DXとは‥デジタルトランスフォーメーション(Digital transformation)のことで「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念である。本用語は「DX」と表記されることが多いが、それは英語圏では「transformation」の「trans」の部分を「X」と略すことが一般的だからである。
予防行政の電子化について消防設備士が考えてみた
まず「維持台帳システム」構想によって変化し、建築会社および消防設備士が大きな恩恵を受ける部分は以下の通りです。
【消防同意~使用開始まで】
- 消防同意後に付与された施設No.を用いて、選定された業者が手続き及び工事を担当。
- 着工届の提出は「維持台帳システム」上にアップロード、所轄消防署等が確認して承認されればメールで連絡。
- 工事着手や中間検査の申請も「維持台帳システム」上で申請し、日時決定。
- 工事完了後の設置届も「維持台帳システム」上にアップロード、消防検査日時をメールにて調整。
- 実地での消防検査が実施された後、検査済証が交付されれば建物関係者および建築会社側でダウンロード可能に。
次に「維持台帳システム」構想によって変化し、建物の管理権原者・関係者(防火管理者など)および消防設備士が大きな恩恵を受ける部分は以下の通りです。
【防火管理上の手続き関係】
- 建物の管理権原者・関係者および防火管理者が「維持台帳システム」上で防火・防災消防計画書等のやり取りが可能。
- 消防設備業者は消防用設備点検結果報告書や防火対象物・防火管理点検結果報告書をアップロードすることで提出。
- 立入検査の連絡を「維持台帳システム」上で行い、検査後にアップロードされた立入検査結果報告書が入手可能に。
- 防火管理者が消防計画に基づく訓練やその他の実施事項についての書類を「維持台帳システム」上で提出。
- その他、既設の建物について消防設備業者が改修等をする際に着工届や設置届を「維持台帳システム」上で提出。
◎ 電子化のメリット
紙媒体が不要に
今のところ所轄消防署に届け出る書類関係は全て ”紙” となっていますが、維持台帳システムが導入されれば不要となるでしょう。

令和2年12月25日に通知された「消防関係手続(火災予防分野)における書面規制・押印・対面規制の見直し及び手続のオンライン化に係る関係通知の一部改正等について」には以下の文言が謳われています。
押印を不要とする申請書、届出書等についても、押印の廃止に伴い、電子メール、電子申請システム等(以下「電子メール等」という。)による提出が可能となること。
参考消防関係手続(火災予防分野)における書面規制・押印・対面規制の見直し及び手続のオンライン化に係る関係通知の一部改正等について
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参考【大阪市】なぜ郵送で消防関係書類の届出がされないのか【生産性向上】
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押印の省略
現在も関係者の押印が省略可能になっていますが、加えて所轄消防署サイドの押印も省略できそうです。
移動の省略
わざわざ車で所轄消防署を回るといった作業も不要となります。
SDGsとは‥持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs〈エスディージーズ〉)は国連の持続可能な開発のための国際目標であり、17のグローバル目標と169のターゲット(達成基準)からなる。
紙自体の省略
大量に紙を使っては修正の為に差し替えるといった、紙にまつわるコストを削減できるというのも魅力的です。
防火管理が容易に
現在も実は ”維持台帳” ってのは所轄消防署および建物の管理権原者・関係者様それぞれが紙媒体で管理しています。

それらの情報が同じシステム上で一つにまとまることで、建物の防火管理に関する情報が追いやすくなるでしょう。
サービスの質が向上する
現在、残念ながら無資格者による点検や悪徳業者による中身の無い書面だけの報告書といったサービスがまかり通ってしまう面があります。

システム上で本来通り有資格者しか報告書の提出が出来ない仕様で管理したり、優良業者の一覧が表示されれば安心に繋がるでしょう。
◎ 電子化のデメリット
変化が苦手な人の排除
例えば今でもガラケーを使用されている様な変化が苦手な方は、新しいシステムになると商売ができない人となる可能性があります。

関係者(防火管理者など)との連絡
維持台帳システムが導入された際、如何に建物の管理権原者を巻き込んで ”使える” 状態で運用できるかが「カギ」となるでしょう。

既存システムとの競合
維持管理システムが登場すると、民間企業が販売している既存の点検報告書作成ソフトや建物管理データベースは少なからず競合するでしょう。

◎ 他業界のシステム
通関(NACCS)
管理人が総合職で新卒入社した会社にて意図せず配属された港湾コンテナターミナルでは、通関の手続きがNACCSというシステムで行われていました。

通関とは‥貿易において貨物を輸入及び輸出をしようとする者が、税関官署に対して「貨物の品名・種類・数量・価格など」に関する事項を申告し、必要な検査を受けた後に、輸入の場合は関税など必要な税金を納付させ、税関から輸出入の許可を受ける手続き。
NACCS(ナックス)とは‥国際貿易における、通関及び輸入の際の関税の納付などを効率的に処理することを目的に構築された、税関官署・運輸業者・通関業者・倉庫業者・航空会社・船会社・船舶代理店・金融機関等の相互を繋ぐ電子的情報通信システムである。正式名称は「輸出入・港湾関連情報処理システム(Nippon Automated Cargo And Port Consolidated System)」。従前は、通関情報処理システムと呼ばれてきたが、港湾手続・食品衛生手続・動植物検疫手続・入国管理手続等の他省庁関係手続きにも業務を拡大することを見越して改称された。
NACCSにより外国貨物の管理と通関業務は大幅に向上した。現在、貨物の通関業務・外国貨物の管理はその大半がNACCSを使用して行われている。
不動産(REINS)
不動産業界ではREINS(レインズ)というシステムが用いられており、不動産会社はコレを駆使して建物の売買等を行っています。

レインズ(REINS)とは‥国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営しているコンピューターネットワークシステムです。
「Real Estate Information Network System(不動産流通標準情報システム)」の英語の頭文字を並べて名付けられ、組織の通称にもなっています。
建築確認
消防設備業は建設業にも分類されていますが、建設業における「建築確認申請」も電子申請が可能となっています。

消防同意とは‥
消防同意は、確認申請手続きや許可申請を必要とする建築計画についての、防火上の安全確保を目的とする制度です。

建築基準法第93条に基づき、特定行政庁・建築主事又は指定確認検査機関は、建築基準法に規定される許可又は確認申請の手続きにおいて、消防長等に同意(消防同意)を求めることとなっています。
消防同意の件数
◎ 仕組みの中で動く側が考えるべきコト
放っておいても、いずれ未来は誰かによって時代と共に最適化されていくでしょう。

