著者:青木俊輔(強欲な青木)/青木マーケ(株) 取締役 COO、(株)防災屋 代表取締役 社長、(一社)予防団 共同代表理事
保有資格(記事に関係するもの):消防設備士 甲種特類・甲種1〜5類・乙種6・7類、危険物取扱者 甲種・乙種1〜6類・丙種
確認日:2026年10月19日
更新内容:初版
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この記事の結論
人に説明する勉強法は、試す価値があります。教えることを前提に学んだり、実際に人に説明したりする学び方の研究をまとめた分析では、ふつうに勉強するよりも成績が良い傾向があり、教える準備だけより実際に説明するほうが効果が大きいと報告されています。
相手がいなくてもできます。やり方は次の3つです。
- テキストを閉じて、声に出して5分の「ひとり講義」をする
- 過去問1問の解説を、初めて学ぶ人向けに書いてみる
- 説明が止まった箇所に印をつけ、テキストと解説で答え合わせをしてから、もう一度説明する
大事なのは最後の答え合わせです。説明が「すらすら言えた」ことと「正しく言えた」ことは別なので、説明したら必ずテキストや過去問で確かめてください。
人に説明する勉強が効くと考えられる理由
説明しようとすると、分かっていない所が見える
テキストを読んでいる間は、分かったような気がします。ところが、テキストを閉じて人に説明しようとすると、言葉が止まる所が出てきます。そこが、まだ自分の言葉にできていない所です。
なぜその答えになるのかを自分で説明する学び方は、研究では「自己説明」と呼ばれます。自己説明を促す指示の効果を調べた研究をまとめた分析(Bisraら、2018年)では、自己説明をしたほうが成績が上がるという結果が出ています。対象は小学生から大学生・専門職課程の学生までで、課題は問題解決や文章の学習です。社会人の資格学習を直接調べたものではありません。
教える準備だけでも、実際に説明するとさらに
教える学び方の研究では、次の2つを分けて調べています。
- 「あとで人に教える」つもりで学ぶ(教える準備)
- 学んだ後に、実際に人に説明する
28の研究をまとめた分析(Kobayashi、2019年)では、どちらもふつうに勉強するより成績が良い傾向があり、教える準備だけより実際に教えるほうが効果が大きいと報告されています。相手とやり取りしながら教える場合に効果が大きい傾向も示されています。対象は学生が中心とみられ、社会人の資格学習を直接調べたものではありません。
大学生を対象にした実験(Fiorella & Mayer、2013年・2014年)でも、教えるつもりで学んだだけの効果は時間がたつと見えにくくなり、実際に講義の動画を撮って説明した学生のほうが、時間をおいたテストで成績が良かったと報告されています。教材は物理の1つのテーマで、実験室の研究です。
つまり、「人に教えるつもりで読む」だけで止めず、口に出すか、書くかして、実際に説明までやるのがおすすめです。
相手がいない社会人のやり方
| やり方 | 手順 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| ひとり講義 | テキストを閉じて、見出し1つ分を5分で声に出して説明する。スマホで録音してもよい | 帰宅後や休日など、声を出せる場所があるとき |
| 解説を書く | 過去問1問を選び、「初めて学ぶ人向け」の解説を白い紙に書く。選択肢ごとに、正しい・誤りの理由を書く | 声を出せない時間、通勤の電車など |
| 図を描いて説明する | 設備の仕組みや系統を、何も見ずに図にして、矢印に説明を添える | 仕組みや流れのある分野 |
| 家族・同僚に1分説明 | 「これ、どういうことだと思う?」と聞いてもらい、1分で答える | 相手がいるとき。質問されると、さらに穴が見える |
どのやり方でも、説明が止まった所、あいまいになった所に印をつけてください。説明が終わったらテキストを開き、印の所を確かめて、もう一度説明します。
例:甲種と乙種の違いを「ひとり講義」する
消防設備士の勉強を始めたばかりの方なら、最初の講義のテーマは「甲種と乙種の違い」がおすすめです。
講義で言えてほしい内容は、次のとおりです。
- 甲種は工事・整備・点検ができ、乙種は整備・点検ができる
- 特類は甲種だけ、第6類と第7類は乙種だけで、第1類〜第5類は甲種・乙種の両方がある
- 受験資格が必要なのは甲種だけで、乙種は誰でも受験できる
(一般財団法人消防試験研究センター「消防設備士試験」。2026年10月18日確認)
テキストを閉じてこれを言えなかった部分が、次に確かめる部分です。慣れてきたら、「なぜ工事ができる甲種には受験資格があるのか、自分ならどう説明するか」のように、理由を問う講義にしていきます。
注意:すらすら言えても、正しいとは限らない
説明の勉強には落とし穴があります。何度も同じ説明をしていると、言葉がすらすら出てくるようになります。すらすら言えると、正しく理解している気がします。
学習の研究をまとめた総説(Bjork、Dunlosky & Kornell、2013年)は、人は学習中の手応えや、すらすら進む感覚に引きずられて、自分の学習の状態を見誤りやすいと指摘しています。
そこで、説明の勉強は次の順番で使ってください。
- テキストを閉じて説明する
- テキストや解説で答え合わせをする(間違っていた所、抜けていた所を直す)
- 日をあけて、同じテーマを説明し直す
- 最後は過去問を解いて、説明できた内容で問題が解けるか確かめる

過去問を解いた後に、選択肢ごとに理由を言う確かめ方は、別の記事(過去問は何周すればいい?回数より「理由を言えて8割」で終える|答えを覚えた・まぐれ正解の対処)で詳しく書いています。
説明の勉強が向いていない場面
- 覚える内容に理由やつながりがない場合(項番号の並びなど)。説明より、思い出す練習や表で覚えるほうが早いことがあります。覚え方の使い分けは(【勉強法】資格試験は「読む」より「思い出す」で覚える|科学的に効果が高い覚え方を過去問演習に当てはめる)で整理しています
- まだ1回もテキストを読んでいない段階。説明する材料がないので、まず一通り読んでから始めてください
- 説明に時間をかけすぎて、問題を解く時間がなくなる場合。説明は1テーマ5分程度にして、問題演習の時間を残してください
青木の場合
『消防設備士0類』(Amazon電子版 https://amzn.to/49YGHP1 )で、私は「アウトプット前提で業務に取り組む」ことを勧めました。日報を書くだけでなく、仕事でやったことをブログにまとめておく。マニュアルのような記事にしておくと、自分の復習になり、人への引き継ぎにも使え、見込みのお客様からの問い合わせにもつながる、という話です(書籍 第4章「消防設備士を始めるときに気を付けること7つ」の「アウトプット前提で業務に取り組む」、2023年執筆)。
今の考えも同じで、自分の作業を棚卸しして、他の人でもできるマニュアルにして発信する、というのが私のやり方です(2026年10月時点の本人の回答)。
資格の勉強でいうと、私は専門学校で消防設備士の乙種の外部講師をしたことがあり、資格試験の内容を誰かに教えることは得意なほうだと動画で話しています(YouTube「【📝甲4製図】国家資格「消防設備士」甲種4類の製図(平面図・断面図・系統図)の過去問を徹底解説!【実技試験】」3:04〜3:16)。また、受験した試験の問題を覚えて書き起こし、受験者の方から出題の情報を集めて、ブログで解説するようになったのが、今の過去問の解説記事の始まりです(書籍 第1章「消防設備士試験の秘密」)。
ブログや動画で過去問や設備を説明してきて思うのは、説明する自分が一番理解が深まる、ということです。調べて書くのは時間がかかりますが、その分だけ、血肉になった記憶として残る感じがあります(2026年10月時点の本人の回答)。
説明する側に回ると、自分が分かっていない所がごまかせなくなります。勉強の段階から「人に説明するつもり」で進めておくと、資格を取った後に現場で後輩に教えるときにも、そのまま役に立つと思います。
研究の限界
- 紹介した研究の対象は、大学生などの学生が中心です。仕事をしながら資格試験を受ける社会人を対象に、同じ条件で調べた研究は、今回の調査では見つかっていません。
- Kobayashi(2019年)は28の研究をまとめたもので、規模は中程度です。研究ごとに教材や「教える」の方法が違います。
- Fiorella & Mayer(2013年・2014年)は、物理の1つのテーマを使った実験です。内容の一部は著者による解説の資料で確認しており、時間をおいたテストまでの具体的な日数は確認できていません。
- 声に出す「ひとり講義」や、解説を書くことの効果を、資格試験の合否で直接比べた研究は見つかっていません。この記事のやり方は、研究の考え方を当てはめた私たちの提案です。
次にやること
- 説明するテーマを決めるために、受ける類の学習ガイドで出題範囲を確認する
- 消防設備士 甲4・乙4(自動火災報知設備)https://aokimarke.com/kakomon4/
- 消防設備士 乙6(消火器)https://aokimarke.com/kakomon6/
- 消防関係法令(共通)の過去問・解説まとめ https://aokimarke.com/kyotsu/
- 解説記事を読んだら、記事を閉じて同じ内容を5分で説明し、選択肢ごとの理由まで言えるか確かめる
- 説明できた分野が増えたら、本番と同じ問題数・形式で解いて、説明した知識で点が取れるか確かめる
- 消防設備士4類「過去問テスト」甲種【冊子版】https://aokimarke.store/products/2026%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E7%89%88-%E6%B6%88%E9%98%B2%E8%A8%AD%E5%82%99%E5%A3%AB%EF%BC%94%E9%A1%9E-%E9%81%8E%E5%8E%BB%E5%95%8F%E3%83%86%E3%82%B9%E3%83%88-%E7%94%B2%E7%A8%AE-%E5%86%8A%E5%AD%90%E7%89%88 /甲種【PDF版】https://aokimarke.store/products/2026%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E7%89%88-%E6%B6%88%E9%98%B2%E8%A8%AD%E5%82%99%E5%A3%AB4%E9%A1%9E-%E9%81%8E%E5%8E%BB%E5%95%8F%E3%83%86%E3%82%B9%E3%83%88-%E7%94%B2%E7%A8%AE-pdf%E4%BB%98%E3%81%8D
- 消防設備士4類「過去問テスト」乙種【冊子版】https://aokimarke.store/products/2026%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E7%89%88-%E6%B6%88%E9%98%B2%E8%A8%AD%E5%82%99%E5%A3%AB%EF%BC%94%E9%A1%9E-%E9%81%8E%E5%8E%BB%E5%95%8F%E3%83%86%E3%82%B9%E3%83%88-%E4%B9%99%E7%A8%AE-%E5%86%8A%E5%AD%90%E7%89%88 /乙種【PDF版】https://aokimarke.store/products/2026%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E7%89%88-%E6%B6%88%E9%98%B2%E8%A8%AD%E5%82%99%E5%A3%AB4%E9%A1%9E-%E9%81%8E%E5%8E%BB%E5%95%8F%E3%83%86%E3%82%B9%E3%83%88-%E4%B9%99%E7%A8%AE-pdf%E4%BB%98%E3%81%8D
- 消防設備士6類「過去問テスト」乙種【冊子版】https://aokimarke.store/products/2026%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E7%89%88-%E6%B6%88%E9%98%B2%E8%A8%AD%E5%82%99%E5%A3%AB%EF%BC%96%E9%A1%9E-%E9%81%8E%E5%8E%BB%E5%95%8F%E3%83%86%E3%82%B9%E3%83%88-%E4%B9%99%E7%A8%AE-%E5%86%8A%E5%AD%90%E7%89%88 /乙種【PDF版】https://aokimarke.store/products/2026%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E7%89%88-%E6%B6%88%E9%98%B2%E8%A8%AD%E5%82%99%E5%A3%AB6%E9%A1%9E-%E9%81%8E%E5%8E%BB%E5%95%8F%E3%83%86%E3%82%B9%E3%83%88-%E4%B9%99%E7%A8%AE-pdf%E4%BB%98%E3%81%8D
- ほかの類:過去問テストの商品一覧 https://aokimarke.store/collections/all
過去問テストは、本番と同じ問題数・形式でマークシートを使って解く教材です。説明の勉強で理解した内容が、本番の形式で点になるかを確かめる仕上げに使ってください。
仕事でのアウトプットの考え方は、『消防設備士0類』の第4章で詳しく書いています(書籍紹介 https://aokimarke.com/0rui-revised/ )。書籍は2023年の執筆で、資格の勉強法の本ではなく、消防設備士として働く人に向けた本です。
関連記事:アクティブリコールとは?(アクティブリコールとは?暗記カードと過去問で「思い出す練習」をする手順)、過去問は何周すればいい?(過去問は何周すればいい?回数より「理由を言えて8割」で終える|答えを覚えた・まぐれ正解の対処)、現場の仕事術(現場で伸びる新人の仕事術|メモ・質問・失敗の振り返り(消防設備士編))、消防設備士の情報発信(消防設備士の情報発信|ブログ・SNSが仕事につながった経緯)、なぜ消防設備士がブログを書き続けるのか https://aokimarke.com/setsubishi-blog/
参考文献
- Kobayashi, K. (2019). Learning by preparing-to-teach and teaching: A meta-analysis. Japanese Psychological Research, 61(3), 192–203. https://doi.org/10.1111/jpr.12221
- Fiorella, L., & Mayer, R. E. (2013). The relative benefits of learning by teaching and teaching expectancy. Contemporary Educational Psychology, 38(4), 281–288. https://doi.org/10.1016/j.cedpsych.2013.06.001
- Fiorella, L., & Mayer, R. E. (2014). Role of expectations and explanations in learning by teaching. Contemporary Educational Psychology, 39(2), 75–85. https://doi.org/10.1016/j.cedpsych.2014.01.001
- Bisra, K., Liu, Q., Nesbit, J. C., Salimi, F., & Winne, P. H. (2018). Inducing self-explanation: A meta-analysis. Educational Psychology Review, 30(3), 703–725. https://doi.org/10.1007/s10648-018-9434-x
- Bjork, R. A., Dunlosky, J., & Kornell, N. (2013). Self-regulated learning: Beliefs, techniques, and illusions. Annual Review of Psychology, 64, 417–444. https://doi.org/10.1146/annurev-psych-113011-143823
- 一般財団法人消防試験研究センター「消防設備士試験」https://www.shoubo-shiken.or.jp/shoubou/ (2026年10月18日確認)