たまにTwitterで『消火器ブチ撒けた!』いうて一面ピンク色の写真アップしてる人いるけど…。
消火器の中身(消火薬剤)の種類によって、使った後の掃除が大変かどうかも異なるので、この記事をご覧になった後お近くの消火器をご確認下さいませ!
消火器の種類
消火器の種類は消火器の技術上の規格を定める省令にて以下の6種類が規定されています。
【第1条の2(用語の意義)】
- ①[水消火器]:水に浸潤剤等を混和し、または添加したものを圧力により放射する消火器。
- ②[強化液消火器]:強化液消火薬剤を圧力により放射する消火器。
- ③[泡消火器]:泡消火薬剤を圧力により放射する消火器。
- ④[ハロゲン化物消火器]:ハロゲン化物消火薬剤を圧力により放射する消火器。
- ⑤[二酸化炭素消火器]:液化二酸化炭素を圧力により放射する消火器。
- ⑥[粉末消火器]:粉末消火薬剤を圧力により放射する消火器。
1. 水消火器
水消火器[適応火災:A・C]は最古の消火薬剤である“水”です。
普通の水は電気を通しますが、それは不純物が混じっているせいである為、純粋な水は電気を通しません。
純水を消火薬剤とした水消火器
純水を消火薬剤に用いた消火器は、電子機器の火災の消火にも使用可能です。
2. 強化液消火器
強化液消火器[適応火災:A・B・C(霧状のみ)]は水をより消火に特化させた液体の消火薬剤ですが、電気は通します。
霧状で噴射すると電気火災にも使えますが、それは消火器を放射している人が感電しないだけで、薬剤のかかった電子機器たちはショートして機器を壊します。
3. 泡消火器
泡消火器[適応火災:A・B]は油火災に向いており、特に化学泡はシャボンに二酸化炭素を含んでいるのでより消火能力は高いですが、薬剤の交換サイクルが1年なのでメンテナンス性で劣ります。
放射している人が泡を通じて感電する為、電気火災には使用できません。
4. ハロゲン化物消火器
ハロゲン化物消火器[適応火災:A(大型のもの)・B・C]は消火器としての性能はめちゃ良いですが、地球環境にはめちゃ悪い(オゾン層破壊)為、国際的に禁止(ウィーン条約とかモントリオール議定書)されています。
現在ほぼ見かけることはありませんし、あっても古い物です。
5. 二酸化炭素消火器
二酸化炭素消火器[適応火災:B・C]は消火後に何も残らないというメリットがありますが、ガスに毒性があり閉鎖的な空間では生命の火も消してしまう為、使用できません。
放射距離も比較的短く、酸素を二酸化炭素で遮断して消火する為、完全に消火する前に風でも吹いて酸素がまた供給されたら再燃します。
6. 粉末消火器
粉末消火器[適応火災:A(一部除く)・B・C]一般的にメジャーで火を消すだけなら万能です。
しかし噴射後に周辺がサンリオピュー〇ランドみたいにピンクになってしまう(≒現場を汚損する)弱点もあります。
二酸化炭素消火器とハロゲン化物消火器の規格
消火器の本体容器内にガス貯蔵状態が液体で充てん(ハロンのみ窒素で加圧)されている二酸化炭素消火器およびハロゲン化物消火器の充てん比を含む規格は以下の通りです。
【第35条(二酸化炭素消火器等の充てん比等)】
1 二酸化炭素消火器、ハロン1211消火器及びハロン1301消火器の本体容器の内容積は、充てんする液化炭酸、ハロン1211及びハロン1301の質量1kgにつき、それぞれ1500㎤、700㎤及び900㎤以上の容積としなければならない。
2 二酸化炭素、ハロン(1211、1301)消火器のホースは、第15条第2項第一号の規定にかかわらず、次に掲げる試験を行った場合において、漏れ、き裂、著しい変形その他の障害を生じないものでなければならない。
- 一 ホースを伸長した状態で、二酸化炭素消火器にあっては16Mpaの圧力を、ハロン(1211、1301)消火器にあっては温度48℃における内部圧力の1.2倍に等しい圧力を水圧力で5分間加える試験
- 二 ホースの外径の五倍に等しい内径を有するようにホースを環状に曲げた状態で、二酸化炭素消火器にあっては12Mpaの圧力を、ハロン(1211、1301)消火器にあっては温度48℃における内部圧力に等しい圧力を水圧力で5分間加える試験
3 二酸化炭素消火器の放射管は、その周囲を熱の不良導体で被覆しなければならない。
4 二酸化炭素消火器、ハロン(1211、1301)消火器の放射ホーンは、非吸湿性であり、かつ、電気絶縁性のある強じんな材料を用いて造られたものでなければならない。
5 二酸化炭素消火器、ハロン(1211、1301)消火器の放射管及び結合金具は、第2項第一号に規定する圧力を水圧力で5分間加える試験を行った場合において、漏れ、離脱その他の障害を生じないものでなければならない。
以下の規定を用いて充てん比が算出できます。
❝二酸化炭素消火器、ハロン1211消火器及びハロン1301消火器の本体容器の内容積は、充てんする液化炭酸、ハロン1211及びハロン1301の質量1kgにつき、それぞれ1500㎤、700㎤及び900㎤以上の容積としなければならない。❞
よって、充てん比はそれぞれ以下の通り求められる。
- 二酸化炭素消火器の充てん比=1.5
- ハロン1211消火器の充てん比=0.7
- ハロン1301消火器の充てん比=0.9
※1㎥=1×10⁶㎤
消火薬剤の規格
消火薬剤については、以下の通り規格が定められています。
【第1条の2(消火薬剤の共通的性状)】
1 消火薬剤は、著しい毒性または腐食性を有しないものであって、かつ、著しい毒性または腐食性のあるガスを発生しないものでなければならない。
2 水溶液および液状の消火薬剤は、結晶の析出、溶液の分離、浮遊物または沈殿物の発生その他の異常を生じないものでなければならない。
3 粉末状の消火薬剤は、塊状化、変質その他の異常を生じないものでなければならない。
【第1条の3(消火薬剤の共通的性状)】
消火薬剤は、一度使用され、もしくは使用されずに収集され、もしくは廃棄されたものまたはその全部もしくは一部を原料とするものであってはならない。
ただし、再利用消火薬剤にあっては、この限りでない。
泡消火薬剤の規格
【第4条(泡消火薬剤)】
1 泡消火薬剤は、次の各号に適合するものでなければならない。
- 一 消火薬剤は、防腐処理を施したものであること。ただし、腐敗、変質等のおそれのないものは、この限りでない。
- 二 消火器から放射される泡は、耐火性を持続することができるものであること。
2 化学泡消火薬剤は、前項に定めるもののほか、次の各号に適合するものでなければならない。
- 一 粉末状の消火薬剤は、水に溶けやすい乾燥状態のものであること。
- 二 不溶解分は、1質量%以下であること。
- 三 20℃の消火薬剤を充てんした消火器を作動した場合において放射される泡の容量は、手さげ式の消火器及び背負式の消火器にあっては消火薬剤の容量の7倍以上、車載式の消火器にあっては消火薬剤の容量の5.5倍以上であって、かつ、放射終了時から15分経過したときにおける泡の容量の減少は、25%をこえないこと。
3 機械泡消火薬剤は、第一項に定めるもののほか、次の各号に適合するものでなければならない。
- 一 消火薬剤は、水溶液又は液状若しくは粉末状のものであること。この場合において、液状又は粉末状の消火薬剤にあっては、水に溶けやすいものであり、当該消火薬剤の容器(容器表示が不適当な場合は、包装)には、「飲料水を使用すること」と表示すること。
- 二 20℃の消火薬剤を充てんした消火器を作動させた場合において放射される泡の容量は、消火薬剤の容量の5倍以上であって、かつ、発泡前の水溶液の容量の25%の水溶液が泡から還元するために要する時間は、1分以上であること。
上記は【消火器用消火薬剤の技術上の規格を定める省令】から、この後の過去問に対応する部分を抜粋(※表記を変えたり余分な部分を消したり編集)したものです。
省令の文章には“各号”とか“前項”とか“前項の二号”みたいなのが結構ありますので、おさらいしておきます。
step
1「“条”」
まず大きく分けるのが“条”です。
step
2「“項”」
次に条の中の区分けが“項”です。
step
3「“号”」
さらに項の中の区分けが“号”です。
例えば『消火器用消火薬剤の技術上の規格を定める省令 第4条 2項 三号』とあれば上記の黄色マーカーが引いてある文章のことです。
粉末消火薬剤の規格
【第7条(粉末消火薬剤)】
1、粉末消火薬剤は、防湿加工を施したナトリウム若しくはカリウムの重炭酸塩その他の塩類又はりん酸塩類、硫酸塩類その他防炎性を有する塩類(以下「りん酸塩類等」という。)で、次の各号に適合するものでなければならない。
- 一、JIS Z 8801[試験用ふるい]の呼び寸法180μm(マイクロメートル)以下の消火上有効な微細な粉末であること。
- 二、30℃及び相対湿度60%の恒温恒湿槽中に48時間以上恒量になるまで静置した後に、30℃及び相対湿度80%の恒温恒湿槽中に48時間静置する試験において、質量増加率が2%以下であること。
- 三、水面に均一に散布した場合において、1時間以内に沈降しないこと。
2、りん酸塩類等には淡紅色系の着色を施さなければならない。
3、再利用消火薬剤のうち粉末消火薬剤は、前2項に定めるもののほか、次の各号に適合するものでなければならない。
- 一、含水率が2%以下であること。
- 二、均質であって、かつ、固化を生じないような措置が講じられていること。
淡紅色(たんこうしょく)とは
粉末消火薬剤でA、B、C火災に適応しているものは、リン酸塩類等(リン酸アンモニウム)が主成分のものだけで、他はB火災、C火災のみです。
国内で最も多く生産されている消火器は粉末消火器で、そのうちABC薬剤(リン酸塩類等)が90%を占めています。
種別 | 消火剤の主成分 | 一般的呼称 | 適応火災 | 着色 |
第1種 | 炭酸水素ナトリウム(Na) | 重曹薬剤 | BC | 白色または淡緑色 |
第2種 | 炭酸水素カリウム(K) | カリ薬剤 | BC | 紫色 |
第3種 | リン酸塩類等(ABC) | ABC薬剤 | ABC | 淡紅色 |
第4種 | 炭酸水素カリウムと 尿素の反応物(KU) | モネックス | BC | 淡青色または灰色 |
※薬剤の色もABC薬剤だけが消防法で定められており、他は消火器業界での自主基準である。
それでは上記の知識を身に付けた上で、消防設備士乙種6類の過去問を解いてみましょう!
消防設備士試験の過去問(消火器と消火薬剤の規格)
二酸化炭素消火器の充てん比で、次のうち正しいものはどれか。
- 消火器の内容積は充てん液化炭酸の質量1kgにつき、1,000㎤以上
- 消火器の内容積は充てん液化炭酸の質量1kgにつき、1,200㎤以上
- 消火器の内容積は充てん液化炭酸の質量1kgにつき、1,500㎤以上
- 消火器の内容積は充てん液化炭酸の質量1kgにつき、1,600㎤以上
消火薬剤の規格について、次のうち誤っているものはどれか。
- 消火薬剤は不凍剤を混和し、または添加することができる。
- 消火薬剤は検定対象品であるため、純度の高い単一品種でなければならない。
- 消火薬剤は著しい毒性または腐食性を有しないものであって、かつ著しい毒性または腐食性のガスを発生しないものであること。
- 水溶液の消火剤および液状の消火薬剤は、結晶の析出、溶液の分離、浮遊物または沈殿物の発生その他の異常を生じないものでなければならない。
泡消火器の放射量について、次のうち誤っているものはどれか。
- 手さげ式化学泡消火器は20℃で薬剤容量の5倍以上
- 機械泡消火器は20℃で薬剤容量の5倍以上
- 車載式化学泡消火器は20℃で薬剤容量の5.5倍以上
- 背負い式化学泡消火器は20℃で薬剤容量の7倍以上
粉末消火薬剤の規定で、次のうち誤っているものはどれか。
- 防湿加工を施したナトリウムもしくはカリウムの重炭酸塩類、その他の塩類またはリン酸塩類、硫酸塩類その他防炎性を有する塩類でなければならない。
- リン酸塩類など(ABC薬剤)には淡青色系の着色を施すこと。
- 180μm以下の微細な粉末で、水面に均一に散布した場合において、1時間以内に沈降しないこと。
- 粉末状の消火薬剤は塊状化、変質その他の異常を生じないものでなければならない。
消防設備士「過去問テスト」は、その名の通り“過去に出た問題” のテストです。
ブログでお馴染みの管理人が過去問に関する情報収集を積み重ね、その中からピックアップして過去問ベースの模擬試験を作成したものです。
上記以外に新傾向問題の情報など提供あり次第、解説を毎年追記して更新しています。これから消防設備士の試験を受けられる方は是非ご覧下さい。