置構成を見る
蓄電池設備は、蓄電池、充電装置、切替装置、保護装置、監視計器等で構成されます。交流負荷へ電力を供給する設備では、逆変換装置や直交変換装置を含む場合があります。
屋内消火栓設備に用いる場合の切替は、次のように整理します。
- 常用電源が停電する
- 自動的に常用電源から蓄電池設備へ切り替わる
- 屋内消火栓設備を30分以上作動できる容量を供給する
- 常用電源が復旧する
- 直交変換装置を有しない蓄電池設備は、自動的に常用電源へ復帰する
「復電時はすべて手動」「すべての蓄電池設備が自動復帰」という両方の断定が危険です。規則は、直交変換装置を有しないものについて自動復帰を定めています。
消防庁告示の蓄電池設備の基準は、直交変換装置を有するものは停電から40秒以内、その他は停電直後に電圧確立・投入を行うことや、負荷回路と他回路を自動的に切り離すことも定めています。
消防法施行規則第12条第1項第4号ハは、停電時の自動切替と直交変換装置を有しない蓄電池設備の復電時自動復帰を定めています。
消防庁の蓄電池設備点検基準は、常用電源を停電状態にしたときの自動切替と直交変換装置を有しないものの復電時自動復帰を総合点検項目としています。
停電時は自動切替。復電時は「直交変換装置を有しないもの」を確認。
🧰キュービクル式非常電源専用受電設備
キュービクル式非常電源専用受電設備は、高圧又は特別高圧で受電する非常電源専用受電設備を外箱へ収納したものです。専用形と非常電源と他の電源を共用する共用形があります。
規則上、キュービクル式非常電源専用受電設備の前面には、1m以上の幅の空地を確保します。さらに、他のキュービクル式以外の自家発電設備・蓄電池設備から1m以上離し、屋外では建築物等との距離条件も確認します。
前面空地は、扉を開け、点検・操作し、安全に退避するための空間です。保管棚や資材で塞いではいけません。
また、共用キュービクルでは、非常電源回路と他の電気回路を不燃材料で区画し、一つの非常電源回路が他の回路の開閉器・遮断器で遮断されない接続とします。
消防法施行規則第12条第1項第4号イ(ヘ)は、キュービクル式非常電源専用受電設備の前面1m以上及び他設備等との離隔を定めています。
発電装置周囲0.6m、キュービクル前面1m。
🗄️ 配電盤・分電盤|古い数値を現行告示へ更新する
低圧で受電する非常電源専用受電設備には、第一種・第二種の配電盤等があります。現行の「配電盤及び分電盤の基準」は、キャビネットの鋼板厚を次のように定めています。
| 区分 | 現行の主な板厚条件 |
|---|---|
| 第一種 | 鋼板1.6mm以上。前面板及び扉は2.3mm以上 |
| 第二種 | 鋼板1.0mm以上。前面板の面積が1,000cm²超2,000cm²以下は1.2mm以上、2,000cm²超は1.6mm以上 |
第一種では、不燃性又は難燃性のカバーを用いた表示灯など、告示が列挙するものは外部へ露出できます。第二種では、それらに加え、120℃を加えても破壊されない電圧計又は電流計を露出できます。
教材の配電盤2問は、第一種の「扉」を1.6mm以上とする選択肢を正しい前提にしています。しかし現行告示は、第一種の前面板及び扉を2.3mm以上としています。このため単一正答が成立せず、代表問には採用しません。
数値問題は、教材の正答番号が合っているように見えても、主語が「キャビネット」か「前面板・扉」かまで確認します。
消防庁告示第10号「配電盤及び分電盤の基準」は、第一種・第二種の板厚、内張り、外部露出物、耐火・耐熱性能を定めています。
第一種は「一般部1.6、前面板・扉2.3」。主語まで読む。
🌎接地工事|故障電流を大地へ流し、危険電圧を抑える
接地工事は、機器の金属製外箱などを接地線・接地極で大地へ接続する工事です。
絶縁が破壊され外箱へ漏電すると接地されていない外箱には危険な電圧が残るおそれがあります。適切な接地と保護装置があれば、故障電流の経路を確保し、外箱の対地電圧を抑え、遮断器や漏電保護装置を動作させます。
接地の主な目的は、次のとおりです。
- 漏電による感電の防止
- 漏電火災や電気工作物の損傷の防止
- 高圧と低圧が混触したときの低圧側の保護
- 異常電圧の抑制と系統保護
力率改善は、一般に進相コンデンサ等の役割です。接地工事の目的ではありません。また、接地は絶縁物そのものの絶縁性能を高くする工事でもありません。
消防用設備等試験基準は、低圧用機器の鉄台・金属製外箱について接地工事の種類、接地線、接地抵抗を示し、接地抵抗試験を定めています。
接地の目的に「力率改善」「絶縁性能向上」を入れない。
📐D種接地工事|1.6mm、100Ω、0.5秒なら500Ω
消防用設備等試験基準では、300V以下の低圧用機器の鉄台・金属製外箱に施すD種接地工事を、次のように整理しています。
| 項目 | 基準 |
|---|---|
| 接地線 | 引張強さ0.39kN以上の金属線、又は直径1.6mm以上の軟銅線 |
| 接地抵抗 | 100Ω以下 |
| 緩和 | 地絡時に0.5秒以内に自動遮断する装置がある低圧電路は500Ω以下 |
「消防用設備に行うD種接地工事に用いる軟銅線の最小直径」は1.6mmです。断面積1.6mm²ではなく、直径1.6mmであることに注意します。
試験では、接地極等について接地抵抗計で測定します。絶縁抵抗計で機器の絶縁を測る試験とは目的も接続方法も異なります。
なお、使用電圧、設置場所、機器の構造によって接地工事を要しない条件や別種の接地が適用される場合があります。表は問題のD種条件を取り出したもので、全設備を一律にD種とするものではありません。
消防庁の令和6年改正消防用設備等試験基準は、D種接地線を直径1.6mm以上の軟銅線又は同等の引張強さとし、接地抵抗100Ω以下、0.5秒以内自動遮断時500Ω以下を示しています。
D種は「直径1.6mm・100Ω」。0.5秒以内自動遮断なら500Ω。
⚠よく出る注意ポイント
- 屋内消火栓の非常電源は60分 → 30分以上
- 消防回路は一般回路の主遮断器で一括遮断してよい → 他回路の開閉器等で遮断されない
- 自家発電装置の周囲は1m → 0.6m以上
- 自家発電設備の操作盤前面は0.6m → 1m以上
- 蓄電池は停電時に手動で切替 → 自動切替
- 復電時はすべて手動 → 直交変換装置を有しないものは自動復帰
- キュービクル前面は0.6m → 1m以上
- 第一種配電盤の扉は1.6mm → 現行は2.3mm以上
- 接地は力率を改善する → 進相コンデンサ等の役割
- D種接地線は断面積1.6mm² → 軟銅線の直径1.6mm以上
✍過去問ベースの類題で確認しよう
※以下は、原題の論点・条件・正答を維持しつつ、表・図・文章を学習用に再構成した類題です。原題の問題文・図版そのものではありません。
この単元の収録類題は、全部で5問です。
キュービクル式以外の自家発電設備について、自家発電装置の周囲に確保する空地の最小幅はどれか。
- 0.3m
- 0.5m
- 0.6m
- 1.0m
屋内消火栓設備の非常電源に用いる蓄電池設備について、誤っているものはどれか。
- 点検に便利で災害被害のおそれが少ない場所に設ける。
- 他の回路の開閉器又は遮断器によって遮断されない。
- 常用電源の復旧時は、常に手動で常用電源へ戻す。
- 屋内消火栓設備を30分以上有効に作動できる容量とする。
キュービクル式非常電源専用受電設備の前面に確保する空地の最小幅はどれか。
- 0.6m
- 1.0m
- 1.5m
- 1.6m
接地工事を行う主な目的として、最も不適切なものはどれか。
- 高圧侵入のおそれに備える。
- 漏電による感電を防止する。
- 高圧回路と低圧回路の混触時に低圧側を保護する。
- 電気工作物の力率を改善する。
消防用設備のD種接地工事に用いる軟銅線の直径の最小値はどれか。
- 1.0mm
- 1.6mm
- 2.0mm
- 2.6mm
まとめ
- 非常電源は電源装置、切替装置、専用回路、負荷を一系統で確認する
- 屋内消火栓設備を30分以上有効に作動できる容量とする
- キュービクル式以外の自家発電装置の周囲は0.6m以上
- 蓄電池設備は停電時に自動切替する
- 直交変換装置を有しない蓄電池設備は復電時も自動復帰する
- キュービクル式非常電源専用受電設備の前面は1m以上
- 第一種配電盤の現行値は一般部1.6mm、前面板・扉2.3mm以上
- 接地は感電・火災・機器損傷を防ぎ、保護装置を働かせる
- D種接地線は直径1.6mm以上の軟銅線、接地抵抗は原則100Ω以下
非常電源は、数字だけでなく「どの装置の、どの面の、どの動作か」を主語ごと覚えると似た0.6m・1m・30分を取り違えません。
➡次に進みましょう
-
-
【過去問】消防設備士甲1・乙1の電気③|配線接続・耐火配線・耐熱配線







